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    もちの粉

    @mochikout

    サンフリ置き場

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    もちの粉

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    「だから、これは恋とかではなくカンチガイなんだ、うん、そうだったんだ。」

    地上に出る直前にフリスクが自分の気持ちを分析するお話。後半はサンズがでてきます。

    「フリスクの嫉妬」編の最後に少し紹介した3回の告白のうち
    1回目の告白です。

    #sansxfrisk
    freshAsADaisy
    #サンフリ
    #frans

    1回目の告白「…やっぱりそうだ。この気持ちは、吊り橋効果ってやつなんだと思う。きっと」

    緑色のソファーの肘掛けを背もたれ代わりにして本を読んでいたフリスクはポツリとつぶやいた。

    ここはサンズとパピルスの家。リビングは吹き抜けになっているため天井が高い。大きくて立派な家だ。

    本には「吊り橋のような恐怖を伴う場所で異性に出会うと、恐怖によるドキドキを異性に対するドキドキと勘違いしてしまう」
    と書いてある。

    「あの時、暗い雑木林を1人で歩いて、足音もして、恐怖と不安で心臓がドキドキドキドキしてた。だから、そのドキドキした状態で出会ったサンズを見て脳が恋と勘違いしたんだ…!」

    ソファーの上で小さなフリスクはひとつひとつ確かめるようにそう言った。

    しかし広いリビングにサンズはいない。
    パピルスもいない。
    誰もいない。
    フリスク以外は。

    「そう」

    フリスクは今、想い人の家でハッキリとした独り言をつぶやきながら自分の気持ちを整理している。

    「だから、これは恋とかではなくカンチガイなんだ、うん、そうだったんだ。」

    自分の中に生まれた不思議な気持ちに、そう結論を出したフリスクは本を閉じて顔をあげた。

    2階を見る。サンズの部屋のドアは開いていた。
    先ほど自分がくまなく中を調べてきたばかりだからだ。

    鍵をくれたのに、サンズはいつ来たっていなかった。
    自分をからかうような仕掛けが施されているだけの部屋。

    「……会いたくないのなら
    鍵なんて、くれなければよかったのに。」

    そうしたらきっと、こんなカンチガイはしなかった。

    もっと言えば、レストランやグリルビーズでご馳走なんてしてくれなければ。
    ホットドッグを頭に乗せられたり、望遠鏡にいたずらをしかけてきたり、怒って、友達みたいに笑い合ったりしなければ。

    思い返せばサンズに会うときはいつだってドキドキしていた。
    パピルスと和解できた高揚感。アンダインに狙われた恐怖や追われている最中の恐怖心。そしてMTTホテルの高級感に。
    いつだってサンズが現れればホッとして安らいで、すがりつきたくなった。なんだって報告したくなった。

    「はぁ…」

    フリスクは深いため息をついて扉に背を向ける。
    ソファーの背もたれにおでこを押し付けながら、のそのそとポケットから取り出したケイタイを見た。
    液晶画面にはトリエルとサンズの楽しそうなやりとりが踊っている。

    ─トリエルに必要とされてるのは自分だけじゃなかった。
    ─サンズが楽しませたいのは自分だけじゃなかった。

    「…だから、この寂しい気持ちも勘違いなんだ」
    またつぶやいて、フリスクは静かに目を閉じた。

    自分の居場所はどこにもない。
    誰の隣でもなかった。
    行く先々でサンズに優しくしてもらっているうちに、彼の隣は自分なんだと勘違いしてしまった。

    こうしてサンズの家に入ることも、さらにはサンズの部屋に入ることも許されたけど、それだけだ。

    サンズのイチバンは、きっとパピルスであり、そしてトリエルであり、アルフィーでありその後に続くモンスター達全員。

    そのずっとずっと後ろの方に、自分が入ることを許されただけ。

    「いっそ嫌ってくれたほうがラクになるのに」

    何気なくソファーの隙間に手を入れる。
    この前取り出したばかりなのに、また小銭がいくつか出てきた。きっとサンズが「また」ポケットから落としたんだろう。

    「ふふ」
    ここでだらしなく寝転んでいたであろうサンズの形跡を見つけてフリスクの口元は緩んでしまう。

    「あぁ、だめだなぁ…」
    緩んだ口元のまま、小銭を握りしめた拳で目を覆うとじわりと涙がこみあげてきた。

    これからフリスクは皆の元に戻り地上へと行く。

    「地上に出たら」
    ゴシゴシと大雑把に涙を拭いて、大きなため息を短くはく。
    そうしたら、もうサンズとはあまり会わないようにしよう。

    「私は欲張りだから」
    そばにいればイチバンが欲しくなる。
    ならいっそ会わなければいい。

    「そのうち、あのころは勘違いしたイタイ子供だったなって、笑える思い出になるよ!」

    会わないことをケツイしたら少しスッキリした。
    サンズの家のソファーで気持ちの整理をつけたのだ。
    「この恋心は吊り橋効果による勘違い」だと。

    もう皆の所に戻って役目を果たそう。
    そう決めて勢いをつけてソファーから起き上がったところで、フリスクは全身をビクっと震わせ固まった。

    起き上がったフリスクの目の前にはサンズが立っていた。

    驚きのあまり悲鳴も出ず、口をパクパクさせるフリスクを見下ろしながらいつもと変わらない笑顔でサンズはこう言った。

    「…よう。アンタってひとりでタメ息ついたり、わらったり泣いたり忙しいよな」





    サンズが用意してくれたミルク入りのマグカップを両手で包み、フリスクは恐る恐るサンズに聞いた。
    「…いつからいたの?」
    血の気が引いて冷たくなった手がマグカップのぬくもりで温まる。

    ソファーの斜め前にある階段に腰掛けたサンズはちょっと肩をすくめて答える。
    「あぁ。『鍵なんてくれなければよかったのに』のあたりかな」

    サンズはフリスクのセリフを甲高い声で再現した。
    それを言ったのはけっこう前だ。頭の中でその後の自分の独り言を高速リピートする。

    「…忘れてほしいし、声真似は全然似てない」
    「そうか?オイラの耳に聞こえるアンタの声はこんなだけど。」
    「そんな猫みたいな声じゃないよ。」
    「へへ、猫みたいなかわいらしい声だぜ。『にゃあにゃあ』」

    あ、駄目だ。
    とフリスクは思う。
    「かわいらしい」という言葉を聞いて全身に喜びが駆け巡っている。
    にゃあにゃあとふざけた声を出すサンズを見られるのはもしかしたら自分だけかもと勘違いしてしまう。

    だからだ。
    だからもう会ってはいけない。
    こうやって上げておいて突き落とされるのだ。

    突き落とされるのはもう嫌だ。
    嫌なのだ。

    「なんでここへ来たの。お城で待ってるみんなと楽しく話してたんじゃないの?」
    ミルクを飲み干して、少し皮肉を口にしてみる。

    「ああ…あの後アルフィーがトリエルにSNSのやり方を教えはじめて、パピルスはアンダインにレスリングやるぞって連れてかれた。だから王様とオイラはひとりぼっち」
    サンズはそう言って両手を上げてウィンクしてきた。
    光景が目に浮かぶようだ。

    「…んで、帰りの遅いアンタはどうしてるかなって思ってさ」

    目をそらして呟かれた言葉にまた心が舞い上がってしまう。

    サンズが「どうしてるかな」って思ってくれた。
    私がいないところで
    みんなと一緒にいるのに
    私のことを気にかけて来てくれた。

    こんな小さなことで舞い上がってしまう。
    この高揚感を、どうやったら「勘違いだった」と忘れられるのだろう。

    「さぁ、もう行こうぜ。みんな待ってる」
    サンズが立ち上がってフリスクのマグカップを片付けようと手を伸ばした。

    だからフリスクはその腕を小さな手でつかんだ。
    布越しに骨の硬い感触が伝わってくる。
    「…ん?」

    からっぽのマグカップに注がれていたサンズの視線が自分に向けられた。
    フリスクの頭はさらに熱く、全身が心臓みたいに脈をうつ。

    「すき」

    その言葉は驚くほど簡単に口からぽろりとこぼれ出た。
    体の中でどんどん作られる熱が言葉になってぽろぽろとこぼれ出してくる。一度こぼれ出したら止まらない。

    目の前のサンズがどんな顔をしていようが関係なかった。
    だって、もう溢れ出るこの気持ちを全部はき出さないと苦しくてたまらない。

    「すき。サンズがすき」

    耳まで赤くなってるのが自分でわかる。視界が潤んで頭が回らない。

    「すき」

    返事はない。
    掴んでいるパーカー越しの硬い骨は微動だにしない。

    だけどこれ以上どうしたらいいかわからない。
    フリスクには言葉にするしか方法がわからない。
    だから言葉に出し続けた。

    「すきなの、すき…」

    それでも、全く動かず声も出さないサンズに、フリスクは少し不安になってきた。
    そっとサンズの顔を覗き込む。

    至近距離で目があった瞬間、弾かれたようにサンズは顔を離した。

    腕は離さなかった。
    離せなかった。
    振り払われは、しなかった。

    でも、サンズの様子を見て不安になったフリスクはゆっくりとその手を離してみた。
    引き下がる気はさらさらないけれど、手を離せばサンズが何か喋ってくれるのではないかと思ったからだ。

    「あー…」
    フリスクから開放された腕はゆっくりとマグカップを持ち上げてサンズは背を向ける。

    「好きね、へへ、そうだな、オイラも好きだぜ」
    フリスクの思惑通り、サンズはいつも通りの口調で話しだした。ペタペタとスリッパを鳴らしてマグカップを台所へと運びながら。

    もしかしてスケルトンには腕を掴むと止まってしまう特性でもあったのだろうか?と思いながらフリスクはその後を追いかける。

    「…そういう好きじゃないの」
    「そういうってどういう?」

    「だから、サンズの今言ってる好きと私の好きは…」
    「オイラの好きとアンタの好きが違うなんて、なんでわかるんだ?」

    「それは…」
    フリスクは言い淀んだ。自分だってよくわからないのだ。わからないけど、多分それはなんか違う。

    手袋を外したサンズは奥からハシゴを取り出してきて、やけに高いシンクをマグカップを持ったままのぼっていく。いつ見ても不便な造りだと思う。

    「それはわかんないけど…なんか違う気がする」
    「ふうん?オイラはなんか違わない気がするぜ」

    洗ったマグカップを置いてベタベタに濡れた手のままサンズが降りてきた。

    「でも」
    「今のところ違うに1票、違わないに1票だな。知ってるか?こういうの水掛け論っていうんだ、ぜ」

    その言葉と共に、骨の手にしたたる水滴がフリスクの顔にビシッと飛ばされた。

    「わっ…!なにするの!」
    「へっへっ、水掛け論だけにな。ちったぁほっぺが冷えたんじゃないか?」
    「サンズ!」

    フリスクも慌ててハシゴにのぼり、上からシンクの水を飛ばす。

    ふたりの顔が共にシンクの水でベタベタになる頃、フリスクの頭からは寂しい気持ちはすっかり消えていた。



    地上の夕日がみんなの頬を照らす。
    サンズの頬を照らす。
    サンズの目はまっすぐ夕日を見つめてこっちを見ない。

    今回ははぐらかされたけど─

    いつか
    いつかこの想いが

    届く日がくるといい

    この体と心が成長して、いつかサンズが私を対等に見てくれる日まで

    「何回でも告白する。ずっと、ずーっと離れてやらない」

    地底の家でしたのとは真逆のケツイを夕日にこめて、フリスクは地上を歩き出した。
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