念願の町での一人暮らし!
慣れ親しんだ森が恋しくないといえば嘘になるが、それ以上にこれからの新生活への期待でランスロットの胸はいっぱいだった。
「それにしても」
と、苦笑する。最小限の荷物だけで越してきたはずの1Kの部屋とベランダは、既に植物園みたいになっている。
「都会は緑が少ないから寂しくないようにね」と、母が気を遣った結果であった。
「ま、いっか。これから宜しくな」
植物の世話は嫌いでない。同居人がいるようなものだとランスロットは母の気遣いを嬉しく感じた。
「俺も明日から頑張るぜ」
………
数日後。ランスロットは苦笑を通り越して遠い目になっていた。
毎日、毎日、毎日。
父が母の画像を送りつけてくるのである。
「今日のエレイン!」
「エレインマジ可愛い!」
「ちょっとドジしたエレイン!」
「エレイン水飲んでるだけで可愛い最高!」
息子が寂しかろうと思っての父の気遣い、ではない。単に妻自慢である。純粋な見せびらかしだ。ランスロットにはそれがはっきりと感じられる。おかげでランスロットのスマホの中は母の画像で盛り沢山だ。
もちろん母のことは好きだ。尊敬もしているし、欲目抜きにしても、とても可愛いとも思う。だが、それにしてもこれは……。
とはいえ消すに消せない。母だから、というのもあるがちゃんと取っておかないと後で父からどんなツッコミが入るかわかったもんじゃないからだ。
そしてランスロットは今日も溜息をついて、母の画像を保存するのだった。