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    東間の保管庫

    雑多に書いたものを置いています。

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    東間の保管庫

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    pixivからお引越し。
    過去に発行した210のサンプルページたち。

    #ティーダ
    teader
    #フリオニール
    frioinyl
    #ディシディア
    dissidia.

    発行した210本のサンプルページたちlet me down(サンプル)

    大学進学が決まったのは年を越す前の事だった。
    気の置けない友人たちからは「一応品行方正で成績優秀だけどなぁ」と評されているフリオニールは、希望の大学に推薦入学を決めていて自由登校になる三学期は、一般入試を控えた生徒に比べて自由になる時間が多かった。週一回の登校日に登校して出席は確認するだけで、受験が終わった組と今から受験組は何となく別室に行くことが多く、何となく教室にもいれなくて図書館に行けばそこは受験組が机に向かって問題集を解いている生徒ばかりで溜息をつく。本棚のすみで本でも読もうかと歩いていけば、とんとんと肩を叩かれた。
    「よっ!」
    「ジタンにバッツじゃないか。久しぶりだな」
    「ああ。世間は受験ばっかりで息苦しくって」
    フリオニールと同様に早々に進学先を決めた友人が苦笑している。クラスは違うが気の合う仲間で一緒にいることが多かった。教室にいても気が重くなるし自習なんてした所で残っているのは三学期の期末試験だけだった。授業らしい授業もない期末テストに困ることなんて無いので、二人は悠々と残された高校生の時間を楽しんでいるようだ。
    「二人ともこんな所で何をしているんだ?」
    「バイトの相談」
    「バイト?」
    学校では確か、アルバイトの類は一切禁止になっていたはずだ。フリオニールもバイトをしたいと思ったことがあったが、規則違反になってしまうので高校を卒業してから探そうと思っていたのだが、ジタン達は違うようだ。
    「進路決まってしまえば、昼間限定でバイトはオッケイなんだってさ。だから暫く暇になるからなんかしようかなーって、バッツと話していたんだ」
    他の生徒たちに聞こえないようにこそこそ話しながら、ジタンは持っていた情報誌をフリオニールにも見せる。
    「ふうん。俺もバイトしようかな」
    「やっとけよ。お前、真面目だからさ。きっと大学に行ったら勉強ばっかりでバイトなんてできないだろうから。今のうちから社会勉強しておいた方がいいぞ」
    「勉強するために大学にいくんだろう?」
    呆れた顔をするフリオニールの肩を両サイドからジタンとバッツは叩く。
    「フリオニールのそういう真面目な所が大好きだけど、あんまり真っ直ぐすぎて俺は心配になるよ…」
    「まったくだ。バッツの半分ぐらい自由に生きてもらいたい…」
    「なんのことだ?」
    しきりに首を傾げるフリオニールに「なんでもない」と言って、雑誌のページをめくる。一ページがいくつかのマスで区切られて、その一マスに小さな文字で店の名前と募集内容が書かれている。自給とかそんな事はよくわからないが、目新しい情報にフリオニールは真剣になって見入った。
    「俺とジタンは接客業って決めてるけど、フリオニールはどうする?」



    Vector(サンプル)
    「まだ水は冷たいから入るなよ」
    フリオニールに言われて、ティーダは脱ぎかけていた服を慌てて着る。気温は少し肌寒いと思うぐらいだから、水に入ったって平気なのだが、先日も同じような事をして風邪をひいてしまい、クラウドとフリオニールに怒られた明りだったので、今回はおとなしくすることに決めた。
    ミラージュ東の小島の周りの海は穏やかで、泳いだらきっと気持ちがいいのに、と残念に思うけれどフリオニールが怒るし心配するので今回は諦めた。それでも水の誘惑は耐えがたくて、野営の準備をするフリオニールを手伝いながら、チロチロと水を見てしまう。
    何となく思い出してきた事は、泳ぐことが凄く好きだった事。
    好きだったせいだろうか。水の中にいると酷く安心した。
    水面に向かって上がって行く泡粒とか、光で青く光る水面を水の中から見ることとか、耳だけではなく音を体中で感じられることとか。
    水の中にいれば何かと繋がっていられるような気がするとか。
    「…?」
    ぼんやり考えながらティーダは首を傾げた。誰と繋がっていたいと思ったんだろうか。
    目の前でテントを張っている背の高い仲間ではない。
    今は別行動をしている仲間たちでもない。
    敵対している父親でもない。
    では、一体誰との繋がりを求めているのだろうか。それが解らなくてティーダは眉をひそめた。断片的に甦る記憶を手繰り寄せてみても、ばらばらなパーツは一つにならない。思い出したくても、何かが邪魔をして思い出せないような気がしてならない。
    「ティーダ?」
    「あ、うん。ゴメン」
    慌てて持っていた布をフリオニールに渡すと、心配そうな顔で覗き込んできた。
    「まだ調子が悪いんじゃないか?」
    「大丈夫だって」
    「寒いのに水なんかに入るから」
    「風邪は治ったよ!心配性だなぁ…。ここに来る前にさ、砂漠を抜けてきただろう?
    乾いた空気がちょっと苦手なんだよ」
    フリオニールは困った顔で笑い、ティーダに肩をすくめてみせた。そんなフリオニールにティーダは言い訳のように話しながら、腕の埃を払う。
    「それになんだか体が砂っぽくてさぁ。フリオニールは平気か?俺、結構ダメかも」
    「確かに体がざらざらするから気持ちが悪いな」
    「そうだろ?髪もブーツの中も砂だらけ」
    髪に手をやると、ざらりとした砂が落ちてきた。ティーダの明るい色の髪が汚れてくすんだ色になってしまっている。言われなければ気がつかなかったフリオニールも、気がついてしまえば体の汚れが気になってきた。砂まみれのままでも寝られるが、さっぱりして寝た方が疲れもとれる
    「でっかい風呂に入りたいっス。水浴びばっかりだと、やっぱりさっぱりしないって」
    「水にばかり浸かっている奴の言う事だとは思えないんだが」
    「…ちぇ」
    「だが、本当に風呂にぐらい入りたいな。何となく寒いし、こんな時はのんびり風呂に入れたらいいのに」
    「そう思うだろ?」
     話しながらもテキパキとテントを張って、中に入る。地面に直接寝るわけではないが、ごつごつした硬い寝床にティーダは溜息をついた。


    KISS TO HEAVEN(サンプル)
    セシルと話すのも早急に切り上げて「夕食用の魚を取りにいく」と言って野営地から少し離れた湖に足を向ける。フリオニールが呼ぶ声が聞こえて、すぐに戻ると手を振ってティーダは全力で走り出した。走った所で体の奥に感じる熱は消えない。目の前に大きな湖が見えて、ティーダは走りながら器用にブーツだけを脱ぎ棄てる。そのまま、頭から湖に飛び込んだ。
    水は冷たくて、澄んでいた。
    深く深くに潜りながらティーダは自分の吐いた息が気泡になって上に昇って行くのを見つめる。
    水の音しかしない、青い世界でティーダは熱くなってしまった自分の体を抱きしめた。周りは痛いぐらいに冷たいのに、ティーダの体は熱いままだった。
    『ちがう』
    さっきまでフリオニールが触れていた耳や唇に指を当てた。
    体が熱いのではない。心のほうがよっぽど熱い。
    フリオニールに触れたくて、触れたくて仕方がない。
    男同士での恋愛なんて無理だと諦めきっていたのに、フリオニールはティーダの事を好きだと言ってくれた。友人ではなく、仲間でもなく、一番に愛しい人だと、そう言ってくれた。
    だからティーダはフリオニールを一人占めしたいのに。
    フリオニールになら抱かれてもいいと思ってしまった日から、ずっとフリオニールの熱に包まれたかった。あの手で体を撫でられて、ティーダの一番深い所で繋がれたら、とそう思っているのに。
    フリオニールだってそうだと思っていたのに。ティーダの熱を高めるだけ高めて、一線を越えようとすると止めてしまう。
    今日のような事が何度もあった。
    フリオニールにはそんな欲がないのだろうか。
    ティーダにはある。フリオニールの事を受け入れて、本能をむき出しにして愛したいという欲が。肉欲にまみれていると思う。けれど、この世界でも消えることになったら、自分の気持ちも思いも何も伝えられずに去ることになったら、後悔するだろう。

    フリオニール

    水の中で名前を呼べば、言葉が泡になって浮かんでいく。
    肺の中の少ない空気を吐き出して、ティーダはゆっくりと水面を目指して水をかいた。
    水面まで行って大きく息を吸い、頭を振る。水しぶきが飛んで、ティーダは髪をかきあげた。そのまま暫く浮かんでいると体がようやく冷えてきた。
    「さむ…っ」
    冷たい水の中でも、動きまわっていれば寒さも感じないが、じっとしていれば体の芯から冷えてきてしまう。そろそろ出るか、とゆっくりクロールで岸に向かって泳ぐ。
    このまま今日は寝てしまおうか



    LOST-1(サンプル)
    世界を旅して回っているんだ。
    そう言って笑った青年はバッツと名乗った。
    「バッツ・クラウザー。よろしく」
    ニカリと笑った顔が、聞いていた年よりずっと幼い感じになってフリオニールはつられて笑う。しばらく一緒に旅をするならいい奴の方がいいと思っていたのだが、偶然なのか、たまたま知り合ったバッツはとてもいい意味で気楽な男だった。どこに行くのかと聞いても、さぁ?と笑って答える。行きたい所は決まっていないが、脚が赴くままに進むのだと答えていた。
    そんな生き方もあるのか、と溜息をつく。
    世界を見ておいで、と言われて数ヶ月前に旅にでた。
    とりあえず道に沿って大きな街をいくつか見て、ここにたどり着いた。どこかにいく行商の一団とでも交渉して、用心棒のような事をして路銀を稼ぐ事とついでに一緒に連れていてもらおうとその手の店に行ってバッツと出会った。
    数人の用心棒と荷運びの男手を探していた南に向かう行商との交渉中に、俺も雇ってくれない?と声をかけてきたのだ。始めは呆気にとられていたが、行商の一団があっさりバッツもフリオニールも雇うことに決めたらしく、明日の朝ここに来いとだけ言われて店を出された。顔を見合わせてから、これからよろしくと手を出す。
    「どこから来たんだ?」
    「北の方だ。幾つか国を超えてきた。バッツは?」
    「俺は西かな」
    「ふうん。どこに行くんだ?この行商の一座は南に行くんだろう」
    「へぇ。南かぁ」
    「まさか何も考えずに雇われたのか?」
    「あー。うん」
    暢気なバッツにフリオニールは心底呆れて、そしておかしくなった。このぐらいの方が、世界を見るにはいいのかもしれない。気負ったところで、今まで見てこれなかったことには変わりがないのだし、これからよく見て行けばいいだけのことだ。
    「さて、装備と荷物の整理をしなくちゃ。換金できるものはしといた方がいいかな」
    「そうだな。南に行くと言っていたが…通貨は違うんだろうな」
    今までの旅で、通貨が違って使えないことが何回かあり、その度に青くなったりしたフリオニールは苦く笑う。
    「ま、一番いいのは貴金属に換えて、それを両替することかな。宝石ならかさばらないし」
    「そうか。そういう方法もあるのか」
    「だって重いだろ、貨幣って。良質の宝石の方がいいって。これから宝石屋に行くけど一緒に行くか?」
    「ああ。ぜひ」


    常世の森(サンプル)
    「大丈夫か?フリオニール」
    「ああ…。ちょっと挫いただけだ」
     街道のすみに座りこんだ青年を、同行者らしい青年がのぞきこむ。年は同じぐらいで、座り込んでいる青年が苦笑いしながら足首をさすっているのを、心配そうに見ていた。
    「道が悪いからな。そこの石を踏みつけてしまったみたいだ」
    「靴を脱げ」
    「大丈夫だよ」
    「あんたの大丈夫は当てにならない」
    「ははは…」
     むすっとしたまま言われて、肩をすくめる。早くしろと急かされて苦笑いをしながら装備を外し長靴を脱いだ。赤く腫れあがった足首をさすりながら溜息をついた。
    「結構腫れているなぁ…」
    「まったくだ。応急処置だけはできるが、医者に見せたほうがいい。骨までいっていたら厄介だ。暫く動けないぞ」
    「それは…困るな」
     急ぐ旅ではないのだが、それでも足止めを食らうのはいただけない。フリオニールの住む街はともかく、クラウドの街は随分と北にある。街道も冬のはじめには閉ざされてしまうから、寒くなる前には着きたい。
     なんでも屋の仕事を手伝っているフリオニールは、クラウドと一緒に旅に出るのはこれで数度目だ。今回は新しくあつらえた剣の鞘を大陸の端の街まで届ける事だった。依頼主の街は大陸の東で、そこから大陸の南を通り西側に行った。今はその帰りで、帰りのルートは来たときとは違い少しだけ北にずれている。比較的交通量の多い南側と違って、北側は道が悪い。
     そんなデコボコとした道に、フリオニールが足を取られて足を痛めてしまったのは運がわるかったとしか言えなかった。旅に慣れているフリオニールやクラウドなら、大丈夫のはずだった岩が多い道は、まだ続く。大きな街に行くにはもう少しかかりそうだし、馬を手に入れるにしても旅用の馬が簡単には手に入らなそうだ。
     街道沿いの村いる馬は、どう見ても農作業用で長旅にはむきそうにない。
    「ちょっとさきまで行けば、町があるだろうから、そこまで頑張れるか?」
    「ああ。このぐらい大丈夫だ」
    「まだ道中は長い。それにこの街道は道が悪いから、しっかり治さなければまた同じように痛めるぞ」
    「う…」
    「早く帰りたいとは思うが、まだ夏が終わったばかりだ。冬が早いニブルヘイムもまだまだ夏さ」
    「だが…」
     クラウドの帰りを待っている人がいるのだろう?
     そう言おうとして、クラウドに苦笑された。
    「そんなに気を使うな。あいつも今頃、大陸の北を走っているから」
    「…」
     依頼が重なったから仕方なくフリオニールにクラウドと一緒にいくように頼んだ男の顔を思い出して、フリオニールは肩を落とす。本来ならフリオニールが北の依頼を受ければよかったのだが、行ったことのない街道と街では不便だろうからと変わってくれたのだ。
     本当はクラウドの事が心配でたまらないはずなのに。
     足首に応急的に持っていた湿布を貼りきつめに包帯を巻く。歩きにくいが固定しないよりはいい。
    「それより、あんたの足だ。治療できる医者がいればいいんだが」
    「薬だけでも大丈夫だ」
    「前もそんな事を言って、傷が膿んで熱を出したのは誰だ」
    「おれデス…」
    「ならしっかり傷を治せ。冬はニブルヘイムに来るんだろう?雪道は大変だぞ」
     フリオニールの荷物を一つ担ぎながらクラウドはスタスタ歩き出した。雪のない街で生まれたフリオニールには雪道の大変さがいまいち伝わらないが、ニブルヘイムは豪雪で有名な所だ。背丈より高く雪が積もる街での暮らしには興味があったし、クラウドの家に暫く居候をさせてもらう約束になっていた。




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