【森】鍛冶屋師弟お題 冬の風は心地良い。森の木々が次々とさざなみのように音を奏でる。自分と弟子以外に誰もいないランカークスの深い森。この森で過ごすのももう何年になるだろう。深く息を吸い込むと、外気の冷たさはあるものの、ぴりりと気が引き締まる。
腕の傷にはそう良くは無いのだろうが、今年は思いの外雪も少なく、包帯だらけの体にはこのくらいの冷たさが自分に合うとロンは思った。坊やは朝早くから村に買い出しに出ていった。自分の昼飯を作りおいてくれたので、おそらく日暮れには戻るだろう。
そんな中、ロンは久しぶりにゆったりと時間が溶けていく昼下がりを満喫している。そういえばあの坊やが弟子入りするようになってから、朝起きて夜眠るという習慣がすっかりついてしまっていた。昔は酒を飲んで次に起きたら数日経っていたなど、珍しくもなかったのに。庭に出してある椅子に腰掛けてしばらくすると我知らずロンのこうべはうとうとと船を漕ぎ出していた。
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