ふしぎなのかかん10 エレインは一瞬、バンとの心の交わりを感じた。が、すぐに頭を振った。彼女の役目がそれを許さないからだ。だがバンは快活にそんなエレインの心配を笑い飛ばした。俺がお前の兄貴を連れ戻せば、お前は自由の身だ、と。
エレインは迷わず、バンに抱きついた。
それとほぼ同時だった。突然笑い声とも叫び声ともつかない咆哮が、森を引き裂いたのは。
「何だありゃあ!」
「魔人族よ……でもなぜここに?!」
赤くぶよぶよとした巨体を震わせた魔人は、知ってか知らずか生命の泉に向かって行く。エレインは咄嗟に泉を保護しようとしたが、バンがそれを遮った。
「待てエレイン。あいつ……」
「……ああっ……」
魔人は、泉には目もくれずにテレビを見て爆笑していた。