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    Ryugoku_72

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    もしも真西(真島×西谷)が高校生で、同学年だったら。のif小説。

    #腐が如く
    #真西
    shinsei

    もしも真西が高校生で、同学年だったら①もうすぐ夏休みに入る。
    放課後。グランドで部活動に励む生徒達の声や、吹奏楽部の練習などの音を耳にしながら、真島はクーラーも扇風機も無い全ての窓が開け放しになっている他の人間は誰一人も居ない教室で、自身の席に座り、机の上に置いた鞄をクッション代わりにして、夏の暑さを感じながらも、顔を伏せて休んでいた。

    本来なら学校が終われば真っ直ぐに帰宅し、真っ先にクーラーが備え付けらている自室に閉じ籠もり、クーラーを効かせた部屋のベットの上に寝転がりながら、勝手気ままな時間を過ごしたい。

    だが、今の真島には、それが出来ない理由がある。
    額に浮かぶ汗が静かに音もなく肌を伝い、じんわりとクッション代わりの鞄に染み込むのが判った。
    その時だった。ガラッ、と勢いよく教室のドアが開いた。

    「真島くん、お待たせ!いやぁ~、予定より早く試合終わってしもうた!」

    夏の暑さにも負けないほどの声量で真島に声をかけつつも、ズカズカと歩み寄ってくる待ち人に真島は気怠気に顔だけを向け「ほんで、結果は?」と、如何にもどうでも良さそうに尋ねた。

    「僕が協力したんやから、楽勝に決まっとるやん」

    それが当然の結果だ、と言わんばかりに、真島が座っている席の真ん前で自身の腰に両手を当て、誇らしげに仁王立ちをしてみせるサッカーのユニホーム姿のままの待ち人に、真島は「ふぅん」と気のない返事をしてみせる。

    「真島くんも参加すれば良かったんに。それなりに楽しめたで?」
    「阿呆。何が楽しゅうて、こないに暑い中、無駄に汗かかんとあかんねん。絶対お断りや」

    クッション代わりの鞄に顎を乗せ、上目使いで相手を見上げる真島は、まるで疲れきった犬のような顔をしている。
    待ち人は眉を下げながら「もっと青春を謳歌せなあかんよ。真島くん」と言った。

    真島は昔から夏が苦手だ。
    海水浴やプール、花火やバーベキュー、野外で楽しむイベントには全く興味は無いし、夏は無駄に暑く、体力は削られ、鬱陶しいだけでしかない。
    「まぁ、えぇけど」と、待ち人は真島の前の席の椅子を引き寄せて、背凭れを前にして座った。

    「そんなことより聞いたで。今日、昼休みに女子に呼び出されて告白されたんやってな」

    今までの様子が嘘のように、真島はパッと驚いた顔で、目の前の相手の顔に目をやった。

    「お前、それ誰に聞いた」
    「風の噂で。ちゅうのは嘘で、多分やけど僕以外にも何人か耳に入っとると思うわ」
    「はぁ……、ほんまか」

    学校というコミュニティを決して馬鹿にしてはいけない。
    しかも、十代真っ只中。世に言う青春と呼べる時期を過ごしている若き彼らは、退屈を持て余し、そして刺激を常に求めている多感な年頃。人の恋愛事情など、美味しい話題にしかすぎない。

    真島は溜め息と共に、再び鞄に顔を沈めた。
    目を閉じ、ほんの数時間前の出来事を回想してみる。
    昼食を食べ終えたばかりの直後、他のクラスの一人の女子が教室のドア前から声をかけてきたことが始まりだった。「真島くん。少しだけ時間えぇ、ですか?」と、どこか落ち着きの無い様子で。
    「ずっと格好いいと思ってました。良ければ付き合ってください」と、ありきたりな言葉と共に頭を下げられ、「悪いけど、そういうんは興味ない」と真島が本心を告げると、女子は一分もせずに涙ぐみだし、真島に背を向けて走り去ったと思えば、多分待ち構えていた友人達であろう何人かの女子と合流して、おそらく慰められていた。

    その様子を目にしながら「どないして女は群れを作りたがるのだろう」と真島は一人首を傾げたものだ。

    「相手、結構かわえぇ子やったって聞いたで。勿体無いなぁ。嘘でも付き合おう言えば良かったんに」
    「そんなん興味ないし。嘘吐いてまで付き合いとうない。相手にも失礼やろ」
    「ヒヒッ、この夏、真島くんが大人の階段昇れるかもしれへんかったのになぁ」

    ニヤニヤと意味あり気に笑う目の前の相手に「それをお前が言うのか」と言い返したかったが、真島は堪えた。

    待ち人の名前は、西谷誉。
    真島とはクラスは違えど、同学年で、一応は友人だ。
    真島が西谷と初めて顔を合わせたのは、まだ入学して間も無い一年生の頃、後ろに四~五人を引き連れた上級生から「お前の目付きが気に入らん」と、ありがちだが体育館裏にある倉庫前に呼び出され、喧嘩を売られたのがきっかけだった。

    幼い頃に珍しい眼病を患った真島は、不幸にも左目を摘出する手術を行った。故に真島の左目には、眼球が存在していない。それを隠すように真島は左目の部分に眼帯をしている。その姿が悪目立ちをし、上級生の反感を買ったのかもしれない。

    喧嘩を売ってきた上級生を真島は驚異的な強さと速さで全員倒すと、最後の一人に上乗りになり、まるで日頃を鬱憤を晴らすように、相手の血で拳が汚れようが顔面を何発も殴っていた。
    そんな現場を偶然にも通りかかった西谷に目撃され、怖がられ逃げられるかと思えば「これ全員、君が負かしたんか!格好えぇなぁ!僕、強い男は大好きや!もっと君のこと知りたいから僕の友達になって!」と、逆に興味津々で瞳をキラキラと輝かせながら言い寄られたことから西谷との不思議な友情関係は始まった。

    そんな西谷が既に初体験を済ませていたのを真島が知ったのは、桜も散り終えた頃。
    あれは二人して肩を並べ、屋上で昼食を共にしていた時だ。
    真島のクラスメイトの男子の一人が、エロ本を校内に持ち込み、仲間の友人達とアレコレ盛り上がっていた所を同じクラスの女子が教師に告げ口をし、男子生徒は厳しい注意を受けたとの話の流れから発覚したものだった。

    「あんなん大したことない。皆、夢見すぎや」

    晴れ晴れとした上空に目をやりながら、西谷は紙パックの苺オレを片手に、クリームパンを一口頬張った後、もごもごと言った。
    「よくそんな甘いものばかりを食べられるもんだ」と、そこまで甘いものが得意ではない真島が思いながら、食べかけの鮭おにぎりを手に口を開く。

    「そういう、お前は夢見てないんか?」
    「うん。僕、去年に童貞捨てたから」

    何でもないように、クリームパンを咀嚼しながら西谷は上空に目をやったまま返した。
    真島は密かにショックを受けた。真島とて別に初体験を急ぐ訳ではないが、そういったことには一人の健全な男子として、それなりに関心は持っている。
    隣に居る西谷の横顔を、まじまじと真島が見ていると「それはそうと真島くんのお茶、一口くれへん?口ん中、甘さしかなくなってきた」と西谷は顔を向けて、聞いてきた。

    「そんなん知らん。茶ぐらい自分で買うてこいや」
    「えぇ~!少しぐらいえぇやん!真島くんのケチ!」
    「誰がケチや」

    真島が西谷と知り合ってから一年は過ぎたが、西谷に彼女が居る、という話は一度も聞いたことがない。
    とある日の朝礼中、貧血か何かで突如倒れた女子を西谷が背中におぶり、保健室まで運んでいったことがあった。少なくとも同学年の間では、二人は付き合ってるんじゃないか、との噂が囁かれたが「あの子、他の学校に付き合うとる人が居るんやって言うとったわ。もしかしてのロマンスを期待しとったんやけど…、残念無念やった」と、傷付いた様子など一切なくヘラヘラと笑いながら交際を否定する西谷に噂は一旦そこまでとなった。
    男女、同学年、下級生、上級生問わず人気がある印象の西谷は、真島が持っていないものを幾つか持っている。そこが真島にとって西谷の魅力の一つだ。

    しかし、西谷には二面性があった。
    嘘か誠かは定かではないが、五人か六人かの上級生に喧嘩を売られ、あっという間に一人で片付け、おまけに四階の窓から一人ずつ投げ落とそうとしている現場を教師に発見され、全力で阻止をされ、親まで呼び出されて、みっちり説教を受けたと聞いたこともある。
    ちなみに真島は西谷の親の顔を一度も拝んだことがない。

    「なぁ、今年の夏休み、どっか行かへん?二人で」
    「どっかって、どこにや」
    「んー……祭りとか。ちょっとした冒険で遠出。海とか?」
    「お前なぁ、遊びに誘うなら、もいちょい具体的な計画性を持てや」
    「へへっ、まぁえぇやん!とにかく今年の夏は二人で、どっかに行く!決定!な?えぇやろ?」

    そして、終業式を終え、夏休みに入り、一週間が経った。
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