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    東野文風

    小説オンリー。二次創作の掌編を投げる予定

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    東野文風

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    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第14回目『ハロウィン』で参加させて頂きます!(+30min)
    読切ドラロナ。死神コスした読ロ様が町内でお菓子配りをする話。ほのぼの(一瞬だけ不穏)でCP要素薄め。

    誰のものか示すためでもある、と後に語った「退治人だー、トリックオアトリート!」
    「ねぇねぇ何でお面つけてんの、取っていい?」
    「今日、ロナルド様が来てるって本当?!」
     今日はハロウィン。夜の公園は思い思いの仮装をした子供達がやって来ては、ベンチの前で待機していた人影――お菓子配りのボランティアで配置していた退治人に群がっていた。
    「ったく、元気が有り余ってんな」
     小さなモンスターたちに包囲された退治人は、お面を取ろうと飛び跳ねる子供を制しながら彼らへお菓子の入ったバスケットを見せる。
    「お菓子ならやるから、ちゃんと並べよガキども。良い子にしないと……死神様の鎌がお前らの魂を取っちまうぞ?」
    「きゃー!」
    「わぁーい!」
    「全っ然ビビらねぇなオイ……はは」
     柄の先端にカボチャの装飾を付けた大鎌を向けてもはしゃぐばかりのチビッ子たちに、退治人――ロナルドはお面の下で密かに笑った。急遽数合わせで駆り出されたボランティアだが、子供が喜ぶ姿を見るのは嫌いじゃない。平和的なイベントも退治人業をこなす上での必要な潤滑剤なのである。

    「ふー……」
     公園を訪れる子供が途切れたタイミングでベンチに腰かけ、お面をずらして水分補給をする。十月の末で夜気が随分と冷たくなっていたが、何時間も子供達の相手をすれば流石に暑くもなる。姿を晒して悪目立ちするのを避けるために黒い布で頭から足首まで全身を覆い、白い仮面で顔を隠す作戦の成果は上々だが、蒸れて汗ばむのが唯一の難点だった。
    「っと、次か」
     入り口から聞こえてきた足音にさっと仮面を被り直す。これが終われば城に預けたツチノコとカボチャを迎えに行って、アルマジロのジョンにお菓子を差し入れして、ついでにドラルクが作った美味しい料理を食べる。仕事明けのお楽しみを思い浮かべて気合いを入れ、ロナルドは大鎌を手にすっくと立ち上がった。
    「こんばんは、死神さん」
    「おう、よく来たな。……一人か?」
    「うん、ちょっと寝坊しちゃって」
     やって来たのは頭から白い布を被った、シンプルなお化けの仮装をしている子供だった。他の子たちと違って一人でやって来たようだが、肝が据わっているのか不安げな様子は見られない。……一応、お菓子を渡したら人通りの多いところまで送った方がいいだろうか。
    「それよりねぇ、トリック・オア・トリート!」
    「はいはい、ちょっと待ってな……あれ」
     ベンチに置いていたバスケットを持ち上げお菓子を取ろうとして、ロナルドは思わぬ事態に首を捻った。ギルドで溢れんばかりに飴だのクッキーだの詰め込んだ筈のバスケットは、すっかり空になってしまっていたのである。
    「どうしたの? ねぇ、お菓子は?」
     おかしい、休憩前にはまだ残っていたと思うのだが……不審に思うロナルドの傍で、子供が焦れた様子で尋ねてくる。これは、正直に話してギルドで改めて渡すしかなさそうだ。あの付近ではハロウィンメイドに扮した実兄が待機しているので極力戻りたくはなかったが、背に腹は代えられない。
    「あー、悪いな。今お菓子はちょっと切らしちまって」
    「ふぅん」
    「ギルドにはまだあるから、今から一緒に」
    「――お菓子が、ないなら」
     抑揚のない子供の声が、ロナルドの言葉を遮った。一層の冷たさを帯びた夜気が、汗の乾いた身体から体温を奪っていく。
    「いたずら、するぞ」
     白い布の裾が舞い上がり、覆われていた何かが今にもその姿を、
     ――バサリ。
    「……あ?」
     バスケット目がけて落ちてきた音に、ロナルドは懐に入れた手を引いた。覗き込むと、今まで配ったものとは明らかに違う、チョコチップとアイシングで綺麗にデコレーションされたカップケーキの包みが入っていた。
     パタパタと、続いて頭上から聞こえてきた羽ばたき音に視線を向ければ、紫色の小さなコウモリがこちらの肩に乗っかるところだった。得意げにピスピスと鳴くそいつを一瞥した後、ロナルドはいつの間にか布を被り直した子供に向き直る。
    「驚かせてごめんな、どうやら親切なコウモリがお菓子を届けに来てくれたらしい」
    「え、あ」
     コウモリとロナルドを交互に見て戸惑ってるらしい相手に半ば押しつけるようにお菓子を渡し、明るく努めて手を振って送り出す。
    「ほら、お菓子をどうぞ。ハッピーハロウィン!」
    「ありが、とう。ハッピー、ハロウィン」
     ぎこちなくお辞儀をした子供が公園から走り去るのを最後まで見届けた後、ロナルドは肩に居座るコウモリをジロリと見た。
    「余計なことしやがって」
    「ああいう輩は興味を削いでやった方がいいんだよ。退治人に認知されたと調子に乗られたら困るだろう?」
     流暢に日本語を話すコウモリ――に、変身したドラルクの言葉に、ロナルドはわざとらしくそっぽを向いた。
    「あの程度、俺がいればどうとでもなる」
     実際、奴がアクションを起こす前に麻酔弾をぶち込む余裕は十分にあった。ドラルクがお菓子を落とすのが一秒でも遅かったら今頃あの子供、もとい吸血鬼は現行犯でVRC送りとなっていただろう。
    「そうなったらますます遅くなってしまうだろう? 折角のハロウィンなのに、ロナルド君が来ないまま夜明けになるのは嫌だよ私」
    「お前まさか……それが奴に菓子を渡した理由か?」
    「えっ、何か駄目だった?」
    「……いいや」
     再び空になったバスケットを開いてドラルクへ示す。意図は伝わり籠の中に入ったドラルクはピスピスと楽しげに鼻息を奏でた。
    「カップケーキ、俺の分もあるんだろうな」
    「勿論だとも! 他にもたくさんあるから楽しみにしてくれたまえ」
    「はっ、精々期待してやるよ」
     ギルドへ現地解散の連絡をして、ロナルドはバスケット片手に足取り軽くレンタカーへ向かった。ロナルドの来訪が待ち遠しくてわざわざ飛んでやって来たらしい吸血鬼のために、一刻も早くドラルク城へ行ってやるとしよう。

    「ーーーロナルド君スピード出し過ぎ怖い死ぬぅーーー!」
    「規定速度60km/hだ耐久お豆腐野郎が!」
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    Replies from the creator

    東野文風

    DONE #夏のヌーフェス
    オンリー開催&ヌー君お誕生日おめでとうございます!

    こちらは「お3」の展示小説になります。
    ・Δ世界線でジョンとノース本部長が睨み合ったりにっぴきがワヤワヤしたりする話です
    ・主従の出会った時期とか色々捏造してます
    ・ジョンはドラルク隊の隊長補佐という役職を持っている設定
    ・本部長が憎まれ役っぽい立ち回りに見えるかも

    全体的には平和でほのぼのな話です。よろしくお願いします!
    お勤めマジロとスコーンとヒゲ「どうしました、おじい様……この子を、私に?」
     その時のことは、いつまでも覚えている。
    「は、拾った? 大丈夫なんですか条約とか法律とか……問題ない? 本当ですね、何かあったら助けて下さいよ?!」
     子供の小さくて柔らかな手の温もり、まだ頬が痩けていないあどけない面立ち、声変わり前の溌剌とした少年声。
    「はぁ……えっと、こんにちは」
     そして、一等星のような黄金色の目と視線が合った瞬間、直感したのだ。
    「……ふふ、君、テニスボールみたいだな」
    「ピュー」
     己はきっと、彼に出会う為にこの世界、この時代に生まれたのだと。

    「さぁ、そこに掛けたまえ」
    「ー……」  
     吸血鬼対策課本部のとある一室。部屋の主に促されてフカフカの椅子に渋々座った一玉のアルマジロは低い唸り声を上げた。
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    sirokuma594

    DONE200年物のメッセージボトルがようやく退治人の元に流れ着いた話
    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負 (@DR_60min)よりお題「海」で書かせていただいたものです。
    純情inボトル、onペイパードラルクが初めて手紙を書いたのは、8歳の時の海辺でのことだった。

    流れる水の傍というのは、吸血鬼にとって昼と同じくらい恐ろしい。虚弱なドラルクであれば尚更だ。人間の子供であっても海の事故は多いという。当然、心配性の父母はドラルクを海になど連れていきたがらなかった。

    「おじいさま、あれはなんですか?」
    「手紙。瓶に入れてどこかの誰かが流したの」
    「てがみ! よんでみたいです」

    偉大かつ子供のような祖父の腕に抱かれ、ドラルクは海辺の綺麗な小瓶を指差した。夜の砂浜に動くものは二人の他になく、曇り空の果てから真っ黒な水が唸るように打ち寄せる音だけが聞こえていた。
    ドラルクは祖父に似て好奇心が旺盛だった。血族には内緒の二人きりの冒険にも当然付いていく。手紙入りの綺麗な小瓶も当然欲しがった。祖父はキラキラと期待に満ちた孫の顔を見て、裾が濡れるのも構わずにざぶざぶと波打ち際を歩いて行った。祖父の大きな手の中に収まった透明な丸い瓶を見て、ドラルクはさらに目を輝かせた。
    5312

    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
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