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    suzumi_cuke

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    20220708七夕の鯉月。最終話後。仕事中の世間話。多分鯉登少尉は嫌だ嫌だと言いながらもひとりでやっていけるけど、軍曹は…。少尉が嫌なのは自分がひとりになることじゃなくて軍曹をひとりにすることだと思う。

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    天の川も血の海も泳いで 連日持ち込まれる書類の中には、日付の記入を求められるものがある。そんなわけで本日の日付を記した時、はたと鯉登は気がついた。今日は七月七日である。
    「愛する相手と年に一度しか会えないなんて酷い話だな。そう思わんか」
    「七夕の話ですか?」
     こちらはこちらで各所への手紙を書くのに忙しい月島が、突然振られた話題にもかかわらずそつなく拾った。
    「与えられた仕事をしないからそういう罰を与えられたんでしょう。少尉殿も手を動かしてください」
     喋っているとこちらまで間違えてしまう、と注意しながら、月島は自分の書いた文面を念のため読み直した。鯉登は手にした万年筆を振りながら大仰に嘆いてみせる。
    「私なら耐えられん!あと50年生きるとして、50回しか会えんということだぞ。想い合っていながら離れ離れなど、寂しくて死んでしまう」
     身悶えする鯉登のほうに全く見向きもせず、月島は手紙に結びの言葉と日付、宛名を入れて便箋を畳んだ。そして新たな一枚に取り掛かる。
    「そういう感傷的なこと言ってる人間ほど、実際は死んだりしないもんですよ」
    「ほう」
     わかっているじゃないか、と鯉登は頬杖をついて目を細めた。色々あった結果、背負うものが増えてしまって、今や寂しかろうが悲しかろうが、手前勝手に死ぬことも許されぬ身の上である。この先、例え独りになろうとも、己は進み続けなければならない。独りになる覚悟は出来ている。
     出来ていない覚悟があるとするならば、それは独りにする覚悟のほうだった。
    「じゃあ、そういう感傷的なことを言わない人間は、実際のところどうなんだ?」
     月島の手が止まった。
    「……どうなんでしょうね」
     鉛筆を持ったまま、その手を顎へやってぼんやりと首を傾ける。質問の答えを考えているのか、手紙の内容について考えているのか、その所作だけではわからなかった。
    「教えてもいいですが……そのためにはまず一年離れてみませんと」
    「ぜーったい嫌だ」
     真顔だから、月島の発言は本気か冗談かわかりにくいところがある。どちらにせよその提案は却下だと、鯉登は目一杯に渋い顔で言ってやった。
     多分、独りにする覚悟は一生出来そうにない。
     元より独りにする気はさらさらないのだから、そんな覚悟は別に出来ずともよいと思っている。
     少しだって、一日だって月島を独りにはしたくない。
     そのためならば、天の川だろうが血の海だろうが、いくらでも泳いでみせよう。
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    suzumi_cuke

    MEMO20220422 大団円後のモブ視点鯉月if話のプロットです(プロットではないです)。時代考証とか何も考えてません。追記:さすがに佐官は盛りすぎました。
    金塊争奪戦後の鯉月ifサッポロビール工場や五稜郭の戦いはロシア人ゲリラたちの鎮圧のため、列車内の惨劇はヒグマと土方歳三率いる脱獄囚によるものということになった。部下を多数失ったことや権利書を横領しようとした件は行方をくらませた中尉に全ての罪をひっかぶせて、残った部下を守るために少尉は奔走する。親が軍高官であることや、中尉に騙されていたむしろ被害者であること、顔に大怪我を負ってまで戦い抜いたことが評価され、少尉の罪は不問になる。
    だが中尉の腹心の部下で下士官だった軍曹は罪を免れることは出来ず、また本人もそれは望まなかったため、免官となり再び陸軍監獄へ入ることになった。

    何年かが経ち、そんな争奪戦のことも知らない若い兵士が新たに師団へやってきて、進級して大尉になっていた鯉登元少尉の下につく。休暇ともなると、鯉登閣下は誰にも何も言わずに外出しているので、ある時どこへ言っているのか尋ねると「想い人に会いに行っている」のだという。それからも時々休み明けに気力充実している鯉登閣下の顔を見ては、「あ、想い人に会ってきたのだな…」と部下は微笑ましく思っていた。いつも閣下が会いに行くばかりで、一緒に外出やご旅行などもされた様子が無いし、もしやその想い人とはどこぞで囲われている芸者か遊女であるまいか、と心配にもなったが、何より鯉登本人が嬉しそうなのである。「囚われの姫のようですね」と言うと、鯉登閣下はキョトンとした顔になってから大笑いして、姫か、それはいい、あいつはどんな顔をするだろうなと目を細めた。
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