ワンドロ「花火」「花火大会?」
「うん、どうかな?」
「別に構わないが、お前から誘ってくるなんて珍しいな」
僕と司くんはいわゆるお付き合いをしているけれどその関係はメンバーのえむくんや寧々以外には秘密で。学校はおろかフェニランでも司くんはイチャつくことを許してくれない。せっかく恋人になったのにこれでは仲間のままだ。仲間でも十分だけど恋人になった以上はそれらしい事をしたいということで近日家の近くに行われる花火大会に彼を招待した。ちょうど花火大会に合わせて縁日も開催されるようで僕はチャンスだと思った。お客さんも沢山来るだろうし、人混みも避けられない。うん、これは絶好のチャンスだね。花火に夢中で僕らがイチャついてることに他の人は気づかないだろう。色々楽しもうね、司くん。僕は指折り数えてその日が来るのを待った。
「司くん、おまたせ。」
「約束の時間5分前だぞ。」
「それを言うなら司くんだって」
花火大会までまだ少し時間がある。それまで縁日を2人で回すことにした。射撃に金魚すくいにりんご飴。さすがの司くんも問題ないと判断したのか手を繋ぐことは許してくれた。本当はもうすこし先に進みたいけど逃げられたくないからね。あぁ、そういえばすっかり思い出したけどここには花火大会の穴場があったんだっけ。あそこなら人も来ないだろうし、キス、位は多分しても大丈夫なはず。僕も健全な高校二年生だからね。好きな人相手には触れたくなるもので。司くんはそういう事は卒業してからだと僕に言った。彼らしいといえば彼らしいけど僕はちょっと寂しい。まあでもキスくらいはさすがにね。
司くんをとっておきの場所に連れてくるとそこには僕ら二人しかいなかった。
「ここがとっておきの場所なのか?」
「うん、穴場。ここからなら綺麗に見えるんだ。ほら始まった」
そう言って僕は司くんを後ろから抱きしめる。これくらいは許して欲しいよね。離せとか言われるのかと思って司くんを覗きこめば顔を真っ赤にした彼が。ここでやめておけばいいものを僕は彼のその反応を可愛らしいと思っていた。これはもういいよね。そうして彼の顎を掴んでキスしようとしたその時だった。打ち上げ花火が僕らの目の前に上がったのは。
「類、花火…」
「今はこっちに集中して欲しいかなぁ」
そう僕が困ったように言うと司くんも空気を読んでくれたのか目を瞑ってくれた。キス待ち顔可愛いな。彼のこの顔を見れるのは僕だけなんだと思うとたまらなくなってきた。そうして僕は目の前の恋人に自身の唇を重ねた。