はなまつり まさか、初日から蘭丸が愛著を取ってくるなんて思わなかった。
世の中には順番があって、ただ早いか遅いかの差しかない。それくらいのことは、俺だってわかってる。だから焦らなくても大丈夫だって、自分に言い聞かせる。
自分の育ったところから離れて、ついさっきまで顔も知らないひとたちと寝たり起きたりすることにも、思ったより早くなじんだ。いろんなことがいっぺんに起きすぎて、緊張してる暇がなかった。焔と話すときは、あいつすぐ怒るから、ちょっと怖いけど。
学校から帰るときに、ときどき、開店祝いの花のスタンドを見かける。てっきり誰かがいなくなったのかと思ってたけど、どうやらそうではないらしい。
「あれはお祝いや。花屋も稼ぎどきやからな」
そうか。でも、この世から見送られるのだってお祭りみたいなもんじゃないか。
自分の祭りを、俺は見ることはできない。
いろんな友達やお兄ちゃんを見送りながらそう思うようになっていった。悲しくはない。だって順番だから。いつか、俺にも必ずまわってくる。来てくれた人に変な顔をして笑わせてもあげられないし、出されたごはんを一緒に食べられない、だけど俺だけの祭りが。