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    ガスウィル
    別れようとしたウィルと荒療治でつなぎとめることにしたガスト

    #ガスウィル
    gaswill

    「別れてくれ」
     たった一言。それだけで、世界から一人と残されたような、うら寂しさがあった。
     俺とアドラーは恋人同士というものだった。俺は、アドラーが好きだった。アキラの一件があったのにも関わらず、俺はアドラーに惹かれていた。そんなときに、アドラーに告白されたのだ。嬉しかった。が、同時に怖くなった。だって、俺の中にあるアドラーへの感情はプラスのものだけではなかったから。
     アドラーへの恋心と一緒に、彼への恨みのような感情もまだあった。そして、それが今後消えないだろうことも、なんとなく分かっていたのだ。こんな俺では、いつかきっと振られる。今が良くても、いずれ破綻することだろう。そんな想像から、俺はアドラーを先に振った。そうすれば、無駄に傷つくことはないと。
     だが、アドラーは諦めなかった。何度も何度も俺に告白してきて、その度に俺は、アドラーを振って。傷つきたくないからと始めたことが、どんどん傷を増やしていく。俺だけじゃなくて、アドラーにも。それは、本意ではなかった。だから、受け入れることにしたのだ。アドラーの粘り勝ちと言ってもいいだろう。
     大喜びするアドラーに、これで正解だったのかもしれないと、その場では思った。一緒に過ごして、体を重ねて、順調なお付き合いを進めていたように思う。その中で、俺の態度変わっていっていれば、だけれど。
     付き合い始めてからも、俺からのアドラーへの当たりの強さは変わらなかった。変えられなかった、とも言える。自分でもどうかと思っているのに、止まらないのだ。そんな時、彼は決まって困ったように笑うのだ。甘やかされている、それが嬉しくて、不甲斐ない。せめて、アドラーと同等の優しさを返せる人間になりたかった。
    「本気で言っているんだな?」
      アドラーに優しさを返したい。悩みに悩んで、行き着いた先はこれだった。俺からの、解放。それが俺にできる唯一の優しさだと、そう思ったのだ。
     別れたくない、その感情を押し殺して、首だけで返事をする。アドラーはいつのように困ったように笑いながら、「分かった」とだけ言った。
    「じゃあな、ウィル」
     まるで何事もなかったかのように挨拶をするアドラーを殴り飛ばしてやりたかった。お前の俺に対する感情はその程度かと、泣きわめいて、問い詰めてやりたかった。
     口を開いたら涙が出そうで、黙ってやり過ごす。姿が見えなくなり、気配もしなくなった。
     ようやく俺は、その場で涙を流した。

     次に気がついたのは自室のベッドの上だった。泣いた後の記憶がない。泣き疲れて、眠ってしまったのだろう。帰巣本能に感謝をして、洗面所に向かう。鏡には目を真っ赤に腫らした間抜け面があった。
     これはまずい。ルームメイトたちに見つかったらなんて言われるか。
     言い訳を考えるものの、うまい言葉が見つからない。早々に諦めて俺は朝食をとることにした。
    「おはよう、ウィル」
    「おはようございます、オスカーさん」
    「目が赤いがなにかあったのか?」
    「あははは……、聞かないでもらえると……」
     笑って誤魔化せば、オスカーさんがそれ以上追求してくることはない。任務に支障が出ない限りはそっとしておいてくれるだろう。そのためにも、より一層気合いを入れなければ。
    「そういえば、アキラがいませんね。珍しい」
    「あいつなら、急用があるといって少し前に出て行ったぞ」
     予定なら、アキラは非番のはずだ。わざわざ早朝に出て行くなんて、よほどの用事だったのだろうか。首を傾げたが、オスカーさんと話しているうちに疑問はどこかへいってしまった。
     ここで、もう少し気にしておけば良かったのだろうか。

     午前中の作業を終えて、お昼休憩。普段なら食堂でとるところだが、午後からはパトロールの予定だ。少し足を延ばしてお気に入りのカフェもいいかもしれない。どちらにしようか悩んでいると、レンからメッセージが入っていた。今日は珍しいことが多い。
     レンからのメッセージは昼食を一緒にとらないかという、何の変哲もない内容だった。嬉しいサプライズに、俺は『喜んで』と返事をする。すると、返事とともに地図が送られてきた。どうやら行きたい店があったようだ。財布とスマートフォン、そのほか必要なものだけを持って、エリオスを後にする。
     ここで、違和感を抱くべきだったのかもしれない。

    「……ここ?」
     レンにもらった地図に従って到着した先は、何というか、イメージと違った。その建物はどこからどう見ても教会に見える。本当にここで合っているのだろうか、そんな不安からレンに確認をとるよりも先に意外な人物が現れた。
    「ウィル!!」
    「え? アキラ??」
    「おっせーよ!!」
    「ごめん……じゃなくて、何でアキラここに?」
    「細かいことはいいから! ほら行くぞ!!」
     何も理解できないまま、アキラに腕を捕まれ中に引きずり込まれる。やはり、そこは教会だった。真っ赤な敷物でできた道と、それを挟むように置かれたベンチ。そこには、エリオスの黒い制服を着た同期達と、そのメンターが揃っていた。
    「え、え!? アキラ、今日何かあった? 俺、もしかして忘れてた?」
    「何もねえよ。いいから! 時間ないんだって!!」
     ニヤニヤとした笑みに見守られて、俺は中心に追いやられる。そこには朝見かけなかったもう一人のメンターと、今一番見たくない顔がいた。
    「よ、ウィル。昨日ぶりだな」
    「アドラー……、それにブラッドさんも。これ、何なんですか?」
    「詳しくは後でそいつに聞いたらいい。始めよう」
     ブラッドさんは手に本のようなものを持って、口を開く」
    「ガスト・アドラー。お前は、健やかなる時も、病める時も、ウィル・スプラウトともに歩み、死が二人を分かつまで愛し抜くことを誓うか?」
    「はい、誓います」
     なんだこれは。
     動揺する俺を放置して、ブラッドさんはこちらにも同じ言葉を投げかける。
    「ウィル・スプラウト。お前は、健やかなる時も、病める時も、ガスト・アドラーともに歩み、死が二人を分かつまで愛し抜くことを誓うか?」
     誓える訳がない。だって、俺たちは既に恋人ですらないのだ。なのにどうして。昨日の分かったって言葉はいったい何だったんだ。
    「ウィル」
     言葉に詰まる俺をこの場で呼べるのは、一人しかいない。
    「はい、って、言ってくれ」
     いつもの、困った笑み。それに流されろと? 後ろから刺さる、期待が痛い。ここで返事なんてしてみろ、一生別れられなくなる。ここまでしてもらって、それを反故にできるほど俺は恩知らずじゃないんだ。
    「お前は、それでいいのか」
    「当然、そのためにもここまでしたんだから」
     馬鹿だ。こいつは、底なしの大馬鹿者だ。……それが嬉しい俺は、それ以上の馬鹿だ。
    「後悔するなよ」
    「昨日散々したから、それ以上はないさ」
    「……ウィル・スプラウトは、ガスト・アドラーを愛し抜くことを、誓います」
     俺の言葉が終わった途端、教会は歓声でいっぱいになった。拍手や指笛の音、冷やかす声も聞こえる。それらすべてに祝福が込められていた。
    「そうか、おめでとうウィル。それでは、指輪の交換を」
     ブラッドさんの言葉を合図に、レンとアキラがクッションに乗せた指輪を持ってきてくれた。
    「おめでとう! ウィル!!」
    「……おめでとう」
    「おう、ありがとな」
    「二人とも、後で詳しく話は聞くから」
     状況からして、この二人が噛んでいることは間違いない。じっとりとして目でそう伝えると、逃げるようにはけていった。こういう時だけ息ぴったりなのだから、困ったものだ。
     よそ見を咎めるように左手をとられ、薬に指輪を填められる。それがすむとアドラーは左手を差し出してきた。仕方ないから、受け取った指輪をアドラーの薬指に填めてやる。
    「それでは、誓いのキスを」
    「そこまでやるんですか……」
    「そういうものだからな」
    「いいじゃん、見せつけてやろうぜ」
    「お前は本当に覚えてろよ」
     頬に添えられた手をはたき落とせたらどれだけ気分がいいだろう。そんなこと、するわけにはいかないけれど。いくつも言い訳を用意して、俺は目を閉じる。唇に温い感触と一際大きくなる歓声に、逃げ道を完全に塞がれた。

    「それで? どういうことだ?」
     誓いのキスを終えて、興味なさげに去って行くもの、律儀に祝いの言葉をかけてくれるもの、様々だった。それも、昼休憩が終わるのと同時に蜘蛛の子を散らすように去っていった。残されたのは、主犯であろうアドラーと協力者らしき幼なじみだけだ。
    「昨日、別れようって言われてショックだったから、やり返してやろうと思って」
     怒るのが苦手なだけで、傷ついていないわけではない。それでも俺が好きだからと耐えてたのに、降って湧いたのは別れ話。堪忍袋の緒が切れた。そう語るアドラーにどうしてそこで結婚式になるのか、俺には理解できない。
    「派手にやったら逃げようなんて考えねぇかなって。正解だろ?」
    「大正解だな。今のうちに病院の予約を勧めておくよ。それで、二人は?」
    「俺は、朝呼び出されて気づいたら仲間にされてた」
    「レンは?」
    「俺もアキラと似たようなものだが、ウィルの幸せに繋がるなら、と」
    「レン……」
     思いがけない言葉に、少し感動した。それならレンはお咎めなしといこう。アキラは明日の掃除と番組交代ね。
    「俺だってウィルとには幸せになって欲しいと思ってるぞ!?」
    「うん、ありがとう。でも当番は交代」
    「理不尽だ!!」
    「あー、そろそろ二人きりにしてもらっても?」
     頭をかきながら言いにくそうに割り込んできたアドラーに、アキラはこれ幸いとレンを連れて出て行ってしまった。まだ話しがあったというのに。邪魔をしたアドラーを少し睨むと、彼はいつもの顔で笑う。
    「それで、何?」
    「一応、謝っておこうかと」
    「いらないから殴らせろ」
     拳を握る俺に、アドラーは覚悟を決めた顔で目をつぶった。
    「どこからでもどうぞ」
    「なんだそれ。……いいよ、今は。なんかやる気なくなっちゃった」
     今は、だけど。シュルシュルと小さくなってしまった感情が行き場をなくして迷子になる。状況への混乱とか、こんなことをしでかしたアドラーへの怒りの感情とかが落ち着いてやってきたのは、これでいいのかという不安だ。
     だまし討ちみたいな結婚式でも誓ったのは己だ。大切な仲間たちと尊敬する先輩方たちの前で俺は、宣言した。それは、アドラーも同じこと。
    「なあ、本当に良かったのか?」
    「じゃなきゃここまでしないって。お前が思ってるよりも、俺はお前に執着してるし、逃がす気なんかねえよ」
    「そう、だよな。何回振っても諦めないくらいに、しつこいやつだもんな」
    「そうだよ、なんで忘れちまうかな」
     両手で頬を挟まれて、ぐいっとアドラーの方に顔を向けらえる。想像以上に近い距離に驚いて目を瞬かせた。
    「ウィルが俺に持ってる憎しみみたいな感情も、俺は嬉しいよ。ウィルの一番でかい感情を独り占めしてるみたいで」
     瞳の奥に浮かぶ熱が、それを真実だと物語っている。その熱に誘われるように、俺は、目閉じた。

    「思っていたよりも、俺たちはお似合いなのかもな」
    「やっとご理解頂けたようで」
    「ああ、やっと。よし、アドラー歯を食いしばれ。やる気が出てきた」
    「それは、できたら出さないで欲しかったな!!」
     じゃれ合う俺たちにマリア像がため息をついた気がした。
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    DOODLEガスウィルポメガバース「キャンキャンッ!キャウンッ!!」
    「わ〜待て待て!!踏む!踏むから!!」
    穏やかな昼下がり。丸々としたフォルムの毛玉が床を転がる。それは一直線にとある人物を目指していた。とある人物、ガストは足にまとわりつく毛玉を踏まないよう、慎重に足をずらしている。それ見守るのは赤と青の弟分だ。
    「またか?」
    「まただ」
    「いい加減学習しないものか」
    「まあ、性格的に厳しいんじゃね?」
    普段の噛み合わなさはどこへやら。穏やかに言葉を交わすのには、それなりの事情があった。それは動く毛玉、ポメラニアン化した彼らの幼なじみに起因する。
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    サブスタンスは意志を持ち、超常現象や自然現象を起こす。それを利用したのがヒーロー能力だ。サブスタンスを投与することで人はその力を使うことが出来る。目には目を、歯には歯を、サブスタンスにはサブスタンスを、と言ったところか。だが、サブスタンスの影響 2814

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    DOODLEガスウィル
    ウィル女体化
    ガストを女性下着売場に放り込みたかったなどと供じゅ(ry
    ピンクや水色のふわふわとしたものから、赤や黒のきわどいデザイン、どこを見てもテイストの違う下着が並んでいるだけで逃げ場がない。自身の存在が明らかに場違いであることを肌で感じながら、ガストは足元を見つめることしか出来なかった。

    「なあ、アドラー。その、ちょっと行きたいところがあって……」
    もじもじと指をいじり、恥ずかしげに問いかける恋人に、一も二もなく頷いた。ウィルの頼み事だから、てっきりカップル限定スイーツのあるカフェだとか、購入制限のあるケーキ屋だとかそういうものだと思ったのだ。
    「……えっと、ここ?」
    「うん……」
    ウィルに連れられてやって来たのは、いかにも女の子のための店、といった外観の店だった。それもそのはず、ディスプレイに飾られているのは表に出していいのかと心配になるほど小さな布を身にまとったマネキンたち。そう、女性下着店だ。
    ガストは目を疑ったし、耳も疑った。今、「うん」って聞こえたけど実は「違う」の間違いだったんじゃないか? うん、きっとそうだ。
    「行こ」
    「お、おう」
    そうだよな、そんな訳ないよな。
    動かない俺の袖口を軽く掴んで、ウィルは店内へと足を進め 1106

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