ハロウィンパーティーは終わらないワンドロ
ハロウィン。昔は学校の行事で仮装したりお菓子をもらったりしていたが、成長するにつれ、仮装もしなくなったしお菓子は昔のように大量にもらうことはなかった。
「ということで〜〜!明日はみんなに仮装して来てもらいます!!!」
「何がどうなってそうなったんだ…」
「仮装って言っても私できるようなもの持ってないし…」
えむが今日の練習終わりにそう言い出した。司と寧々は怪訝な顔をするが対照的に類とえむはニコニコと笑みを浮かべていた。
どうせならばハロウィンパーティーをしようという話に収まった。明日は金曜日。土曜日が休みだからちょっと遅くまでパーティーをしてても誰も怒らないだろう。それじゃあ決まり!とえむが号令をかけ、それぞれ更衣室に向かった。
「司くんはどんな仮装をしてくれるのかな?」
「見てからのお楽しみだ!!と言っても話が急だからな、去年のものを持ってくる予定だ」
「去年…?」
「あぁ、去年はクラスでもハロウィンパーティーをしてな。その時の衣装がまだあるからそれにしようかと」
「へぇ」
自分から聞いたくせに淡白な返事を返す類。まぁよくあることなのだが…少々気に障ったりもする。類の仮装は秘密だそうで、明日が少し楽しみになった。
着替えをカバンにしまい、オレたちは帰路についた。途中でスーパーに寄って個包装のお菓子をいくつかカゴに入れる。明日多少はお菓子を持っておかないとクラスメイトに悪戯されてしまうからだ。去年のハロウィンは司は不意打ちにあの言葉を言われたせいで悪戯と称した罰ゲームを喰らっていた。単なる仮装なのだが、吸血鬼のコスプレで、1日を過ごした記憶がある。どんな衣装でも着こなせてしまうオレは凄いな!!やはりスターになるべくして生まれてきた男だ。
家に帰ったら、妹の持っている小さな可愛い袋にいくつかお菓子を詰めて結んでいく。パンプキンの絵柄が可愛らしい。いくつか多めに作り、仲間の分は少しだけ多めに入れた。
「これで大丈夫だな!!」
司は今年はクラスメイトの罠にかからないだろうと考え、明日の用意をしていつもより少しだけ遅くなった時間に眠りについた。
そんな司の期待は簡単に裏切られた。
朝学校に登校してからというもの、クラスメイトにはお菓子を渡していたが、隣のクラスの奴らも声をかけてきて、仲間の分以外のお菓子は簡単になくなってしまった。
「あ、センパイじゃん。いいところに、ね、トリックオアトリート!」
「お前もか暁山…残念ながらさっきのやつでお菓子はなくなってしまったんだ」
「え〜!ボクだけお菓子もらえないなんてひどくない??そんなセンパイには悪戯しちゃいま〜す!」
最初から悪戯目的だったのかと思うほどの態度に司は盲導にでもなれと思った。そんな司に手渡されたのは一つの紙袋だった。
「なんだこれは」
「センパイ去年衣装着せられてたでしょ?今日一日それきてよね!」
「ま、またか…まぁオレにかかればどんな衣装も似合ってしまうから心配はいらないぞ!!」
「ひゅ〜センパイかっこい〜!」
煽てられながら紙袋の中に入っていたのは黒いマントに小さな星と歯車の装飾のついたベルト。蝶ネクタイに付け歯まで入っていた。制服を少し改造すれば着れるようになっているそれらに感嘆の声をもらしながら身につけていく。まぁ。去年も何も言われなかったし大丈夫だろう。
「センパイちょー似合ってる!やっぱりボクの考えているものに間違いなかったね!」
「ははは!!そうだろうそうだろう!しかしこの歯少し喋りにくいな」
「まぁセンパイがつけたかったらつけてていいし、歯を痛めたら大変だから無理はしなくていーよ」
裏地が紫色の黒いマントをひらりと翻し、去っていく司を見て、瑞稀歯にっこりと微笑んだ。あーえななんには何を着せようかななんて考えながら屋上へと足を進めていった。
「天馬ーお前は今年もやられてんのか」
先生が教室に入るなりオレの姿を見てそう声に出した。怒られはしなかったからセーフだろう。授業が終わるとクラスメイトにはなんでお菓子を持ってきたのだとか愚痴を言われる。そんなにいたずらをしたかったのか…???
「私天馬くんに着せたい衣装があったのにお菓子用意されてたし先越されたのちょっとショックだわー」
「でも天馬の仮装似合ってんな。カラコンとか入れれば?」
そんなノリでクラスメイトにはお菓子をあげたのにいじられてさらに装飾が増えていた。前髪は上げられてワックスで固められ、いつもと違う雰囲気の司にクラスメイトたちはキャアキャアと歓声をあげる。休み時間に入るたびにいじられて、昼ごはんを食べる時間にはぐったりしていた。
「う、類か」
「…司くん?」
屋上で先に待っていた類は司の姿を見て目を見開く。襟付きのマントを羽織り、黄色の蝶ネクタイ、腰のベルトには色々とアクセサリーがついて歩くたびに音が鳴る。靴も少し厚底の革靴になっていて極め付けはしちさんに分けられたかみと赤い目だった。
「あぁ、これか?今年は対策したというのにみんなにやられてな…って類?どうかしたか?」
「…ううんなんでもないよ。じゃあご飯食べよっか」
そうだなと頷いて、ルイの隣に腰をおろす。お菓子はパーティの時に渡すから、それまでは言わない約束なので類はねだることはなかった。相変わらず野菜を押し付けてくる類を説得しながらも次のショーについて話していたらチャイムがなってしまった。
類と喋っていると簡単に時間が過ぎてしまう。それを少し名残惜しく思いながらもまた後でと手を振って別れた。
放課後になると撮影会が始まり、類と寧々には練習に遅れてしまうかもしれないと伝えた。早くおわらせるために次々とカッコイイポーズを取る司。クラスメイトたちは四方八方からカメラを向けて司を撮って騒いでいた。
「すまない、今日は練習があるから次で最後な!!」
「はい!私ポーズ指定していいですか!!」
「いいぞ!」
その女子から発せられた言葉に一瞬驚くも、司は近くにいた男子の腕を捕まえて、首筋にはを近づける。恥ずかしいっちゃ恥ずかしいがこれくらいできねばスターにはなれないからな。
その瞬間クラスからはきゃーーー!と声が上がってフラッシュも倍焚かれた気がする。
「ではさらばだ!!またな!」
早足で校門を抜けて、フェニランに向かう。仮装は取る暇もなかったので仕方ないが結構視線を集めてしまい、少し気まずかった。
先に練習を始めていたみんなに声をかけると一瞬動きが固まってしまっていた。えむはそこからダイブしてきて咄嗟に受け止める。
「つ、つ、司くん!!とってもわんだほいだね!!!!」
「着替えてくるから離してくれえむ。ほら」
優しく宥めてもぎゅうと抱きしめられて困ったように眉を下げる司。
「…学校で噂になってたけど…流石にこれは噂にならないといけないレベルよね…」
「昼休みに会った時よりもいじられてるねぇ」
ここで1時間経過しました。続きは明日更新します。エロパートにも入る予定です。