今日の追いかけっこの結末は走る先に雷電の姿を見付けた始皇帝は、好!と叫んで地を蹴る。
「朕を乗せる事を許す!さぁ、疾く走れ!!佐々木と切り裂きのも連れて行くぞ!」
ぴょんっ!と身軽に肩車をしてきた始皇帝は少し先を走る小次郎達の背中を指差し雷電に命令する。
そんな始皇帝に慣れたのか、雷電は
「おめったいのぉ」
と頭を掻くと走り出した。
何だかんだと、雷電も騒がしいのは嫌いじゃない。
始皇帝はともかく、神々からの執拗な求愛と執着に追われている小次郎とジャックには少し思うところもある。
「おわっ?!」
「oops?!」
短い声を上げる小次郎とジャックの身体が浮く。
「舌を噛むなよ」
雷電が小次郎とジャックを小脇に抱え、グッと踏み込めばそれなりの速度となり肩の上で始皇帝が楽しそうに笑った。
呂布に行手を阻まれたギリシャの三柱の内ニ柱は、遠ざかる四つ背中を確認するや額にビキビキっと青筋を立てる。
「嬴政!!余以外の男に跨るとは良い度胸だな・・・・」
「雑魚がっ。余以外の男にその身体を任せるとは死にたいようだ」
何だか聞く人が聞けば誤解を生みそうな台詞だと、ヘラクレスは思う。
トライデントとバイデントをそれぞれに取り出したギリシャ兄弟と強者と仕合えると凶悪な笑顔で舌舐めずりをする呂布。
どうやって止めようかとヘラクレスが、思案すると同時に空気に帯電が起こっているのに気付く。
「ま、まさか、コレって...」
ヘラクレスが呟くと同時に、ニ柱と一人の間に
ドォオオオオン!!!
と雷が落ちた。
落雷の場所に降り立ったのは
「我が友。一人は我が受けよう。面白そうだ」
北欧神トール。
トールの言葉に呂布は楽しそうに笑う。
対するギリシャ兄弟の目が更に据わる。
ヘラクレスは独り、ジャックが去ってしまった方に視線を向かわせた。
そして思う。
一人と三柱を置いて追いかけても良いだろうかと、しかし-----
ガキィィイイイインっ!!!!
ドカァアっっ!!!
「お前、なかなか良いぞ!冥府の!」
「嬴政の部下とて容赦はせぬぞ...そこをどかぬか!!」
「愉しませろ。海の神」
「消えろ」
このままにしておくと、この辺りが焦土化しそうである。
悲壮感を漂わせたヘラクレスは、グッと唇を噛み締め激戦を止めようと渦中に飛び込んで行った。