安定剤「あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”ぁ”ーーー」
『安定剤』
ソファにだらりと座り、テレビを見ていると、背後から暁人の悲痛な叫び声が聞こえてくる。潰れた蛙のようなだみ声に内心驚きが隠せず、びくりと肩が跳ねた。ちらりっと背後を振り返ると、書類の山が片付いたテーブルの上で険しい顔をした暁人がノートパソコンを睨みつけていた。
「(苦戦してるな…)」
一週間前に出された課題のレポートは以外にも暁人の苦手分野のようで、一向に進まず手を焼いている。ちなみに今日で三徹目だ。目元に黒い膜が見え、髪もぼさぼさで、少し髭が生えている。体毛が薄い暁人の珍しい姿に心が浮き立つ。
「あ”ーもう、何これ!!」
ぼさぼさの頭を両手でかき回し、歯を食いしばり、肘をテーブルにつく。触らぬ暁人に祟りなし。即座にテレビに視線を戻した。
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