アラームの音が遠くで聞こえる。まだ寝てたいのに、もう起きなきゃいけないの? 眉間にギュッと力を入れ、腕を布団の外に出して手探りでスマホを探した。いつも確かここのあたりに……。
「うき……?」
「! あ、う、……そうだった……」
伸ばした手は捕まえられて布団の中に逆戻り。隣に寝ていたふーふーちゃんが俺の指にちゅっとキスをして甘い顔で笑った。
「おはよう、浮奇。……まだ寝惚けてるな?」
「ふーふーちゃん……おはよう……、……夢みたいだ」
「夢?」
「だいすき」
「……知ってる」
朝起きて、大好きな人が隣にいる。おはようって笑い合うことがこんなに幸せだなんて知らなかったんだ。
むずむずして、変な顔になるのを隠すために布団を頭の上までかぶったら、「浮奇?」ってからかうように笑う声が聞こえて余計に心臓が痛くなった。好きって何回言っても足りないし、幸せすぎて死んじゃいそう。
「浮奇、まだ起きない? 朝ごはんはいつも何食べてるんだ?」
「ふーふーちゃん……」
「ん?」
「ふーふーちゃんが、たべたい」
「……食べられたい、じゃなくて?」
「食べて」
「顔を見せて。できるだろう? 浮奇」
今すぐ布団を剥いで、キスをしてほしい。でもふーふーちゃんは言葉だけで俺を操ってしまうから、俺は真っ赤になった顔が恥ずかしいのにキスが欲しくて自分から顔を出すしかないんだ。
そっと布団から顔を出すと、彼はニヤリと笑って「よくできました」と囁いた。それから布団の代わりに俺に覆い被さってたくさんのキスをくれる。我慢できずに舌を伸ばしたのにそれを避けるように顔を離し、俺の表情を見て大好きな顔で笑うから、怒るなんてできるわけない。
「ふーふーちゃん……キス、もっと」
「朝から積極的だな」
「だってふーふーちゃんのこと独り占めできるんだよ、特別な朝でしょう?」
「ふ、うん、確かに。オーケー、特別な今日だ、俺は浮奇のワガママを三つ叶えよう。浮奇も俺の願いを三つ叶えてくれるか?」
「うん、なんでも、もちろん」
「じゃあ、ひとつめ。……お腹が空いた、朝ごはんを食べないか?」
「!? 本気で言ってる!?」
「ふ、あはは! 冗談だよ。朝ごはんより先に、浮奇を食べてあげないと」
「はやく」
「それはワガママひとつめ?」
「なんでもいいから、早く俺を食べて」
「……オーケー」
掠れた低い声が耳を撫で、唇が首筋をなぞってく。ゾクゾクする最高の感覚に自分があまりもたないだろうと分かった。一回で終わりかな。もしそうなったら、ワガママふたつめを使ってしまうかも。