ふしぎなのかかん6 バンは何度落とされてもめげなかった。普通ならば助かるはずのない高さから落ちているにも関わらず、茂みやらきのこやらの自然のクッションが味方してくれたのだ。登っては落っことされ、登っては落っことされ、また更に登った時についに少女が「しつこい!」と叫んでバンを何処からともなく伸びてきた木のつるでぐるぐる巻きにした。
「人間には関係ないかもしれないけど、あの泉がなくなると森が枯れちゃうのよ」
しつこい少女は怖い顔で説明する。バンはへぇ、と思った。飲めば永遠の命を授けられるという便利グッズは、人の為の物ではないらしい。食いしん坊かつ飲んべえのバンは(森がなくなればうまいエールの原料がなくなる)と理解し「解った」と素直に頷いた。この森でとれるベリーから作られるエールは一番のお気に入りなのだ。それがなければ永遠の命なんてあってもすこしも意味がない。
少女は呆気にとられた顔をして、それから疑うように眉間にしわを寄せたが、今度は不思議そうな顔をしながらバンを解放してくれた。バンが名乗ると彼女も「エレインよ」と自分の名前を教えてくれた。
「所でエレイン」
改めてぐるりと周りを見回したバンは、場違いすぎる物に視線を戻した。
「何だありゃあ」
テレビである。問われたエレインはなぜかフフンと誇らしげに鼻を鳴らして胸を反らし、よく聞いてくれたとばかりに答えた。
「いろんなものを映してくれる魔法の箱よ! すごいでしょう」
「……テレビじゃん♪」