Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    りんご

    @Rin_YSWR

    かいたものを投函するたぬきです。
    小説とイラストは9:1くらいです。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 ⛩ 🐍
    POIPOI 25

    りんご

    ☆quiet follow

    K暁デー 日課です。 日課とは?(困惑)
    好きな漫画がこんな感じで、めちゃくちゃどうでもいいこと話しながら敵をバッタバッタなぎ倒すんですよね。
    そういう、日常感を出したかったはずでした…
    KKは既に覚悟を決めてて、あっきーがもだもだしているタイプのK暁です。

    #K暁
    #毎月25日はK暁デー

    狐だって鬼を噛む「暁人くんよ、ここで問題だ
    なに、簡単な算数の話だぜ」

    この状況にそぐわない軽さで、相棒はのんびりとそんなことを宣った。
    またやってるな、なんて内心ぼんやりと受け取っている僕も似たり寄ったりかもしれない。

    「前に4、後ろに7、上に3
    この狭い路地裏で、オレたちはどうノルマ分けするのが得策でしょうか」

    なんとなく自分たちのことを言われているのはわかるのだろう、あちこちにいるマレビトたちが低く身構える。どうしてこう、彼は無駄に相手を煽ってしまうのか。今まで穏便に生きてきた僕にはできない芸当だから呆れて…否、尊敬・・している。取り留めないことを考えていても仕方ないので、僕は根本的なところの訂正を試みた。

    「そもそも問題文に誤りがあるよ、KK
    前方奥に1、それも結構めんどくさいやつがいるから―――7ずつで、KKがあっちの敵さんやってね」
    「はあ?!」

    そうこうしてる間にも僕は破魔矢をつがえて頭に狙いを定めているし、KKも水の印を組んで僕の背中に立ち、向こう側の敵を一掃しようと力を溜めている。通路に彼の声が反響してマレビトもびっくりしてるんじゃないかな。あ、そういえば。

    「て言うか、この前もKKが大きな声出したせいで別のマレビトたちに気付かれたんだよ?
    別にやらなくたってよかったのに、おかげで晩ごはんコロッケにできなくなって反省したんじゃないの?」
    「それとこれとは話が違うだろ、出来るだけ殲滅しときゃあ今後の依頼ラクになんだろ!」
    「そんなの分からないでしょ! 僕が言ってるのは、最小限にとどめといて必要な時に必要なだけ戦おうねってことで、」
    「明日やんのも今日やんのも一緒だろうが! どうせアイツらだって、!」

    一気にマレビトたちが向かってくる。いい加減にしろ、が言えなくて、冥界の底から響くような怨嗟を張り上げながらそれぞれに技を仕掛けてくる。正直、KKといい勝負してる。声量大きい相棒本当にすごいね、いや違うか、

    「うるせーよ」
    「うるさいよ」

    照法師を射ち落とし、水の刃が有象無象を薙ぎ払う。
    とりあえず僕らの打ち合わせの邪魔をしないでもらえるかな、この後の予定が狂っちゃうんだから。

    「早くしねえとノルマ終わっちまうぞー」
    「ちょっと、KKズルくない?!」
    「ズルかねーだろ」
    「いやそうでしょ!
    『老眼はいってるから~』とか何とか言って僕に弓に渡してるけど、別にKKならやれるよね!」
    「ハンっ、律儀に使おうとするオマエがマヌケなだけだろ」
    「ひっどい! あーもう、こうなったら僕もエーテル使う!」

    今更事前に仕掛けられたカラクリに抗議しても、当の犯人はどこ吹く風で敵をどんどん殲滅している。このままだと奥のめんどくさいやつを僕に押し付けられそうな予感がしたので、敢えてKKと同じ方を向いて、火の槍を遠くに投げてコアを引き抜いた。

    「はぁ?! オマエ、ふっざけんなよ!」
    「どっちがだよ! 簡単に終わらせないからね」
    「チッ、年長者を敬え…っての!」

    言い合いながらも、上にいた残りの白頭巾をKKが消滅させて、僕は彼の背後に迫っていた狩影を即浄させてコアを握りつぶした。

    「やだなあ、ちゃんと敬ってるでしょ
    今回の見せ場をしっかり残してるんだからさあ」
    「アホか、こういう時は『僕がやります!』ってセンパイを逃がすところまでがデフォルトだろ」
    「今じゃそれってパワハラだしモラハラだよ…」
    「警察はハラスメントの巣窟だっつの!」

    かつての内部関係者がそれを言っていいのかなとか思いつつ、とりあえずそれぞれ7体ずつ終わったらしい。ああ、この暑い日にちょうどいい涼しさ、とか思っちゃう。

    「…この時期の白無垢ってさ、僕らにはご褒美じゃない?」
    「オマエほんと馬鹿」
    「だって連日最高気温更新だよ? 酷暑って言葉がしっぽ巻いて逃げ出すくらいの暑さだよ?
    もうよくない、このまま置いといても」
    「気持ちはわかるが、凛子のブリザードに当たりたくはねえ」

    僕がKKたちのメンバーの一員になって久しいけど、以前一度依頼で大コケした時しこたま怒られた。渋谷事変の時はあんなに優しかったのに。懐に入れた途端容赦がなくなる彼女に、KKが言ってたのはこのことだったのかななんて現実逃避しながら甘んじてお叱りを受けた。KKはあの時部屋の隅の方で爆笑してたよね。あー、思い出したら腹立ってきた。

    「ちょっと芋づる式にいろいろ浮かんだから、今からあの人をKKだと思ってボコボコにしようと思う」
    「何がどうなってんだよ、オマエの思考回路」
    「今のところ全部KKに繋がってる感じ」
    「ヒュー、熱烈だねえ」

    言葉の内容と対極にあるような冷気が僕たちを襲う。凄まじい吹雪の向こうで置いてきぼりにされた白無垢がかなり怒っている。

    「って、いつもより3割増しじゃない?!」
    「アレだろ オレたちのおアツイとこ見せつけられて妬いてんじゃねえ」
    「……自分でそう言えるのいっそ感心するよ…」

    けどまあ、否定はしない。言ってることはともかく、僕たちが手を組めば負け無しだって分かってるから。それは信頼というか、決定事項というか。とにかく、彼女が入り込む隙なんてどこにもない。

    「そんじゃマ、もっと見てもらうとしますかね
    オレたちの“愛のチカラ”ってやつ?」
    「もう何でもいいよ……とりあえず火を撃ち込むからね!」

    再び吹きかけられた雪を支点に左右に旋回し、双方向から火のエーテルを飛ばす。さらに一発、もう一回……あ、しまったな。僕は一回火炎槍使っちゃったから火の元素マイナス1か。

    「KKー計算ミスだよー、さっきエーテル使っちゃった」
    「だから無闇に使うなって言ったろうが、オマエにゃ弓でチマチマ片づけてもらうのがお似合いなんだよ」
    「なにそれ、そんなこと言って本当に僕にやらせる気だったでしょ」
    「さっきの話蒸し返していいのか?」

    面倒だからやめる、と言わせてもらえず、さっきまで踏んでいた地面に氷が這わされる。足場が取られる方がこの場合もっと厄介だってこと、相手はよく知ってるよね。

    「だから折衷案、二人でやろう」
    「はぁー…」

    向かいに立つ相棒はこれ見よがしにため息を吐いたけれど、僕は知っている。もはやアイコンタクトすらなく解呪の印を同時に組んだ。瞬間、激しい動悸とともに流れ込んでくるKKの霊力が僕のそれと繋がる。温かくて懐かしくて、全身が冴え渡ってるような感じ。気分が高揚しているのがわかる、相棒のだけど。

    「ったく、どうせ最初から絶対共鳴この予定だったんだろ
    素直になれよなー」
    「何言ってるの、共鳴できて嬉しいのはKKだって同じなくせに 分かるんだからね」
    「ハッ、似た者同士ってことかよ!」
    「激しく同意、かな!」

    視界が開けて、相手の動きがゆっくりになる。がら空きになった懐目がけて、溜めた印を解き放つのは同時だった。増幅された元素の力が敵の霊力を溶かし、あっけなく霧散する。その瞬間に戻ってきた暑さが何よりの証拠だ。

    「で、いつまでくっついてるんだよ、暁人くん」
    「それはKKだって一緒でしょ」
    「フン 本当は好きで好きで仕方ないから離れたくないくせに
    『KK~どっか行っちゃイヤ~』ってな」
    「前々から思ってたけど僕のものまねに悪意あるよね! 似てないし!」
    「で? どうなんだよ、降参するか?」
    「うぅ……」

    途端にまじめな顔をするのは本当に狡い。
    KKはとっくに僕に気持ちを打ち明けて身軽なんだろうけど、僕はやっぱりもっと過程を大事にしたいんだ。そういう風なことをKKに告げたら『じゃあ奴さんを倒すごとにオマエにカッコイイとこ見せて、さっさと言わせてやるよ』って返されたんだよな……いやもう十分KKが格好いいことは知ってるんだけど。
    あとその、声質がダメだ。大きいとか何とか言って誤魔化してるけど、本当は誰にも聞かせたくないって思ってる、特にこういう甘さを含んだ時とか。麻里が前に言ってた『耳が孕む』って表現、間違いないよね、絶対言わないけど。ぐるぐる考えているうちにKKは僕の両肩に腕を乗せて、首の後ろで手を組んでいる。ヤバイ、今日は逃げられないかも。

    「まだ共鳴が解けてねえからわかるぜ?
    オマエの心音のはやさも、上がってる体温も、全部バレてる」
    「~~~~っ!」
    「もう観念しな 言ったろ、どうせ明日も今日も一緒なんだから、頷くだけでいい」
    「でっ、でも、」
    「暁人」

    ダメ、耳元で名前を呼ばれると本当に参る。KKもそれを分かっててやってる。しどろもどろの張りぼてなんて、どうせKKの経験値の前には無駄だ。だけど、心の準備が、もうちょっとだけ、あと少しでいいから!

    ~~♪

    僕の願いが通じたのか、ポケットに入れていたスマホが着信を知らせた。日頃お賽銭をきちんとしてるからだ。KKはそのあたりがまちまちで、恐らくこの辺が差になって表れたのかも。天の助けとばかりに僕はKKの拘束から抜け出して電話を取った。

    「はい、伊月です」
    『暁人くん? どう、依頼は終わりそうかな』
    「あ、ちょうど良かったです、ついさっき全部殲滅しました」
    『さすがね、ご苦労様 KKにずっと繋いでたんだけど、あのバカどういうつもりかずっと電話に出なかったのよね……』

    KKを睨むと、本人は通話の内容が聞こえるのか居心地が悪そうにそっぽを向いた。個人的事由で職務怠慢ってどうなの?

    『まあいいわ、この後予定何かある?』
    「いえ、アジトに戻って報告だけして帰ろうかと…」
    『ほんと? じゃあ久しぶりに飲みに行かない?
    最近労ってなかったなーってみんなと話しててね、エドはあれだけど他のみんな連れて』
    「いいんですか! 行きます行きます」
    「ちょっと待て、今日こそコロッケって話じゃなかったか」

    隣でぶつくさ言ってる相棒はこの際無視だ。エドさんはいないけど、絵梨佳ちゃんやデイルさんに会える方が僕には大事だ。あ、麻里も連れてこようかな。みんなが入れるってことは、恐らくファミレスとかになるだろうから。

    「はい……はい、わかりました じゃあそこで
    あ、妹も連れてきて…わかりました、はい ではまた後で」
    「…どうしてくれんだよ、凛子のやつ……」

    電話を終えると、明らかに落胆した声が聞こえた。麻里の番号を探しながら『でも凛子さんを怒らせたくないじゃない』なんて相槌を打つ。

    「そんな話してねーよ、ああー今日もダメかよ……」
    「日頃の信心深さのたまものだね、これに懲りたらちゃんと仏さまに感謝しなきゃダメだよ」
    「こんなことやってるうちにオマエが誰かにとられそうな気がするんだよ…早く安心させろ……」

    緑のボタンを押しかけて、ふととどまる。そうか、KKの側からは考えたことがなかった。
    時折、僕は先もあるし人あたりがいいから優良物件なんだよって零すことがあるけど、あれは本気でそう言ってたんだ。そんな未来あるヤツをオレなんかが独占していいわけないって。彼は彼なりに色んな側面から物事を見て、自分の経験則と照らし合わせてこうなってる。僕に言わせればKKだって十分いい男性だと思うけれど、たぶんKKの言葉の大元は一般的な価値観に帰結してる。要は、僕が決めあぐねている間にKKは人知れず懊悩を抱えて、二進も三進もいかなくなってるんだ。なんか悪いことしたな。



    項垂れている相棒にそっと近づいて、下からその顔を仰ぎ見た。なんだよ、と瞳を逸らされる。冗談言う割に、実際のところ堪えてたんだね。そういうのをもっと早く気付けばよかった。話は変わるけど、僕の美点は反省を次に生かすのが早いところなんだ。だから凛子さんに怒られるようなことはあれっきりだし、次はエーテル配分も間違えない。KKの口元目がけて唇を合わせた。いっぱい待ってくれてありがとうって気持ちと、何も知らなくてごめんねって後ろめたさを滲ませて。丁度そこで共鳴が途切れたけれど、きっとこの人はわかってくれる、と思う。

    「は………は?!」
    「今はこれで我慢してね?」
    「いやそうじゃねえだろ、おま、オマエなあ!」

    明らかに動揺するKKを横目に見ながら、してやったりなんて、まさかそんなこと思ってないからね、安心して!



    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍☺❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤💖💖💖💘🙏💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖🙏💖💖🙏🙏💒💒💒😇🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works