Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    さよりこ

    GS4腐向けで書いてます。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    さよりこ

    ☆quiet follow

    以前投稿したチョコレートのお話の続きです。

    #七風食堂
    sevenWindsCanteen

    mine(昨日のカザマ、可愛かったな……)
     仕事終わりにカザマのおじいさんの店に向かう。仕事中は何とかガマンできたが、こうして一人になると、昨夜の恋人の姿を思い出しては口元が緩んでしまう。ワイルド系で売っている人気モデルのNanaの時には見せられない姿だ。
     だけど、今の俺は七ツ森。しかもマスクで口元が隠れているとなれば、気持ちも顔も緩んでしまうというものだ。
     昔の俺はこうじゃなかった。表情だって豊かじゃないし、テンションだってそんなに高くない。あまり目立たない、どこにでもいる普通の男。だけど高校に入って、友達ができて、恋人ができて……自分でも知らなかった自分をたくさん知った。
    「あ」
     高校時代に思いを馳せていたら、いつの間にか店の前についていた。そっと中に入ると、カザマはカウンターの近くでお客さんと話をしているようだった。店が閉まるまであと少しある。俺は仕事の邪魔をしないように店の隅に移動した。
     話しているのは中年くらいの男性客だ。声が大きくて、離れていても会話の内容が聞こえてくる。
    「玲太くん、最近お菓子作ってるんだって? 匡さんに聞いたよ。時期的にチョコレートかな?」
    「あ、はい、バレンタインなので……」
    「イギリス文化ってやつかぁ。あんなに小さかった君が、お菓子を作るようになってるなんてねぇ……そうだ、もう味見はしたのかい? よかったらおじさんが味を見てあげよう」
    「え」
    (は!?)
     咄嗟にカウンターを振り返る。
     あのオッサン、今なんて言った!?
    「なんて、玲太くんの手作りなら、美味しいに決まって――」
    「すんません」
     オッサンの肩に手を置いた。それから威嚇の意味も込めて眼鏡を外す。
     振り向いた男は目を見開いて、「な、な……」と絶句した。
    「そいつのチョコ、全部俺のなんで」
    「七ツ森!?」
     カザマまでも驚いた様子で声を上げた。
     それからカザマは慌てて男性客にフォローを入れて、俺は強制連行された。

    「俺のだもん……俺のでしょ……?」
    「はいはい、全部おまえのです。おまえのだから、とりあえず離れろ」
     帰宅して、背中に引っ付いたまま離れない俺のアタマを撫でながら、カザマが呆れた声で振り返る。
    「ったく……あの人、おじいちゃんの昔からのお得意さんなんだぞ。なんとか誤魔化したけど、マジで驚いたんだからな」
    「だって」
     カザマはしょうがないなと笑いながら、テーブルに並べたチョコレートをひとつ手に取った。それは一口サイズの、可愛らしい猫の形をしていた。
    「カワイイ」
     思わず顔がほころぶ。するとカザマも嬉しそうに笑う。
    「おまえ用だからな」
     その笑顔に心臓がキュンと高鳴る。差し出されたチョコレートをぱくりと食べ、そのままカザマの指までも味わう。
    「……っ、おい」
     チュッ、と音を立てると、抱き寄せた体がピクリと震えた。
     カザマに恋をして、付き合うようになって、昔じゃ考えられないくらいいろんな感情が俺の中からあふれてくるのを感じている。だけど全然イヤじゃない。カザマとだったら、どんな自分が出てきたって楽しみに変えられる。だって、こんなにシアワセなんだから。
     その日は、口の中で甘くとろけるチョコレートと恋人をたっぷり堪能したのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖😍❤💗💞❤💖☺❤💕😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    むんさんは腐っている早すぎたんだ

    DONE七風リレー小説企画 第一弾ラストになります。
    お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!!

    (なおラストはどうしても1000文字で納められなかったので主催の大槻さんにご了承いただいて文字数自由にしてもらいました💦今後もラストパートはそうなると思います)
    七風リレー小説⑥ 一度だけ響いた鐘の音に惹かれて風真は歩を進めていく。理事長の方針なのかは知らないが目的地までの道は舗装されておらず、人工的な光もない。すでに陽は沈みきってしまっているため、風真は目を慣らしつつ〈湿原の沼地〉を進んでいく。草木の茂る中ようやく着いた開けた場所にぽつんとあるそこは、予想はついていたが建物に明かりなどついておらず、宵闇にそびえる教会はいっそ畏怖さえ感じる。……大丈夫。俺は今無敵だから。そう心で唱えた後、風真は教会の扉に歩みながら辺りを見回して声を上げた。
     
    「七ツ森。いるのか?」
     
     ――返事はない。
     シン、とした静寂のみが風真を包み、パスケースを握った右手を胸に当てて風真は深くため息をついた。あれだけ響いた鐘の音も、もしかしたら幻聴だったのかもしれない。そもそもこんな闇の中、虫嫌いの七ツ森が草木を分けてこんな場所にくるはずもなかった。考えてみたらわかることなのに、やはり少し冷静さを欠いていたようだ。風真はそっと目の前の扉を引いてみる。……扉は動かない。
    2524

    oredayo_mino

    DONE七風食堂:冷蔵庫の残り物でごはん作ってくれ……風真……。
    明日は買い出しへ買い物に行く日は週に一度と決めている。自宅から徒歩十五分のスーパーは金曜が特売日で、カードで支払うと5%値引いてくれる。一週間分買いだめした食材を小分けにして冷凍し、作り置きのおかずを作っていれば「主婦みたい」と緑の瞳がいつも笑う。
    食材がほとんど底をつく木曜は俺の腕の見せ所だった。すかすかの冷蔵庫の中にはシチューの残りとサラダに使ったブロッコリーの残り。冷凍庫の中には食パンとピザ用チーズ。戸棚の中には使いかけのマカロニ。
    今日の夕食は決まりだ。残り物を工夫してそれなりの料理に変化させるのは意外と楽しい。まず冷凍の食パンを常温に戻す。その間にシチューをあたため、マカロニを湯がく。マカロニは少し芯がある位でざるに上げ、グラタン皿に盛りつける。その上からブロッコリーを乗せ、常温に戻した食パンを一口サイズに切り、同様に皿に盛りつける。その上からシチューを流し込み、冷凍してあったピザ用チーズを振りかける。それからオーブントースターで約8分焼くだけ。すると、チーズのいい香りに誘われたのか、ふらふらと実がキッチンへやってくる。
    1000