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    pk_3630

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    pk_3630

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    拗れ練習用に書いた現代AU 曦澄 第7話
    今回は短め
    長々と暗い心理描写が続いてしまいましたが次で話が動きます
    もうしばらくご辛抱を

    想・喪・葬・相 ⑦『もし予定が空いてたら次の日曜日会わないか』

    江澄から曦臣に連絡を入れるのは久しぶりだ。そのせいか、以前は何と打って誘っていたのか思い出せない。
    文章を考えるのに、何度も打っては消し、打っては消し。たった一文を送るのに、昼休みのほとんどを費やしてしまった。
    苦労して生み出したメッセージにはすぐに既読がつき、『その日は一日空いてるよ。どこか行きたいところはある?』と返信がきた。
    『行きたいところはない。二人きりで話が出来るならどこでもいい』
    『特に行きたいところがないなら、一緒に行って欲しいところがある』
    本当はどちらかの家で話をしたかった。
    しかし、これが最後になると思えば曦臣と過ごす時間が少しでも欲しくて、了承してしまった。

    (こういうところが俺の駄目なところだな)

    スマホを見つめていると黒くなった画面に自分の口角が下がりきった顔が映り、慌ててスマホを裏返した。


    曦臣は「抱いている時だけ楽になれる」と言っていた。
    それ程までに恨んでいるのだろう。
    それも当然だ。
    裏でこそこそ動き回り、気の乗らない交際を勧めておきながら、同性の恋人と順調に交際していた元幼馴染。
    信用していた親友が隠し事だらけだったうえに、弁明の一つもしないのだから。

    (曦臣に軽蔑されるのは怖い、辛い。あの冷たい声で突き放されたら、苦しくて死んでしまう)

    しかし、本当に辛いのは曦臣だ。
    くだらない嘘から生まれた虚像に、ずっと苦しめられている。
    あの夜、辛そうに己の名を呼んだ曦臣を見て、ようやく目が醒めた。
    自分がどれ程罪深いことをしたのか、どれほど愚かだったのか思い知らされた。
    出口の見えない暗闇から逃れたくて、曦臣は助けを求めたと言うのに。真実を言わずに目を背け、その暗闇に大切な人を置き去りにしてしまった。暗闇に突き落とした張本人がだ。

    (もう曦臣の側にいる資格はない)

    ようやく江澄の中で罰を受ける覚悟が決まった。

    (次に会った時、全て話そう。それで曦臣の前に二度と姿を見せないようにする。それがせめてもの償いだ)

    小さい頃からの二人の思い出が走馬灯のように頭を駆け巡った。
    今までの人生は、曦臣がいない時間の方がずっと少なかった。けれど、これからはあの幸せな時間が一瞬だったと思うような長い時間を、独りきりで過ごすことになる。

    (もうあの頃の気持ちにも関係にも、決して戻れない。俺がぶち壊したんだ)

    クローゼットの奥。
    箱の中から高校時代の制服を取り出す。
    鼻の奥が痛むのを抑え込むように、ブレザーのジャケットに顔を埋めた。

    (恋は幸せなもの。世間一般ではそうなんだろうな。ただ、俺みたいな奴にはそんな幸せに縁がなかったんだ)

    曦臣に片思いし続けても辛かった。
    けれどこんな終わりになるくらいなら、ずっと失恋し続けたままのほうがきっと良かったのだ。
    曦臣のためにも、自分のためにも。

    (曦臣、ずっと側にいたかった)
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    takami180

    PROGRESSたぶん長編になる曦澄その1
    閉関中の兄上の話。
     穏やかな笑みがあった。
     二哥、と呼ぶ声があった。
     優美に供手する姿があった。

     藍曦臣はゆっくりとまぶたを持ち上げた。
     窓からは午後の光が差し込んで、膝の上に落ちている。眼裏に映った姿はどこにもなく、ただ、茣蓙の青が鮮やかだ。
     閉閑して一年が過ぎた。
     今に至っても夢に見る。己の執着もなかなかのものよと自嘲する。
     優しい人だった。常に謙虚で、義兄二人を立て、立場を誇ることのない人だった。大事な、義弟だった。
     毎晩、目をつむるたびに彼の姿を思い出す。瞑想をしたところで、幻影は消えるどころか夢へといざなう。
     誘われるままについて行けたら、この苦悩は消え去ってくれるだろうか。あの時のように、「一緒に」とただ一言、言ってくれたら。
    「兄上」
     締め切ったままの戸を叩く音がした。
     藍曦臣は短く息を吐いた。
    「兄上」
    「どうかしたかい」
     弟に応えて言う。
     以前、同じようにして藍忘機に呼びかけられても、どうにも答える気になれなかった時があった。そのとき弟は一時もの間、兄上と呼び続けた。それから、藍曦臣は弟にだけは必ず返事をするように心がけている。
    「江宗主より、おみやげに西 3801

    sgm

    DONE曦澄ワンドロお題「失敗」
    Twitterにあげていたものを微修正版。
    内容は変わりません。
    「なぁ江澄。お前たまに失敗してるよな」
     軽く塩を振って炒った豆を口に放り込みながら向かいに座る魏無羨の言葉に、江澄は片眉を小さく跳ね上げさせた。
    「なんの話だ」
     江澄は山のように積まれた枇杷に手を伸ばした。艶やかな枇杷の尻から皮をむいてかぶりつく。ジワリと口の中に甘味が広がる。
    「いや、澤蕪君の抹額結ぶの」
     話題にしていたからか、ちょうど窓から見える渡り廊下のその先に藍曦臣と藍忘機の姿が見えた。彼らが歩くたびに、長さのある抹額は風に揺れて、ふわりひらりと端を泳がせている。示し合わせたわけでは無いが、魏無羨は藍忘機を。そして江澄は藍曦臣の姿をぼんやりと見つめた。
     江澄が雲夢に帰るのは明日なのをいいことに、朝方まで人の身体を散々弄んでいた男は、背筋を伸ばし、前を向いて穏やかな笑みを湛えて颯爽と歩いている。情欲など知りません、と言ったような聖人面だった。まったくもって腹立たしい。口の中に含んだ枇杷の種をもごもごと存分に咀嚼した後、視線は窓の外に向けたまま懐紙に吐き出す。
     丸い窓枠から二人の姿が見えなくなるまで見送って、江澄は出そうになる欠伸をかみ殺した。ふと魏無羨を見ると、魏無羨も 2744

    takami180

    DONE曦澄ワンドロワンライ
    第三回お題「夢」

    本編終了後、付き合っている曦澄。
    現実での大事なものと、本当は大切にしたいもの。

    ムーンライト宗主→ごめんねすなおじゃなくて→夢、という連想結果が何故こんなことに。
     その夜は金氏と合同の夜狩だった。そこで江宗主は大怪我を負った。
     邪祟から師弟を庇い、腹に穴をあけられた。
     江澄自身、これはまずいと感じた。血を吐き、体から力が抜ける。
    「宗主!」
     倒れたところを誰かに抱え起こされた。
     すかさず金凌が矢を射る。放たれた矢は狙い違わず邪祟を貫いた。
    「叔父上!」
    「金凌っ……」
     声にできたのはそれだけだった。怪我をせず、健やかに、生きてほしい。お前の生きていくこれからは、どうか穏やかな世界であるように。
     江澄は手を伸ばそうとしてかなわなかった。
     まぶたの裏に、白い装束の影が映る。心残りがあるとすれば、あの人にもう会えないことか。
    「誰か止血を!」
     怒号と悲鳴が遠ざかり、江澄の意識は闇に沈んだ。


     まばゆい光の中で、白い背中が振り返る。
    「江澄……」
     ああ、あなたは会いにきてくれたのか。
     江澄は笑った。これは現実ではない。彼は姑蘇にいるはずだ。
     体を起こそうとして、まったく力が入らなかった。夢の中くらい、自由にさせてくれてもいいのに。
    「気がつきましたか」
    「藍渙……」
     ほとんど呼んだことのない名を口に出す。これが最後の会話にな 1653

    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337