「相手が悪かったですね」
今夜のポジションを賭けて勝負しようと言ったのはムゲンだった。白熱した勝負の結果、カードの女神はムゲンに微笑む。
得意げに笑ってみせると、突如ぐるりと視界が回った。
「相手が悪かったな」
ムゲンを見下ろすアメヒコの欲を孕んだ瞳に、敵わない、とムゲンは白旗を上げた。
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例えば、甘えたように寄りかかる低めの体温。
例えば、アメヒコを見る切なげで熱の宿った表情。
手に入れたら、今度は独占したくなるのが質が悪い。
「こればっかりは、ソラにだって教えてやれないな」
小さく呟くアメヒコをきょとんと見上げるムゲンの表情すら、本当は自分だけのものにしておきたいのだ。
―
「キスをしてもいいかい?」
アメヒコがムゲンに問えば、1度だけならとのお許しが出た。
どんなに長かろうが1度は1度。しっかりと堪能した上で、満足してもらえたかと問いかけてみる。
「……今のは、忘れてあげます」
そう言ってそっぽを向くムゲンに、アメヒコは口元が緩むのを止められなかった。