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    みしま

    @mshmam323

    書いたもの倉庫

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    みしま

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    リクエストまとめ③「コーポVがコーポのお偉いさんに性接待したあと最悪の気分で目覚めて嘔吐する話」
    ※直接的な表現はないのでR指定はしていませんが注意。

    #サイバーパンク2077
    cyberpunk2077
    #cyberpunk2077

    ルーチンワーク ホロコールの着信に、おれは心身ともにぐちゃぐちゃの有様で目を覚ました。下敷きになっているシーツも可哀想に、せっかくの人工シルクが体液とルーブの染みで台無しだ。高級ホテルのスイートをこんなことに使うなんて、と思わないでもないが、仕事だから仕方がない。
     ホロコールの発信者は上司のジェンキンスだった。通話には応答せず、メッセージで折り返す旨を伝える。
     起き上がると同時にやってきた頭痛、そして視界に入った男の姿に、おれの気分はさらに急降下した。数刻前(だと思う)までおれを散々犯していたクソお偉いさんは、そのまま枕を押し付けて窒息させたいほど安らかな寝顔でまだ夢の中を漂っている。
     意図せず溜息が漏れた。普段に比べて疲労が強いのはアルコールの影響だけじゃないはずだ。酒に興奮剤か何か盛られたに違いない。こういう、いわゆる“枕仕事”をするときは、生化学制御系のウェアをフル稼働させて嫌でもそういう気分を装うのが常だ。ところが今回はその制御を完全に逸脱していた。ろくに覚えちゃいないが、あられもなく喚いておねだりしていたのは所々記憶にある。羞恥心なんかどうでもよくて、油断していた自分に腹が立つ。
     ハッキングなら検知できたはずだから、おそらくは混ぜ物のない“安全な”クスリを使ったんだろう。それも、弊社傘下の会社で開発中の新商品のサンプルか何か。アラサカ製モニタリングウェアを騙せるとしたらそれしかない。社内の人間にすら使うなんて容赦のないことだ(さぞ良い試験結果が得られただろうなクソったれ。次はこっちが使う番だ)。とは言え、そこはお互い様ってやつだ。こいつだっておれに下心が無いとは思っちゃないだろう。
     念のため全身を再スキャンして、体内の残留物は過剰に分泌された分解酵素だけだと確認した。プラス頭痛。あとでライフコーチがあれこれと御託を並べ立てるだろうが、あんなボットみたいなやつの言葉など――いや、実際にボットだったとしても、おれは驚かない。
     唯一の救いと言うべきか、さすが金がかかっているだけあってクソお偉いさんの首から下は悪くなかった。年齢の割にはって意味では。ただし、顔は好みとは程遠い。
     星1評価(目鼻口はそろっているのでギリ星一個です。でもこれなら全換装のマスク型にしたほうがいいと思います♪)の顔をボコボコに殴りつける想像で溜飲を下げていると、急にみぞおちのあたりが熱くなって、おれは慌ただしくバスルームへ駆け込んだ。
     便器に顔を突っ込んで、胃の中身を吐き出す。ルームサービスの残渣、酒、消化液、あとおそらく精液。おまけに少量の血。えずいては出すを三回ぐらいやって、おれはようやく人心地ついた。
     キリキリと痛む胃を押さえつつ、どうにか体を起こして洗面台へ向かう。冷水で口と顔を洗って身を起こすと、鏡が相変わらずの酷いツラを映し出した。血色の悪い肌に隈の取れない目元、筋張った上半身。そして首元のキスマーク。それに気づいた途端死ぬほど疎ましさが湧き上がった。憤死しちまう前にアメニティの籠を漁ってエアハイポを取り、鬱血の上から思い切り突き刺す。これで少しはマシになった(※当社比)。
     バスルームから出たおれを、ミスター“F”フェイスが心配顔で出迎えてくれた。
    「大丈夫?」
     大丈夫かだって? それを聞くぐらいならクスリに頼らずその気にさせてみろってんだ――とは言わず。
    「ええ、ちょっと胃の具合がよくなくて」
    「医者を手配しようか? フロントに連絡を――」
    「いいえ、それには及びません。その、つい調子に乗りすぎてしまっただけですから」
     上目遣いにしおらしく返せば、やつは「やれやれ、仕方のない子だ」「積極的なきみはすごく可愛かったよ」とかなんとか言いながらおれをシャワーの下へと誘った。まあ、おれもそろそろ身ぎれいになりたかったから、ペッティングのご奉仕は我慢しよう。最後の仕上げにクソお偉いさんのネクタイを結んでやる――というフリをして、仕掛けていた極小の傍受用中継機を回収する。証拠は残さない、が仕事の鉄則だ。
     と、やつの手がおれの首筋に添えられた。
    「広報部だっけ? あそこには顔が利くんだ、昇進を打診してあげてもいいよ?」
     なにか気取られたんじゃないかと一瞬焦ったぜ。残念、正解は防諜部でした! それにしてもあんたの残念なツラを立てないとならないなんて、広報部のご苦慮のほど拝察いたします。あとその手をどけろ、あんたのアウトプットじゃねえんだぞ。
     ……という言葉の数々も飲み込んで。
    「ありがとうございます。でもお気持ちだけで十分です。近々配置換えの予定で」
    「へえ、どこに?」
    「まだ聞いていないんです。決定は来週だとか」
    「そうか、決まったら教えてくれ。もしそこが気に入らなければぼくの所へ来たっていい。給料は保証するよ」
    「ありがとうございます。お目にかけていただけて嬉しいです」
     そうしてやっと、クソ野郎は部屋を出て行った。ドアが閉まるまでおれは笑みを絶やさずお見送り。我ながら百点満点の出来だ。耳をそばだてて、エレベーターが確実にやつを乗せて動き出したのを確認する。念のため部屋を一通り点検し――よし、盗聴器の類はないな――上司へホロコールをかけ返した。
    「V――」
    「今、送りました」
     皆まで言わせず、おれは手に入れた情報をジェンキンスへ送信した。ハッキングで得たスケジュール情報、盗聴した通話、取り入って聞き出した秘密。中にはおれの猫なで声やら喘ぎ声やらも含まれているだろうが、いつものことだ。ジェンキンスがデスクの下でご自慢のブリトーを扱いていようと知ったことか。
    「……よくやった。彼には申し訳ないが、目的は果たせたな。奴を表舞台から引きずり下ろすには十分だ」
     申し訳ない? その割には随分と満足そうな口調だ。
    「誰を行かせます?」
    「いや、今回はマスメディアを噛ませるとしよう。今日はこのまま上がっていいぞ、V。では明日」
    「はい」
     接続を切り、おれは深く息をついた。これで少なくとも今日一日は空きができた。控えているであろう事後処理のことは考えない。おそらくは上辺の事情しか知らないジャーナリストか経理課あたりが探りを入れてくるだろうが、対応策は準備済みだし、万一のことがあってもICEの強化をかけておけば……
     ……考えない。考えない。今日はオフ。自室へ帰って寝酒をやりつつダラダラ過ごして終わるとしても。明日の出勤までは自由の身だ。
     自己暗示をかけていたところへ、またホロコールの着信が入った。ジェンキンスかライフコーチかと思ったが、予想外の、それも喜ばしい相手だった。親友のジャッキーだ。思わず頬が緩む。
    「お、出たな。ようV」
    「ようジャック」
    「なんだ、朝っぱらから疲れてるな?」
     たった一言、挨拶だけで見抜かれてしまっている。そんな親友への信頼と後ろめたさに、おれはつい苦笑を漏らした。
    「いつも通りだよ。そっちこそどうした?」
    「いや、用事ってわけじゃないんだけどな。ほら、ここんトコ忙しそうだったし――ってのもいつも通りか。まとにかく、もし都合がつくなら久々に会えないかと思ってさ」
     モニタリングウェアなんかより、親友のほうがよほど的確におれの状態と都合を察知してくれる。一年以上経つのに引っ越し荷物すら片付いていない部屋へ直帰なんて、それこそ時間の無駄だ。
    「いいぜ。ちょうど一区切りついたところなんだ。飯は? 奢るよ」
    「それよりコヨーテに来いよ、ってか来てくれ。オフクロがうるさくってかなわねえんだ。『あの子はちゃんとしたもの食ってるのかい? 近頃はトンと顔も出さないで!』。な? おれを助けると思って……」
    「わかったわかった! 喜んでご馳走になるよ」
    「ヨッシャ! じゃ後でな」
    「ああ」
     ママ・ウェルズのメキシカンも随分久々だ。胃が受け付けるが不安だが、拒めばそれこそウェルズ家総出でおれをベッドに縛り付けるだろう。それで問題なく会社を休めるならもっといいのにな。
     鼻歌交じりに身支度を整えていると、サイドテーブルに置かれたメモに目が留まった。
     “素敵なもてなしをありがとう。61×-×××××××”
     ご丁寧にも、あのクソ野郎はプライベートの番号を残していったようだ。ゴミ箱に投げ捨てようかとも思ったが、計画変更。おれは懐からユーロドル紙幣を気持ち多めに取り出して、そのメモの下に添えておいた。勘違いしたメイドが回収してくれるに違いない。いいことをしたぞ。
     エル・コヨーテ・コホへ行く途中で適当な店で服を変えて、スーツはクリーニングに出さないとな。そう予定を立てつつ、おれは気分よく部屋を後にした。
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    みしま

    DONEiさん(@220_i_284)よりエアスケブ「クーパーからしょっちゅう〝かわいいやつ〟と言われるので自分のことを〝かわいい〟と思っているBT」の話。
    ※いつもどおり独自設定解釈過多。ライフルマンたちの名前はビーコンステージに登場するキャラから拝借。タイトルは海兵隊の『ライフルマンの誓い』より。
    This is my rifle. マテオ・バウティスタ二等ライフルマンは、タイタンが嫌いだ。
     もちろん、その能力や有用性にケチをつける気はないし、頼れる仲間だという認識は揺るがない。ただ、個人的な理由で嫌っているのだ。
     バウティスタの家族はほとんどが軍関係者だ。かつてはいち開拓民であったが、タイタン戦争勃発を期に戦場に立ち、続くフロンティア戦争でもIMCと戦い続けている。尊敬する祖父はタイタンのパイロットとして戦死し、母は厨房で、そのパートナーは医療部門でミリシアへ貢献し続けている。年若い弟もまた、訓練所でしごきを受けている最中だ。それも、パイロットを目指して。
     タイタンはパイロットを得てこそ、戦場でその真価を発揮する。味方であれば士気を上げ、敵となれば恐怖の対象と化す。戦局を変える、デウスエクスマキナにも匹敵する力の象徴。
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    みしま

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    ※直接的な表現はないのでR指定はしていませんが注意。
    ルーチンワーク ホロコールの着信に、おれは心身ともにぐちゃぐちゃの有様で目を覚ました。下敷きになっているシーツも可哀想に、せっかくの人工シルクが体液とルーブの染みで台無しだ。高級ホテルのスイートをこんなことに使うなんて、と思わないでもないが、仕事だから仕方がない。
     ホロコールの発信者は上司のジェンキンスだった。通話には応答せず、メッセージで折り返す旨を伝える。
     起き上がると同時にやってきた頭痛、そして視界に入った男の姿に、おれの気分はさらに急降下した。数刻前(だと思う)までおれを散々犯していたクソお偉いさんは、そのまま枕を押し付けて窒息させたいほど安らかな寝顔でまだ夢の中を漂っている。
     意図せず溜息が漏れた。普段に比べて疲労が強いのはアルコールの影響だけじゃないはずだ。酒に興奮剤か何か盛られたに違いない。こういう、いわゆる“枕仕事”をするときは、生化学制御系のウェアをフル稼働させて嫌でもそういう気分を装うのが常だ。ところが今回はその制御を完全に逸脱していた。ろくに覚えちゃいないが、あられもなく喚いておねだりしていたのは所々記憶にある。羞恥心なんかどうでもよくて、油断していた自分に腹が立つ。
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    みしま

    DONEリクエストまとめ⑥
    TF2で「デイビスとドロズのおちゃらけ日常風景」
    おちゃらけ感薄めになってしまいました。ラストリゾートのロゴによせて。※いつもどおり独自設定&解釈過多。独立に至るまでの話。デイビスは元IMC、ドロズは元ミリシアの過去を捏造しています。
    「今日のメニュー変更だって」
    「えっ、"仲良し部屋"? 誰がやらかしたんだ」
    「にぎやかしコンビ。デイビスがドロズを殴ったって」
    「どっちの手で?」
    「そりゃ折れてない方の……」
    「違うよ、腕やったのはドロズ。デイビスは脚」
    「やだ、何してんのよ。でドロズは? やり返したの?」
    「おれはドロズが先に手を出したって聞いたぞ。あれ、逆だっけ?」
    「何にせよ、ボスはカンカンだろうな」
    「まあ、今回の件はなあ……」

     そんな話が、6−4の仲間内で交わされていた。
     6−4は傭兵部隊であり、フリーランスのパイロットから成る民間組織だ。組織として最低限の規則を別とすれば、軍規というものはない。従って営倉もない。しかし我の強い傭兵たちのことだ、手狭な艦内で、しかも腕っぷしも強い連中が集まっているとくれば小競り合いはしょっちゅうだった。そこで営倉代わりに使われているのが冷凍室だ。マイナス十八度の密室に、騒ぎを起こした者はそろって放り込まれる。感情的になっているとはいえ、中で暴れようものなら食材を無駄にしたペナルティを――文字通りの意味で――食らうのは自分たちになるとわかっている。そのため始めは悪態をつきながらうろうろと歩き回り、程なくして頭を冷やすどころか体の芯から凍え、やがていがみ合っていたはずの相手と寄り添ってどうにか暖を取ることになるのだ。こうしたことから、冷凍室は〈仲良し部屋〉とも呼ばれていた。
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    みしま

    DONEリクエストまとめその11。TF2で「ツンデレの無意識独占欲強めローニン君とパイロットの話」
    いつも通り独自解釈&設定過分。
    オンリーマイアイズ タイタンの中でも、ローニンはピーキーな機体だ、とよく言われる。実際その通りだ。
     身の丈の三分の二以上の長さがあるブロードソード、一度に八発の散弾を放つショットガン、そして軽量化されたシャーシにフェーズダッシュ機能。いずれもヒットアンドランの近接戦に特化した兵装だ。中・遠距離による銃撃戦が主となる近代戦において、強力ながらもリスキーな戦法と言える。
     だがわたしにはその方が合っていた。いや、合うようになった、という方が正しい。自身も同様に、最前線へ飛び出して短射程の銃器とCQCを駆使するようになったのは、目が潰れてからの話だから。
     タイフォンでの作戦行動中、目を焼かれた。記憶が曖昧だが、酷く眩しかったことは覚えている。おそらくテルミットの火だったのだろう。一命はとりとめたものの、軍医からは「視力を取り戻すにはインプラントを入れるか、シミュラクラムで義体化するかだ」と宣告された(三つ目に「軍を辞める」という選択肢をよこさなかった軍医殿はさすがだと思う)。
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