get high 深夜。スティーブンは目的のバーの前を車で通り過ぎ、ワンブロック先に停めて様子をうかがった。
間口は小さく店名のネオンサインも控えめ、これといった特徴もない目立たぬ店だ。しかしだからこそなのか、ここはドラッグ流通拠点のひとつとなっているのだった。
扱われているはパーティードラッグの一種だ。それ自体はグレーの薬物だが、問題は流通量にあった。効力が軽く価格も手頃なため若者を中心に広く蔓延しているのだ。危険性は低いとはいえ過度に使用すれば重大な事態にも陥る。実際このドラッグによるオーバードースの報告は増えていた。
さらに問題は、その莫大な売り上げがどこに流れ着いているのかだった。プールされロンダリングされ、如何ような用途の資金となるのか。よもや慈善事業に使われるとは誰も思うまい。
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