Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ROM

    @94_ROM_12
    稲妻の目金君関連のみ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 37

    ROM

    ☆quiet follow

    三人がアジトでただバカやってるだけの話です

    #メガネハッカーズ
    glassesHackers
    ##CP無し

    痩せ型オタクと男の浪漫制服を着崩した学生達が屯し、うだつの上がらない社会人が虚空を見つめ時間を過ごす。そんな明るいアーケード通りとはまた違う雰囲気を醸し出す稲妻商店街の路地裏に入り口を構える薄暗いゲームセンター。そのゲームセンターの奥にある無機質な扉の向こうで平日の真っ昼間から集まって雑談に耽る男が二人。
    その男達の名は『メガネハッカーズ』。現代社会の裏側でハッカーとして様々な依頼をこなし人知れず暗躍するハッカー集団であり、フィフスセクターの解散に一役を買った存在でもある。メガネハッカーズは3名で構成された組織であり、そのうちの一人である『マンガか』こと漫画萌が組織のリーダー的存在である目金欠流に以前より抱いていた違和感を真剣な表情で伝える。

    「ねえ目金君。最近のゲームき、何だかコソコソしてない?」

    『ゲームき』こと芸夢好武。彼は萌や目金と同じくメガネハッカーズのメンバーであり、その中でも萌とは同じ中学である秋葉名戸学園に通っていた頃からの仲である。芸夢は主にメガネハッカーズの第二の業務内容であるゲーム制作の分野に重きを置いて働いており、萌と目金がハッカー業務の片手間に雑談をしている(雑談の片手間にハッカー業務をしていると称した方が正しいが)時は勝手に別行動を取っているのがざらである。今日も例にもれず、芸夢は朝からこのアジトに姿を現していない。読みが正しければ恐らく芸夢がこちらに顔を覗かせるのはあと一、二時間ほど経過した後だろうと、萌は議題のテーマである男の行動パターンを予測する。

    「そうですか?まあ、彼は元々ゲーム関連以外のプライベートな情報は秘密主義ですし」

    話を切り出した萌に対し目金はあっさりとした答えを返す。元より目金は必要以上に仲間のプライベートを知りたがらない傾向があり、今回も『また萌の知りたがりが出た』とでも思っているのだろう。そんな目金の胸の内を理解しながらも、萌はめげずに話を続ける。

    「絶対何か隠してるよ。僕達には言えない秘密を抱えているに違いない」
    「……仕事に関係ない事を詮索するのは良くないと思いますよ」

    存外まともな感性を持ち合わせている目金は眉を顰め萌を嗜める。「その件、僕は関わりませんからね」と目金はひらひらと手を振り静観の姿勢を見せる。3人グループという性質状二人で一人を追い詰めるという構図に持ち込めた方が色々と楽なのだけどな、と萌は何とか関心を持ってもらおうとありもしない可能性を目金に提示する。

    「そんな悠長な事を言ってて良いのかい?もしかすると他のゲーム制作グループにスカウティングされているのかもしれないっていうのに」
    「えええ!?芸夢君が?!それは今すぐにでも事実を確認しなくては!」

    (ちょろい)

    目金がこの手の話に弱いのは分かってはいたがこうも態度が変わるとは。御しやすいのは楽ではあるが余りにちょろすぎて友人として心配にもなる。しかしこれで動きやすくなったと萌はひっそりと笑い、より目金の不安を焚き付けるべく「ゲームき、最近ゲーム制作の時間が少ないって愚痴ってた気がするなあ」と芸夢が来るまでの間薪をくべ続けた。
    それから一時間後。萌の予想は的中し、芸夢は何一つ悪びれる様子もなくアジトへやって来た。普段の芸夢ならそのままPCに向かい溜まっていた作業をするかこちらの仕事を手伝っているだろうが、今日はそのルーティーン通りに動くことは叶わなかった。

    「芸夢君!他社からスカウトを受けているって本当なのですか!?」

    扉を開けてアジト内に足を踏み入れた瞬間、弾丸と化した目金が芸夢の腰にしがみ付きその歩みを止める。芸夢は驚いたように二、三度目を瞬かせ、すぐにジトリとした目付きでこちらを睨んできた。大方『お前また変な事をメガネに吹き込みやがったな』とでも思っているのだろう。大正解である。だがそれを肯定する理由も無い為、萌はわざとらしく視線を泳がせしれっと惚けてみせた。そんな萌の仕草を見て芸夢は大きな溜め息をつき、口を開く。

    「誰に聞いたんだよ。ねえよそんな事実は」

    芸夢は腰にしがみついたまま離れようとしない目金に対しその不安の種を否定してやりつつ、自身の腰に回された腕を引き剝がす。

    「本当に?では、最近隠れて何をしているのですか……?」

    ぺたりと床に座り込んだまま、目金はしょぼしょぼとした情けない顔でここ最近の芸夢の動向を真正面から尋ねる。濡れた子犬を思わせるその表情から目金が本気で仲間が離れてしまう可能性に怯えていると理解出来てしまい、萌は若干の罪悪感を抱く。萌と同じく目金のこの手の反応に弱いであろう芸夢は暫し悩むそぶりを見せた後、仕方無くといった様子で口を開いた。

    「……馬鹿にするなよ」
    「絶対に馬鹿にしたりなんかしません!」

    本当に嫌そうな顔で念押しをする芸夢の不安を掻き消すように目金は強く頷く。萌は(理由次第では全力で笑ってやろう)と密かに決め、黙って芸夢が話し始めるのを待つ。

    「…………筋トレ」
    「へ?」
    「は???」
    「だからっ、最近筋トレの為にジム通ってんだよ!」
    「へー……。ふっ、アハハ!なーんだそんな事でしたか」
    「そんな事でしたかじゃないよ目金君!はあ!?筋トレ?!元秋葉名戸学園サッカー部のゲームきが!?」

    緊張が解れたのか目金はホッとしたように笑うだけだが、共に学生時代を過ごした萌にとってはそう簡単にスルー出来る理由では無い。萌はその単語のミスマッチ振りに声を荒げて芸夢に詰め寄る。

    「うるせえな、なんだよその反応」
    「だってだって!僕達元秋葉名戸サッカー部は運動部でありながら体力が無い、運動を苦手とする集まりだったじゃないか!それなのに、大人になった今になって筋トレ!?一体全体どんな心変わりがあったっていうのさ!彼女か?女の子にモテたくなったのかい!?」
    「漫画君……」

    目金が失望の眼差しでこちらを見てくるがそれに構っている余裕は今の萌にはない。青春の全てをゲームに注ぎ込み大人になってもその姿勢を崩さなかった芸夢が今になって自分磨きを始めるだなんて。これは裏切り行為と言えるのではないかと、萌は自身の道楽振りを棚に上げて憤って見せる。

    「ちげーよ!……っあー!分かった、分かったよ!話せば良いんだろう!?」

    予想外の圧に負けたのか芸夢はヤケクソ気味に事の詳細を語り始める。

    「……最近、徹夜でゲームした後何日か疲れが取れねえんだ。昔は何とでも無かった事が出来なくなっちまって、それが結構ショックでな。それで色々と考えたんだよ、どうすりゃ疲れを引きずらずに徹夜でゲームに打ち込めるのかって」
    「……寝たら良くない?」
    「しっ!!!その相槌は野暮ですよ漫画君!」

    ほんの少し寝るだけで解決するであろう悩みを真剣な面持ちで語る芸夢に耐えきれず、萌はボソリとツッコミを入れる。それを野暮だとヒソヒソ声で目金に嗜められたが、それらを纏めて流すように芸夢は咳払いをし再び語り出す。

    「そこで思ったんだ。基礎体力を付ければ少しは疲れを感じ難くなるんじゃないかってな」
    「成る程、そういう訳ですか。確かに僕らももう二十代半ば、段々無理が効かなくなってきますよね」

    目金は十分納得がいったのか、うんうんと頷き芸夢の悩みに共感する。

    「納得が出来ない」

    しかし萌はこれで納得して、はいそうですかと黙っていられる程単純ではなかった。

    「……まだあんのかよ」
    「あるよ。だって、ただ体力を付けたいだけなら走り込みでも良いじゃないか!」

    寝れば済むだけの話、という指摘は一度隅に置き。体力を付けたいだけなら、まず最初に候補に上がるのはランニングの筈では無いだろうか。トレーニング器具を買うかジムに通う等ある程度の初期投資がいる筋トレとは違い、街中や市民公園で走るだけならお金はかからず、自分の好きなタイミングで運動が出来る。何よりこの稲妻町は中学サッカーが盛んな地域ということもあり、ランニングに適した公園や広場も多数存在する。そんな恵まれた環境下で態々筋トレで体力を付けようだなんて違和感しか無い。
    芸夢にとってもそこを指摘されるのは痛かったのか、ぐぅと喉から呻き声を漏らす。

    「その反応、やっぱり女の子受けを狙ってたんじゃ」
    「ちげーよ。お前と一緒にすんな」
    「どういう意味さ!」
    「そのままの意味では?」

    芸夢は呆れたように萌の指摘を一蹴する。それに萌は遺憾の意を示したが目金に冷たい一言を浴びせられ、ぐうと呻き声が漏れ出る。

    「……結局、本当の理由は?ここまで話しておいて言いたくありませんは無しだからね」

    話したく無さげに顔を歪ませ黙り込んでいた芸夢に萌は早く話してしまえと囃し立てる。芸夢は暫く「俺が話したくて話し出したわけじゃねえ」「そもそもお前が仕掛けたことじゃねえか」とぶつぶつ不満げに呟いていたが「……絶っっっ対に笑うんじゃねーぞ」と再び念を押してきた。

    「笑いません」
    「わかったから早く話しなよ」

    目金は真剣に、萌は気怠げに芸夢の話を聞く姿勢を見せる。

    「…………リューガ」
    「うん?」
    「はい?」
    「〜〜〜!どうせ体力付けるなら、リューガみてえな筋肉付けてえなって、筋トレ始めたんだよっ!」

    彼にしては随分と珍しく、羞恥で耳を赤く染め上げ芸夢は吐き捨てるように事の真相を明かした。

    「……リューガって、ストリートバトラーシリーズのあのリューガ?」

    リューガという単語に確信が持てず、萌が確認の為にそう尋ねると芸夢は無言で頷いた。ストリートバトラーといえば1980年代にアーケードゲームとして登場した格闘ゲームで、現在もナンバリングタイトルを販売し続ける人気作品である。リューガはそのシリーズの主役的存在であり、長年ファンから愛され続けているキャラクターだ。
    つまり芸夢は、格闘ゲームに登場するキャラクターのような肉体美に憧れ筋トレを始めたというのだ。

    「えー、何。散々勿体ぶってたったそれだけ?」
    「……うるせえな」

    いざ明らかになって仕舞えば何とも芸夢らしい理由に拍子抜けした萌のボヤキに、芸夢は覇気の無い声で反論する。

    「あーあ、もっと面白いネタが待ってると思ったのになあ。ねえ目金君」
    「……」

    想定の遥か下をゆく真実にがっかりしたと萌は鼻で笑い、君もそう思ったよねと目金に同意を求める。

    「芸夢君」

    しかし、目金はキラキラとした眼差しで芸夢の手を取り語り始めた。

    「分かりますよ、その気持ち!男の浪漫が詰まった格闘ゲームのキャラクターに憧れる気持ちを持つのは当然のこと。長年愛用してきたキャラならば尚更当然の話です!自分の好きなキャラクターに少しでも近づきたいというその志、是非とも応援させて下さい!」
    「あ、そういう流れ?」

    同意を得られるどころか、目金はブーストをかけアクセル全開で芸夢の浪漫に理解を示す。それに巻き込まれぬよう、萌は気配を押し殺し部屋の隅へと避難する。

    「お前、笑わねえのか」
    「笑う訳がないじゃないですか!好きなキャラクターの為に努力するその姿勢、尊敬に値します!」
    「メガネ……。へっ、そうだな。何も最初から恥ずかしがる事はなかった。見てろよメガネ、俺はリューガみてえな漢になる!」
    「その意気です芸夢君!リューガの様な勇ましい体格を目指して、共に頑張りましょう!」

    「…………。興味本位で突くべき話じゃ無かったなこれは。あの調子じゃあ今日はもう仕事にならないだろうし、さっさと帰ろー」

    目金の熱意に押される形で芸夢の瞳にやる気の炎が灯る。その光景は宛らスポ根漫画の連想させるやり取りで、屋内だというのに二人の背後に夕焼け空を幻視した。そんな漢の美学に花を咲かせ語り合う二人についていけず、萌は一人アジトを後にした。

    後日談として。芸夢は目金の応援の元リューガのような肉体美を目指し日々筋トレに取り組んでいたのだが、年中屋内に引き篭もりデスクワークやゲーム攻略に没頭する成人男性の身体が素人の組んだ無茶なトレーニングに耐えられる訳がなく。休息日も設けずにトレーニングを続けた芸夢の身体は疲労骨折を起こしてしまい、それに伴い二人の筋トレブームは終わりを告げた。
    努力と気合だけでは理想の肉体は手に入らない。そんな無惨な現実をオタク達に突き付ける形で騒動の幕は閉じたのであった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺☺💕💕💕🙏🙏🙏🙏😍😍😍💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ROM

    REHABILI「嘘はまことになりえるか」https://poipiku.com/4531595/9469370.htmlの萌目の2/22ネタです。22日から二日経ちましたが勿体無い精神で上げました
    猫の日「……えっと、つまり。漫画君は猫耳姿の僕を見たいのですか?」
    「今日は2月22日だろう?猫の日に因んだイベント事をこう言う形で楽しむのも、恋人がいるものならではの体験だと思うよ」

    2/22。2という数字を猫の鳴き声と準えて猫の日と呼ばれているこの日。そのイベントに乗じてインターネット上では猫をモチーフとしたキャラクターや猫耳姿のキャラクターが描かれたイラストが数多く投稿されている。そして、猫耳を付けた自撮り写真が数多く投稿され、接客系のサービス業に勤めている女性達が猫耳姿になるのもこの日ならではの光景だろう。
    古のオタクを自負する萌にとって、猫耳とは萌えの象徴であり、身に付けたものの可愛さを最大限までに引き出すチートアイテムである。そんな最強の装備である猫耳を恋人にも身につけて欲しいと考えるのは自然な流れの筈だ。けれど、あくまでそれは普通の恋人同士ならの話。萌と目金の間に結ばれたこの関係は、あくまで友として萌と恋人のごっこ遊びに興じる目金と、目金に恋慕する萌という酷く歪な物であった。
    2283

    related works

    recommended works