Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    東野文風

    小説オンリー。二次創作の掌編を投げる予定

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 36

    東野文風

    ☆quiet follow

    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第7回目『熱』で参加させて頂きます!(+40min)
    できてるドラロナでドさんが体調を崩す話。吸血鬼の体調変化について捏造してます。

    熱を幻視する 電子レンジでぬるめに熱した牛乳へ、人工血液をスプーン一杯分投入。そのまま、赤い色が拡散して色味が均一化するまでかき混ぜる。
    「本当にこれだけでいいのか?」
    「それ以上入れたら胃もたれ死するから」
     棺桶から聞こえた返事にロナルドは眉をひそめながら、言われた通りに作った血の牛乳割りをドラルクへ差し出した。気怠げに身を起こした吸血鬼はマグカップを受け取り、退治人手ずから用意したそれをちびちびと飲み始める。棺桶のすぐ傍ではアルマジロのジョンが水で濡らしたタオルを懸命に絞っていた。
    「吸血鬼は風邪引かないんじゃなかったか」
    「人間の病気にはかからないが、調子が悪くなる時はある」
     見たまえこの顔色、と血色の悪い顔面を指してドラルクは言う。ロナルドには普段との差が分かりにくいがジョンには一目瞭然のようで、ヌヌヌヌヌヌ、と不安げに主人を呼んだ。
    「心配してくれてありがとう、ジョン。なぁに、今晩しっかり休めば大丈夫さ」
     ――今日はドラルクがいつにも増して死ぬ日だった。最初は妙に砂になる回数が多いなと思う程度だったが、料理の味つけを失敗したと悔しがりながら死んだのを見て流石に変だと思い、ジョンと共に問い詰めてみれば、寝起きの気分の悪さからそのまま体調不良に陥ったとのこと。
    「吸血鬼というのは精神に肉体が引きずられやすくてね。退屈や憂鬱はそのまま物理的なダメージとなり得るんだ」
    「ティッシュ貰い損ねるだけで死ぬもんな、お前」
    「思い出させるなアホ微妙に死んだわ。ま、逆に言えば精神が“休んだ”と感じられたら肉体の調子も戻る。今日はゲームも配信もせずにのんびりさせて貰うさ」
     言葉の合間合間に牛乳割りを飲んでいたドラルクが、ふと事務所へ通じるドアを一瞥する。ソファに座り様子を見ているロナルドへ視線を戻すと、呆れたように肩を竦めた。
    「全く、臨時休業にする程でもないだろうに」
    「るっせえな、誰か来た時は出るからいいんだよ」
    「ふーん? 素直にドラドラちゃんが心配だって……言っても構わんよ?」
    「明日殺すわ」
     気合いでデザートを冷蔵庫へ突っ込んだ後で力尽きたように棺桶の中へ倒れたドラルクを見て、ロナルドは仕事モードの退治人衣装から部屋着のジャージへ着替え直した。SNSで臨時休業の旨を報せた後、看病の準備を始めたジョンを手伝ったのである。
     心配というよりは、当たり前のことをしている感覚。ジョンが風邪を引いたら当然ながら看病に専念する心持ちだし(急を要する退治には泣く泣く行くものの)、ロナルドが熱を出した時はドラルクが勝手に休みにした(緊急の用件に向かおうとしたら滅多にない剣幕で怒られた。解せない)し、なら今回だって休業日にするのが筋というものだろう。
    「やれやれ、これだからツンの出力バグりルド君は――ん、何?」
    「いや……」
     軽口よりも普段は後ろへ撫でつけられている前髪が降りているのが気になって、ロナルドは何となくドラルクの額へ手を伸ばした。不意打ちで死ぬかな、という予想に反して目の前の吸血鬼は不思議そうに目を瞬かせるのみ。
    「こんな時でも、熱とかないんだなって」
     ひやりとした額に触れるため、強引に捻り出した理由。ああ、とドラルクが軽く頷く。
    「吸血鬼だからね。よほど興奮した時とか感情が動いた時でなければそう上がらんよ」
    「ふーん……」
     ――じゃあ、素肌を重ねた時に焼けるような熱を感じるのは何なのだろうか。体温差に低温やけどでも起こしているのか、吸血鬼の手練手管に翻弄されたロナルドの錯覚か。
    「ギャーーーどうした若造急に発熱して!」
    「ヌァ?!」
    「あ」
     ロナルドの指先で塵と化したドラルクに、慌てて手を引っ込める。流石にばつが悪くなったので何かして欲しいことがないか尋ねれば、普段より殊勝な笑みを浮かべた吸血鬼は空のマグカップを差し出しておかわりを所望するのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🌠🌠🌠🌠🌠🌠🌠🌠🌠👏💖🍼☺🌠👏👏👏🙏🙏🌠
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    東野文風

    DONE #夏のヌーフェス
    オンリー開催&ヌー君お誕生日おめでとうございます!

    こちらは「お3」の展示小説になります。
    ・Δ世界線でジョンとノース本部長が睨み合ったりにっぴきがワヤワヤしたりする話です
    ・主従の出会った時期とか色々捏造してます
    ・ジョンはドラルク隊の隊長補佐という役職を持っている設定
    ・本部長が憎まれ役っぽい立ち回りに見えるかも

    全体的には平和でほのぼのな話です。よろしくお願いします!
    お勤めマジロとスコーンとヒゲ「どうしました、おじい様……この子を、私に?」
     その時のことは、いつまでも覚えている。
    「は、拾った? 大丈夫なんですか条約とか法律とか……問題ない? 本当ですね、何かあったら助けて下さいよ?!」
     子供の小さくて柔らかな手の温もり、まだ頬が痩けていないあどけない面立ち、声変わり前の溌剌とした少年声。
    「はぁ……えっと、こんにちは」
     そして、一等星のような黄金色の目と視線が合った瞬間、直感したのだ。
    「……ふふ、君、テニスボールみたいだな」
    「ピュー」
     己はきっと、彼に出会う為にこの世界、この時代に生まれたのだと。

    「さぁ、そこに掛けたまえ」
    「ー……」  
     吸血鬼対策課本部のとある一室。部屋の主に促されてフカフカの椅子に渋々座った一玉のアルマジロは低い唸り声を上げた。
    5331

    related works

    sirokuma594

    DONE200年物のメッセージボトルがようやく退治人の元に流れ着いた話
    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負 (@DR_60min)よりお題「海」で書かせていただいたものです。
    純情inボトル、onペイパードラルクが初めて手紙を書いたのは、8歳の時の海辺でのことだった。

    流れる水の傍というのは、吸血鬼にとって昼と同じくらい恐ろしい。虚弱なドラルクであれば尚更だ。人間の子供であっても海の事故は多いという。当然、心配性の父母はドラルクを海になど連れていきたがらなかった。

    「おじいさま、あれはなんですか?」
    「手紙。瓶に入れてどこかの誰かが流したの」
    「てがみ! よんでみたいです」

    偉大かつ子供のような祖父の腕に抱かれ、ドラルクは海辺の綺麗な小瓶を指差した。夜の砂浜に動くものは二人の他になく、曇り空の果てから真っ黒な水が唸るように打ち寄せる音だけが聞こえていた。
    ドラルクは祖父に似て好奇心が旺盛だった。血族には内緒の二人きりの冒険にも当然付いていく。手紙入りの綺麗な小瓶も当然欲しがった。祖父はキラキラと期待に満ちた孫の顔を見て、裾が濡れるのも構わずにざぶざぶと波打ち際を歩いて行った。祖父の大きな手の中に収まった透明な丸い瓶を見て、ドラルクはさらに目を輝かせた。
    5312

    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
    2074