ふしぎなのかかん9 一方のバンも、生まれて初めて心身ともにからのんびりと過ごしている自分に、僅かながら驚きを感じていた。旅に旅を重ね、帰るところもない生活をごく当たり前にしてきたが、この森はとても落ち着く。エレインと過ごす時間は楽しくも落ち着いたひとときだ。
帰るところがあるならば、こういう場所に帰ってきたいもんだ♪
そう思ってから、帰るも何も家でもなんでもないのに、と己をおかしく感じた。
……いや、帰る場所にしてしまえばいいのでは?
ふと閃いた思いつきにバンは瞠目する。
エレインごと、自分の場所にしてしまえば……?
だからエレインが「バンが奪いに来たのが生命の泉ではなく、私をならよかったのに」と呟いたのをたまたま聞いた時、バンはごくごく自然に「じゃあそうすっか」と応えたのだった。