隠し事 そりゃ、殺したくなるくらい憎かっただろうよ。頭が冷えた今となってはそう思う。
おれは自分の感情を隠すのが苦手で、別に隠す必要も感じなかった。笑いたいなら腹が痛くなるくらい笑って、怒りたいならブチ切れるほど怒っていたし、涙を見せるのも、デカくなってからは滅多になかったが、いちいち隠し立てするようなことではないと思っていた。
お高くとまって、感情に流されないことを鼻にかけているような水潤の奴らは、おれたちのそういう所にムカついていて、だから気が合わないのかと、そう思っていた。
火焔の仲間たちは、とうさんの不名誉な死について、何も教えてくれなかった。ガキだったおれを守ってくれていたのに気づいたのは、だいぶ後になってからの話だ。
なぜあいつが泣いているのかなんて、あの時は気づきもしなかった。
子供だの可哀想だのと罵倒したおれの前で泣くなんて、相当なことがあったのだと思ったから、何も聞かなかった。肩口から染み込む涙がやけに熱くて、普段冷静なあいつとは思えなかった。
うるうが何に耐えていて、何のためにおれに全てを話さなかったのか、ガキの頃を思い返してようやく気づいた。悲しませたくなかったからだ。それでも我慢できなかったから、嫌味や皮肉を言ってきたのかと、ようやく思い至った。
殺してえなら殺してえって言えばいいじゃねえか。泣きたいなら泣けばいいし、おれも殺されたくなかったらやりあうだけだし、納得できるなら、おれは逃げたりしない。