カレーうどん パート先が無事に見つかって三ヶ月が過ぎた。仕事はいわゆる「学食のおばちゃん」。自分の子と同じような年齢の子たちの相手を毎日している。
十二時前にいつもやってくる赤い髪の子は、いつもラーメンを頼む。ちょっとせっかちで怖いけど、オーダーを間違えたとき、キレなかったくらいには優しいのかもしれない。後から来る子たちの席取りをしているのかもしれないし。
十二時過ぎるとやってくる長髪の子は、生徒会長とのことだ。長髪でも生徒会長になれるとは、自由な校風に万歳といったところか。私が時代錯誤なのか。いつも冷やしたぬきを頼んで、すぐ席を立つのは、生徒会長の役職の忙しさからだろうか。
それより少し遅れてやってくる、ふわふわ頭にヘッドホンの子と地味なメガネの子。いつも仲良しそうに二人で連れ立ってやってくる。
地味なメガネの子はいつもA定食を頼む。生姜焼きだろうが野菜炒めだろうが丼だろうが、A定食しか頼んでいるところを見たことがない。無個性を絵に書いたような子だけれど、札を出すとき指輪をしているのに気づいた。彼女さんから貰ったのか、今の流行りなのか。
ふわふわ頭の子は、だいたいカレーうどんを頼む。慣れなくてカレーライスを出したとき、一瞬硬直して、でも「いいですよ」と言ってくれた。オーダーを間違えた私が悪いのはもちろんだけど、普通、学生さんってカレーが好きなんじゃないかしら。そう思って、一番話しかけやすそうなふわふわ頭の子に聞いてみた。
「あー、あれね、朝晩カレーだから食べ飽きてるだけだよ」
苦笑いしながら、ふわふわ頭の子が答えた。
どういうこと? 食べ飽きてるはずなのに、なぜカレーうどんを頼むのかしら。そういうと、ふわふわ頭は顎に手を当てて考え込んでしまった。
「結局、口が慣れちゃってるのかもしれないし、文句言いながらも毎日全部食ってるんだよな……人間の体、こういうところ便利なんだな」
もう高校生なのに、不思議ちゃんなのかしら。最後のつぶやきはスルーして、曖昧に笑っておくことにした。