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    みしま

    @mshmam323

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    みしま

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    リクエストまとめ④「リクエスト者様のVとリバーの話」※女体男声コーポV・死神太陽√・襲撃後~最後の仕事までの間を想定。

    #サイバーパンク2077
    cyberpunk2077
    #cyberpunk2077

    オシリスの墓標「デートしようぜ」
     Vからそう提案されたとき、リバーは思わず耳を疑った。時折ふらりとやってきては一夜をともにしたり、ホロコールやメッセージでのやり取りはあったが、わざわざ時間を取って“デート”と呼べるようなものに費やすなんて。それに〈神輿〉の一件からのちは特に忙しいようで、ろくに顔を合わせていない。だからその誘いを嬉しく思わない理由はなかった。ただし、不安や疑問が無いわけではない。いずれにせよ、リバーの答えは決まっていた。
    「もちろんだ」
     何より彼が自分と過ごす時間を選んだという、そのことが重要だった。
     それで「いつ?」とたずねると、「今から!」だと言う。幸いにして特に予定はない。囃し立てる妹と甥っ子たちをいなしつつ染みのない服を探し――こういうときに限って見つからないのだ――あたふたと身支度を整え、リバーは車に飛び乗った。
     待ち合わせ場所はVの自宅近く、リトルチャイナの街角だ。車の中から様子をうかがっていると、路地に面した店舗からVが姿を現した。いつものジャケットにレザー調のパンツというラフな格好だ。戸口から見送る中年男性とゴスメイクの女性に手を振り、そしてリバーに気づくと大股に駆け寄ってきた。
    「ようリバー! 突然で悪いな。おれ腹減ってんだけど、飯は食ったか?」
     ムードも何もない第一声だ。だがいかにもVらしい、とリバーは妙に納得しつつ、車窓から身を乗り出した。
    「まだだ。急じゃなけりゃどこかいい店に予約を取ったんだが。今からでも当たってみるか?」
     するとVははたとした様子で目を瞠り、首筋へ手をやった。
    「そっか、そういうもんだよな」
    「V?」
    「自分でデートなんて言っておいてなんだけど、かしこまって何をするってつもりじゃなかったんだ。普通はそうだよな。悪い、気が利かなくて」
    「いや、気にするな。おれも言っておいてなんだが、高級レストランなんてのは堅苦しくてな、あまり好みじゃない」
    「よかった。おれもコーポ時代だけで十分だ。それでさ、メキシカンはどうかと思って」
    「メキシカン?」
    「うん。もしかして嫌い?」
    「そんなことはないさ。まあ、ブリトーぐらいしか食ったことはないが」
    「おすすめの店があるんだ。あそこはちゃんとしたものを出すし、マジでうまい。保証するよ」
    「おまえが言うなら」
     Vは「じゃ行こうぜ」と弾むようにボンネットを叩き、するりと助手席へと乗り込んだ。
     Vが案内したのは、ヘイウッドに位置する〈エル・コヨーテ・コホ〉という名のバーだ。リバーも知らぬ店ではなかった。地元ギャング、ヴァレンティーノズの溜まり場としてNCPDに認識されていたからだ。けれど客として入るのはこれが初めてだった。
     店内は昼間からもなかなかの客入りで、その多くは金色のクロームで飾ったサイバーウェアやアクセサリーを身に着けている。一目でわかる、ヴァレンティーノズの構成員だ。彼らは見慣れない男へ警戒心も顕な視線を向けたが、その隣にいるVの姿を見て取ると、途端に目を逸らすか、あるいは興味深そうな目つきで二人を見比べた。当のVは勝手知ったる様子で奥へ進み、バーテンダーと気安げに挨拶を交わしていた。
    Holaオラ, V! しばらくぶりだねえ」
     威勢のよい女性の声に、二人はそろってそちらを振り返った。中年の女性がやってきて、Vの二の腕を子供にするみたいにぎゅっと掴んだ。
    「まったくこの子は、ろくに連絡も寄こさないで。どうしてたんだい? また細っこいまんまじゃないか、ちゃんと食べなきゃだめだよ」
    「Hola, ママ・ウェルズ。相変わらずやってるよ。今日はこいつと飯を食いに来たんだ」
     女性はVの背後に立つリバーを見上げ、おやおやと言わんばかりに深い笑みを浮かべた。
    「ママ・ウェルズ、リバーだ。リバー、こちらはこの店のオーナーにしておれのチューマの母上、グアダルーペ・アレハンドラ・ウェルズ」
     Vの紹介を受けて、リバーは女性に手を差し出した。
    「リバー・ウォードです」
    「ママ・ウェルズと呼んどくれ。なるほど、あんたがねえ……」
     彼女はリバーの手を両手で握り、揶揄と品定めの混じった目つきででじっとりとリバーをなめ回した。
    「それで、あんた普段は何してるんだい? Vとの出会いは?」
    「ママ・ウェルズ、腹ペコなんだ!」とVが彼女の手を取り割って入った。「チラキレスとタマレス頼むよ。エロテは?」
    「もう、来るなら早めに言っておくれよ。トウモロコシが無いんだ。ワカモーレなら出せるけど」
    「じゃあそれで。ほら、あんまり待たされちゃ倒れちまう!」
     Vは半ば追い払うようにママ・ウェルズを厨房へと急かし、リバーを振り返って申し訳無さそうに眉尻を下げた。
     やがて出された料理は申し分なく、チリの効いた味付けはビールとよく合った。食べ終わってからVの亡き友、ジャッキー・ウェルズの祭壇へ酒を供え、二人は店を後にした。
     そのあとに続いたのはありふれたデートコースだった。衣料品店や露店を冷やかし、海辺へのドライブ、ジェットコースターで歓声を上げ、屋台で買った軽食を手に浜辺をなぞって歩いて。ハミングしながら水を蹴り上げるVはただただ楽しそうだ。少し変わっていたのは、Vが普段よりも饒舌なことと、宵の口に「一杯ひっかけて行こうぜ」と向かったのがかの有名なクラブ、〈アフターライフ〉だったことだろう。Vがオーナーになったのだとは噂では聞いていたが、どうやら事実のようだ。出入口のガードマンは「ボス」とVへ目礼をし、通路にたむろしていた客たちが道を空ける。ナイトシティ屈指のフィクサー、ローグですら、挨拶にグラスを掲げた。
     ほろ酔いでVの自宅、先日引っ越したばかりのペントハウスへ帰り着くと、玄関をくぐるなりVはクスクスと笑いながらリバーへ飛びつき、脚をがっちりと腰へ回した。言葉を交わすこともなく、リバーはVを抱えて寝室へと駆け上がった。

     翌朝、リバーが目を覚ますと、隣で寝ているはずのVの姿は無かった。時刻は午前四時を回ったところだ。部屋は静まり返っていて、シャワーの音も聞こえない。階下だろうかとダイニングルームへ降りたが、そこにも人けは無かった。
     窓の外には夜明けを間近に控えたナイトシティが広がっている。『眠らない街』とよく言うが、そんなことはない、とリバーは思う。ビルの窓明かりも行き交うエアロダインも、昼間に比べ控えめだ。微かにかかった朝靄は街の下半分を覆い、ネオンサインのけばけばしい色をパステル調にぼかしている。
     ふと横を見やると、テラスのプールサイドに立つVの姿があった。それも、一糸まとわぬ姿で。
     暗褐色の肌は朝焼けと同じ色に染まり、プールから反射した光が足元を網目模様のレースで飾る。頬や乳房の膨らみは黄金色に縁どられ、ビル風になびく髪は空の端に残った夜闇に溶け入るようだ。その立ち姿は瞬きの拍子に消えてしまいそうなほどあえかな、けれど荘厳さすら覚えるほどに美しい。
     しばし見とれてしまっていた自分に気づき、リバーは慌てて自分のコート引っ掴むとVの元へと向かった。肩にコートを羽織らせ、前を掻き合わせるようにして後ろから抱きしめる。触れた肌は冷え切っていた。
    「おはよ。サンキュ」
    「なんだってこんな、誰かに見られたら」
    「風が気持ちよさそうでさ。けど思ったより寒かった」
     羞恥心など知らないような、屈託のない笑みでこちらを見上げるものだから、リバーもただ肩をすくめる他なかった。
    「きれいだな」
     そう言ってVは夜明けのナイトシティへ視線を誘った。リバーの口からはうっかり『おまえの方がきれいだ』などと出そうになったので、飲み込むようにうなずいた。そんな歯の浮くようなセリフはVの失笑を引き出すだけだろう。
    「そうだな。昨日のカクテルを思い出すよ、あのアフターライフで飲んだやつ」
    「よく冷えたセンツォンに、ライムジュースとグレナデンシロップ、炭酸を加えてステア」
    「それと愛情、だろ?」
     バーテンダーとVの会話を思い出して言うと、Vの顔がぱっと華やいだ。
    「お客様、そちら当店の特別メニューとして検討中の品でございます。お口に合いましたか?」
    「ああ、うまかったよ。ライムがいいアクセントになってた」
    「よかった。センツォンをベースに試してて。おれの名前をつけてもらうつもりなんだ」
     その習わしについてはリバーも耳にしたことがある。アフターライフの特別メニューには、ナイトシティで名を上げた人物の名前が付けられる。ただし、その栄誉に与ることができるのは死者だけだ。
     ひやりと胸に冷たいものが落ちる。リバーはVの肩を掴んで振り向かせた。
    「V、おまえ、どうして突然デートなんて言い出したのかと思ったんだ。まさか――」
    「あー違う違う、今日明日どうのってわけじゃない。前に説明したとおり、長くもないけど」
    「じゃあ……」
    「たまたま暇ができたから、って言っても納得しないよな。昨日は朝からちょっと調子が悪くて、それで……そんな顔するなよ」とVはリバーの眉間に寄った皺をつついた。「ちゃんとかかりつけ医には診てもらったから、大丈夫。けどさ、気づいたんだ。頭の中じゃ、あいつに向けて悪態ぶちまけてた。もういないってわかってるのに。ほら、覚えてるだろ、前に話した頭の中の同居人のこと?」
    「ジョニー・シルバーハンドの人格が、ってやつか?」
     Vはうなずいた。「マジでウザくて自分勝手で、ナルシストのクソ野郎だった。でも、大事なダチだったんだ」
     Vはリバーから身を離すと肩のコートを翻し、踊るようなつま先立ちでプールの縁を辿った。
    「失ってから気づく、なんてよく言うけど、本当だったな。あいつはおれの後ろに立って、ずっと『メメント・モリ』って叫び続けてるみたいだった。いや、『カルペ・ディエム』かな、どっちでもいいけど」
     プールの角を通り過ぎ、そのままテラスの端まで歩いて行く。彼の前に残されているのは低い手すりだけ、そして遥か眼下に広がる街並みと夜明けの空。朝日の逆光の中、Vの後ろ姿は痛々しいまでに危ういシルエットへと変わる。リバーは無意識のうちに背筋を強張らせた。
    「ジョニーにおれの体を明け渡すって選択肢もあった。今だから言うけど、正直、それもいいなって思ったよ。でも、わかってたんだ。
     サイコーにヤバい山を成し遂げた時の爽快感、傷にしみる雨とか、屋台の匂いと下水の悪臭が混ざった空気、誰かと眺めるナイトシティの夜景。もし、そういうものをどうでもいいって思ってたら、自分の気持ちを曲げてまでジョニーに譲っていたら、あいつはおれを許さなかっただろうな。ジャッキーだって、天国から彗星みたいにすっ飛んできておれをぶん殴るに違いない」
    「……罪悪感?」
     リバーはやっとの思いで口を開いた。シルエットの肩が呼吸に合わせて大きく上下する。
    「無いとは言わないよ。でもそれは、あいつらを失くした寂しさの代わりにはならない。だからおれは、おれを最後まで貫かないといけない。これは意地でもあるし、約束でもある。でももし……」
     もし、の続きは無かった。リバーもわざわざ問うようなこともしなかった。
    「――なあリバー、教えてくれ。生きてることがどういうことか、考えたことあるか? 死ぬのが怖いとか、やりたいことがあるとか、そういうことじゃなくてさ。ただ単純に、生きるってことを」
     リバーは束の間思いを巡らせ、けれど一番最初に浮かんだ答えに戻ってきた。そしてそれを口にした。
    「V、コーヒーは?」
     Vは振り返った。その目に光るものが見えたような気がしたが、それを確かめる前に体に衝撃を感じた。駆け寄ってきたVがリバーに抱きついたのだ。リバーは固く抱きしめ返し、あやすように背中をさすった。
    「いる」とV。
    「よし。そういや、せっかく広いキッチンがあるのに、まだまともに使ってないよな。今度ガンボを作ってやるよ」
    「ガンボ?」
    「甲殻類をふんだんに使ったシチューだ。ウォード家のレシピじゃ燻製ソーセージも入れる」
    「へえ、うまそうだ」
    「楽しみにしておけ。おまえにも作り方を覚えてもらうからな」
    「了解」
     リバーはVを抱いたまま、床に落ちたコートを拾いあげると部屋の中へと歩いて行った。
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    みしま

    DONEiさん(@220_i_284)よりエアスケブ「クーパーからしょっちゅう〝かわいいやつ〟と言われるので自分のことを〝かわいい〟と思っているBT」の話。
    ※いつもどおり独自設定解釈過多。ライフルマンたちの名前はビーコンステージに登場するキャラから拝借。タイトルは海兵隊の『ライフルマンの誓い』より。
    This is my rifle. マテオ・バウティスタ二等ライフルマンは、タイタンが嫌いだ。
     もちろん、その能力や有用性にケチをつける気はないし、頼れる仲間だという認識は揺るがない。ただ、個人的な理由で嫌っているのだ。
     バウティスタの家族はほとんどが軍関係者だ。かつてはいち開拓民であったが、タイタン戦争勃発を期に戦場に立ち、続くフロンティア戦争でもIMCと戦い続けている。尊敬する祖父はタイタンのパイロットとして戦死し、母は厨房で、そのパートナーは医療部門でミリシアへ貢献し続けている。年若い弟もまた、訓練所でしごきを受けている最中だ。それも、パイロットを目指して。
     タイタンはパイロットを得てこそ、戦場でその真価を発揮する。味方であれば士気を上げ、敵となれば恐怖の対象と化す。戦局を変える、デウスエクスマキナにも匹敵する力の象徴。
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    DONEリクエストまとめ③「コーポVがコーポのお偉いさんに性接待したあと最悪の気分で目覚めて嘔吐する話」
    ※直接的な表現はないのでR指定はしていませんが注意。
    ルーチンワーク ホロコールの着信に、おれは心身ともにぐちゃぐちゃの有様で目を覚ました。下敷きになっているシーツも可哀想に、せっかくの人工シルクが体液とルーブの染みで台無しだ。高級ホテルのスイートをこんなことに使うなんて、と思わないでもないが、仕事だから仕方がない。
     ホロコールの発信者は上司のジェンキンスだった。通話には応答せず、メッセージで折り返す旨を伝える。
     起き上がると同時にやってきた頭痛、そして視界に入った男の姿に、おれの気分はさらに急降下した。数刻前(だと思う)までおれを散々犯していたクソお偉いさんは、そのまま枕を押し付けて窒息させたいほど安らかな寝顔でまだ夢の中を漂っている。
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    みしま

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