泡風呂「泡風呂って、興味あります?」
「は?」
うつ伏せで本を読むシマボシの尻に頭を乗せて横になっているウォロが、可愛くラッピングされたボール状の物を見せる。
「今度うちで取り扱うんですけど、試供品のバスボムが配られたんですよ。感想を提出する必要があって、ご協力頂きたいなと」
黄色いソフトボール大のバスボムからは、シマボシの好むシトラス系の香りがした。
「許可する」
「じゃあ、今晩やってみましょうか」
夕食後、取り扱いの用紙を見ながら二人で泡風呂の準備を始める。
「まずは、細かく砕いて…」
「ふむ」
グシャッ‼
シマボシが右手に力をこめると、バスボムは粉々に砕けて湯船に落ちていった。
「…袋に入れて、棒とかで叩いて砕くモノ…なんですけどね…」
彼女を絶対に怒らせるような事はしない、とウォロは心の中で改めて強く誓う。
「次は?」
「えーと…勢いよくお湯を出す」
じゃばばば…
蛇口をひねってお湯を出すと、白い泡が立ち始める。レモンやオレンジの香りが漂い始め、いつもと違う空気に少し楽しくなる。
「シャワーを使うと、泡立ちやすいみたいですね」
半分程度お湯がたまった所でシャワーに切り替えると、更に白い泡がぶくぶくと立ち上がった。
「最後は手動か」
バシャバシャ…
上の方までお湯がたまったので、二人は両腕で湯をかき回しながら泡を立てる。
「なかなか疲れますね」
「ああ…こうやって泡立てると、早そうだ」
「ほほう?」
試行錯誤しながら泡立て続けると、五分程でモコモコとした泡が湯船いっぱいに盛り上がった。
なんの変哲もない浴室が、今は少しだけ非日常を演出していて二人の気分が高揚する。
「映画みたいだな」
「頑張ったかいがありますね」
「ウォロ、これ、その…」
シマボシが様子を伺うように、チラチラとウォロを見上げる。
ウォロが予想するよりも、彼女は泡風呂に興味があったらしい。
「もちろん、シマボシさんも入っていいんですよ」
「…!感謝する」
シマボシは部屋から着替え一式を持って脱衣所に戻ると、すでにウォロが鼻歌を歌いながら服を脱いでいた。
「…なんでキミも服を脱いでいる?」
「ジブンも泡風呂に興味ありますもん。感想の提出もありますし」
「じゃあ、私は後で…」
彼は踵をかえすシマボシを、後ろからギュッと抱きしめる。
「時間が経ったら、泡が減っちゃいますよ」
そう言いながら、彼女が着ているシャツのボタンを外し始めた。
「だからって、一緒に入らなくても…!」
「だって、シマボシさんも泡風呂が気になるみたいですし?一緒に入れば、二人ともモコモコの泡風呂が楽しめていいじゃないですか」
ウォロは慣れた手付きでシマボシの服を全て取り去ると、浴室のドアを開けて彼女を抱きかかえる。
「ちょ…っ‼」
「楽しみですねぇ」
ウォロは抵抗するシマボシを気にすることなくそのまま浴室に入り、扉を閉めた。