Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ナナシ

    @nanashi273

    アイドルマスターが好きです。
    765、如月千早・高槻やよい・水瀬伊織・周防桃子
    346、橘ありす・大沼くるみ
    315、天ヶ瀬冬馬・伊集院北斗・御手洗翔太・若里春名・冬美旬
    283、小宮果穂

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 26

    ナナシ

    ☆quiet follow

    違法Tulipに囚われてるオタクです

    事務所を出る少し前、窓を打つ雨の音が聴こえてきた。
    「…お、雨か」
    「予報で言ってたけど…あの天気から降るとは思わなかったな…」
     どうやら、北斗はこの雨をしのぐ傘を忘れてしまったようだ。
    「俺持ってるぜ。駅まで一緒に入っていくか?」
     きちんと予報に従い、傘を持ってきていた冬馬は、事務所の玄関にある傘立てを指さした。そこには、確かに冬馬の傘が刺さっていた。
    「じゃあお言葉に甘えて…」
    「おう、行こうぜ」
     傘を持ち、事務所を出る。階段を下って外に出る前、冬馬は傘を開いた。
    「ほら、入れよ」
     傘を傾け、北斗を迎え入れようとする冬馬。その隙間に入ると、互いに肩先が傘の下を出てしまっていた。
    「冬馬、肩、濡れてる…もっとこっちに来なよ」
     冬馬の肩を抱いて引き寄せる。互いにくっつくように、近くになった。
    「おいっ……、まあ、濡れちまったらダメだしな…風邪とか引いちまうし…」
     冬馬は己の中でこの体勢を良しとする理由を見つけたらしい。寄り添って歩くことを許可してくれた。
    「ありがとう。行こうか」
     駅までの短い道のりを歩いて行く。天気のせいか、外を歩いている人はまばらで、傘で隠れた二人は、まるで世界にふたりっきりになったような錯覚を覚えた。
     やがて駅に到着する。屋根の下に体を置いて、冬馬は傘を閉じた。
     触れていた肩にまだ互いの体温が残っている気がして、片手でそっと触れた。
     傘を閉じ終えた冬馬の顔を覗き込む。ほんのり、少し赤が差している気がした。
    「ねえ、もう少し、一緒にいたいな」
     北斗は想いを隠すこともなく、冬馬へ伝える。返事を紡ぐ冬馬の唇に目を奪われた。
    「……俺も」
     それだけ、紡いで。冬馬の唇は静かになった。
     北斗は冬馬の手を引いて、地下へ続く階段を降りていった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works