シアワセの味ってたぶんコレ『悪い、帰り遅くなる。昼は適当に食べててくれ』
朝からおじいさんの店に手伝いに出かけたカザマからメールが届いたのは、十一時を過ぎた頃だった。画面に指を滑らせて「了解」と返そうとして、ふと先日買っておいたものの存在を思い出した俺は、その先に一言追加した。
「了解。カザマの分も用意しとく」
キッチンの戸棚から炊き込みご飯の素を取り出す。
先日一緒に料理を作った(と言えるかはわからないが)時に、カザマは俺が炊いたご飯を「うまい」と言って食べてくれた。そこで俺は、コレなら一人でも食事の用意ができるんじゃないかと考えた。
なにせ研いだ米に入れるだけなのだ。米が炊けるなら失敗するハズがない。
さっそくキッチンへと向かい、三合分の米を研ぐ。ちょっと多いかもしれないが、残った分は夜に回せばいい。
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