ケチャップが甘くなるまで炒めるのがポイントですこれまでの話→高校卒業とともに連絡を絶った角名。大学卒業後の進路も決まった。もうここから迷わない。そんな12月チームの試合を見に来た角名の前に現れたのは宮侑。居酒屋で勝手に稲荷崎LINEグループに新しい連絡先を入れられた角名。最後の最後「ちゃんとメシ食っとんか」という治の言葉に涙が止まらなくなった。そして「都合が合えば忘年会に顔だし」北の言葉にはいと返すのだった。
「だからってなんでクリスマスイヴなの!」
「しゃあないやん。みんなの都合あうのその日だけやってん。俺かて北さんとこうシッポリ過ごしたかってん!でも北さんがこの日みんな空いとるやん!っていうから!」
「全員空いてるのやばくない?」
「なんやねん!そういうお前はなんかあるっていうんか!」
「ないけど」
「せやったらええやん!来いよ!絶対やで。わかってるやろな」
「考える」
「はあああ?お前なあ」
「わかってるよ」
居酒屋で治からの言葉を見て涙が止まらなくなった角名をそのままに、手つかずだった出汁巻に箸をのばすと侑は口を開いた。
「おまえらのことはよう知らんし、おまえがおらんようになってしばらくサムやばかってん。何度もお前の家に行って、銀にも大耳さんにも何か知ってるんちゃうんかって何度も連絡入れて。専門が始まってそれどこやなくなったみたいやけど。たまに実家帰ると角名戻ってへんかったわってボソっていいよることがあって。ちょっとやばいなって思ったことが正直あってん。そのうちなんか振り切ったんか何も言わんようになったけどな」
でもな。
言おうかどうしようかちょっと迷ったそぶりをしたものの、侑は言葉をつづけた。
「お前の試合見に行っとったみたいやで」
「え?」
「ほんまかどうかは知らん。おかんがちらっと言いよってん。あの子まだバレーしたいんかなあっていうからなんでやって聞いたら、大学リーグの試合会場で見た人がいるんやってって。いつの試合やって聞いて調べてみたらお前の名前を見つけたんや」
「じゃあどこにいるかは知ってたんだ」
「おん。最近やで。ちょっと周りに聞いてみたら卒業後もバレー続けるらしいって聞いたから、まあそれやったらどっかで会うやろって思ってたんやけどな。案外早かったな」
「そう、だったんだ」
「せやからな。お前らがどうしたいんか、角名がこのあとどうなりたいんか俺は知らんけど。でももうどうにもならんねんやったら」
侑らしくない言葉を選ぶそぶりに角名は何が言いたいのかわかった。
「ちゃんと手ぇ離したってくれや」
うなづくことはできなかった。
だって逃げるときも「別れよう」とは言えなかったんだから。
治の中ではもう別れたことになっているだろうけど、角名のなかではまだピリオドは打たれていない。いや打てないままここまできてしまった。
そうだね。
終わらせないとね。
「忘年会参加します」
12月24日。
ぎゅっと冷え込んだその日、角名はひさびさに懐かしい地に戻った。
長い長い恋を終わらせるために。