ひとつとふたつ かわいいままだとナメられる。人間界に来て真っ先に気づいたことはそれだった。近衛のふたりにとって、かわいいことや美しいことは仕事だし、何よりわたしが望んだことだ。だから、わたしはかわいくなくていい。強く、人間どもの折衝に負けない程度に相手を威圧できればいい。装うことは武装で、強くなっていく自分のことも好きになれた。前髪は庇のようにどんどん大きく目立ち、まわりが見えなくなっていったのも、そのせいかもしれない。
服装や髪型は変えられても、髪色までは変えられなかった。
ツボドームでのライブの初日、タクシーを降りると駅前では大勢の女の子たちの姿が見えた。シリウスとベテルギウスを模して、女の子にしたようなかわいい服装。ご丁寧にも背中に白い羽まで背負っている。近衛のふたりはひとつ結びだが、この子たちは二つ結びだ。
わたしは、あの子たちとは違う。わたしは与える側。あの子たちは家畜。なのにどうして、わたしは疲れ果てて、あの子たちは、あれほど期待に満ちた顔を輝かせているのだろう?