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    ゆきこ

    軌跡のロイド沼在中、支援課箱推し。ロイド君を中心に色々雑多に放り投げてます。正直地雷原のようなものだと思うので自衛をお願いいたします。
    Rとかこれはちょっと、という話はこそフォロ限定にしておりますがどうかご了承くださいませm(_ _)m

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    ゆきこ

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    支援課、というよりロイドとキーアで、今日が養子の日で幸せの日だと知ってどうにか捻り出した話。なんというか、ありきたりな話になったなあとは思いますが、キーアにとっての幸せはきっと、支援課のメンバーと、特にロイドと一緒に笑い合える事だろうなと思います。書類上の立場がどうかなんて関係ないよ、きっと!
    なおロイド君はその辺りも結構重視してそうなので、出来るようになったらするんじゃないですかね、養子縁組。

    #軌跡
    locus
    #特務支援課

    幸せは、ここにある特務支援課のビルの一階。日頃ミーティングを行ったり食事を取ったりする場所で、ロイドが書類を眺め始めてから一時間が過ぎようとしていた。
    こうしてロイドが何事かを考えているのはそう珍しい風景ではない。特務支援課は今やクロスベル警察の中でも一番の知名度と人気を誇っており、持ち込まれる支援要請の数々に加えて緊急事態ともなれば他部署へと駆り出される事も珍しくはなく。
    持ち前の洞察力や推理力を当てにされる事も多いロイドは、時おり資料や手帳をテーブルに広げ、こうしてあれこれと考えを巡らせるのだ。
    だが今日はいつもと少し様子が違う、とキーアは思う。ロイドの目の前にあるのは書類が一枚だけ。いつも肌身離さず持ち歩いている手帳も広げてはいないのだ。
    なのでコーヒーを淹れたキーアはそれをテーブルに置くと、自分はロイドの隣に座ってその顔を見上げ、尋ねた。

    「ねえロイド。どうかしたの?」
    「ん……。あ、ああ、キーアか。別に大した事じゃないんだが」
    「でもさっきからずっと、むずかしい顔してるよ?」
    「そ、そうか?」
    「うん」

    そしてえいっとひとさし指で眉間をつつかれて、ようやく自分がそこにしわを寄せていたのだと気づいたロイドは、キーアには敵わないな、と言うと、冷めないうちにとコーヒーを一口、口に含んだ。

    「うん、美味しい。また腕を上げたんじゃないか?」
    「そうかな? えへへ、そうだといいな。だってみんなに、おいしい物を飲んでほしいから!」
    「キーア……」

    数年間、ずっと傍で見守ってきた愛娘の言葉に、思わず涙がこぼれそうになったロイドだったが、キーアが手元の書類を覗き込んできた事でハッと我に返り、これでは親馬鹿と言われても仕方ないな、と苦笑する。

    「それで、なにを考えてたの?」
    「うん。キーアの、養子縁組の事だよ」
    「キーアの?」
    「ああ。今俺の名字を名乗っているのは、あくまで一時的な措置というか、便宜上だ。だけどこのままだと不便な事が、今後きっと出てくる。だから正式に養子縁組出来ないかと思ったんだけど……」

    そこで言葉を切り、ため息をつくロイドの表情に、もしかして、とキーアが尋ねる。

    「もしかして、出来ないの?」
    「うん。……養い親になるには、色々と条件があるんだ。まず年齢。それからきちんとした収入があること。そして配偶者がいる事が望ましいって書いてある」
    「はいぐうしゃ……。つまり奥さんってこと?」
    「う。ま、まあこれは、絶対じゃないし。……問題は、年齢なんだよな」
    「ねんれい?」
    「そう、年齢。まだ足りないんだよ。マクダエル市長に相談すれば、多分融通を利かせてもらえるだろう。けどそれも何だかコネを使ってズルをするみたいだなって思って、そこで堂々巡りしてたんだ。……心配かけてごめんな?」

    そう言うと柔らかく微笑み、優しく頭をなでてくれるロイドの事が、キーアは大好きだ。
    そして自分の事でそんな風に悩んでほしくはないと、頭をなでていたロイドの手を掴んで胸の前にもってきて、両手できゅっと握りしめ、自分の気持ちがロイドに伝わればいいと思いながら懸命に言葉を紡ぐ。

    「ねえ、ロイド。キーアはね、今とっても幸せなんだ。ロイドがいて、エリィがいてティオがいて、ランディがいてかちょーがいて。ここでみんなでごはん食べて笑い合ってられる、そんな毎日が幸せで、ずっと続けばいいなって思うの」
    「キーア……」
    「でね。その幸せに、キーアの名字や立場は関係ないと思うの。キーアは支援課みんなのむすめ、でしょ?」

    その言葉にロイドはハッとした。
    自分がどちらかというと頭でっかちである事は自覚している。時おり形に囚われそうになる事も。
    今もまさにそういう状態だった訳だが、彼女の言う通り、大事なのはそこではないのだ。


    「そうか、そうだな。……ありがとう、キーア。形に囚われて、危うく大事なことを忘れるところだったよ」
    「えへへ、どういたしまして。ね、ロイド。またなでて?」
    「ああ」

    心のつかえが取れたロイドは、キーアの頭を優しくなでてやる。するとパアッと花開くように笑うキーアの満面の笑顔に、この幸せが壊れないよう全力で守らないとな、と改めて心に誓うのだった。



    「なあ、お嬢、ティオすけ」
    「しっ。ランディさん、静かにしてください」
    「今いいところなんだから、邪魔したら悪いでしょう?」
    「へいへい。ったく、世話が焼ける相棒だこと。……しかしよう、今夜の夕食どうすんだ? まだなんも用意出来てねえぞ?」
    「何か買ってきましょうか。帰ってくる頃には、一段落ついているでしょうし」
    「了解です。では行きましょうか。エリィさん、ランディさん」
    「おう」



    「ところでキー坊」
    「なあに? ランディ」
    「俺なら年齢の基準は満たしてる訳だが」
    「も、もしかして、さっきの養子の話か? 聞いてたのか!?」
    「ああ。あんなとこで普通の声で話してたら、そりゃ聞こえるさ。で、キー坊は俺の子になる気はねえの?」
    「ん~。……ランディの事は嫌いじゃないけど。誰かの子供になるならロイドがいい!」
    「即答かよっ!? せめてもうちょい悩んでくれたって――」
    「わかりきった答えでしたね、ランディさん」
    「そうね。ダメ元で聞いたのでしょうけど」
    「うう。お嬢もティオすけも冷たい……」
    「ははは。まあ諦めてくれ、ランディ」
    「くっそー。なんでお前ばかり女子供に好かれるんだよ。この天然タラシめ!」
    「いや意味がわからないんだが? あ、おい、ランディっ」
    「放っておいていいわよ、ロイド。ちょっと拗ねてるだけだから」
    「ですね。さ、キーア。私たちは上に上がって女子会です」
    「うん。それじゃ、おやすみ、ロイド」
    「ああ。おやすみ、キーア。良い夢を」
    「(本当に仲が良いわよね。実の親子以上じゃないかしら)」
    「(少しだけ、ロイドさんがうらやましいですね)」
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