Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💞 💯
    POIPOI 288

    おもち

    ☆quiet follow

    Sonnyban。学パロ。当然のようにPsyBorgもガッツリいます。

    #Sonnyban
    sonnyban

    靴箱の中のラブレター、休み時間の呼び出し、極めつけは二人並んで校舎を出た途端に声をかけてくる人。僕は心の中で思いっきり悪態を吐いて、でもそれを悟らせないようにニコッと笑顔を浮かべて見せた。
    「あ、そういえば先生に提出しろって言われてるプリントがあったんだった。ごめんサニー、僕ちょっと戻らなきゃ」
    「え、アルバーン」
    「また後で! もし早めに終わったら連絡するよ!」
    バイバイと手を振って回れ右。サニーと話してるところを見たことがないどこのクラスかも知らない女の子は視界に入れないようにして、僕は校舎に駆け戻った。
    もちろん提出しなきゃいけないプリントなんかない。どこで時間を潰そうかと適当に歩いていて辿り着いたのは、最終下校時刻まで自由に出入りできる図書室だった。誰もいないんじゃないかと思うくらい静かな扉の向こう側、そこにいるはずのその人とくだらない話をすれば今の最悪の気分を少しは誤魔化せるかな。
    「失礼しまぁす」
    小さな声で呟いて扉を開き、中の様子を伺う。貸し出しカウンターの受付に座っていたのは思った通りファルガーで、ほっと息をついたのも束の間、「アルバーン?」と予想外の声が聞こえて僕は図書室の真ん中へ目を向けた。
    「……浮奇、本読むっけ?」
    「失礼だな。読まないに決まってるでしょ」
    「ふは。じゃあなんでここに? って、ファルガーを待ってるのか」
    「そういうこと。アルバーンはなんでここに? サニーは?」
    「……」
    「……喧嘩でもした?」
    「喧嘩なんてしないよ」
    「でも」
    「浮奇、アルバーン、話をするなら外に行け。図書室内は私語厳禁」
    「「……」」
    会話を遮るその声に、僕たちは二人同時にそっちを向いてじっと睨むようにファルガーを見つめた。時計の針が動く音が聞こえるくらいの静寂を数秒味わった後、ファルガーがはぁっと息を吐く。
    「……まあ、他に誰もいないから少しならいいけど。司書さんも今は席を外してるし」
    そう言うとファルガーは読んでいたらしい本を閉じ、受付から出てきて浮奇の隣に座った。まだ入り口に立ったままの僕をチラリと見て向かいの席を指差す。言う通りにしてやるのはシャクだけど、今は大人しくファルガーの言うことを聞いてその席に腰を下ろした。浮奇が珍しいものを見るようにぱちぱちと瞬きをするから少し居心地が悪かった。
    「それで、サニーは?」
    「……知らないもん」
    「いつも二人で帰ってるじゃん、今日も一緒に廊下歩いて行くのを見たよ。どうやったらこの短時間で喧嘩なんてできるわけ?」
    「だから喧嘩なんてしないって」
    「じゃあなんで拗ねてるの? ……あ、待って、わかった」
    浮奇は意地悪くニヤリと笑い、わざとらしく声を潜めて「ヤキモチ妬いてるんでしょ」と僕の感情を見事に言い当ててみせた。ぷくっと頬を膨らませたことでファルガーもそれが当たりだと気がついたらしく目を丸くする。
    「ヤキモチ? あのサニーに? 妬く必要ないだろ?」
    「それ、隣の人にも言ってあげてくれる?」
    「妬かれる側には分からないんだよ。ね?」
    「ね。……サニー、最近、呼び出しばっかりなんだ」
    「「ああ……」」
    どうやら隣のクラスの二人も気がつくレベルだったらしい。ねえ、じゃあ僕がムカつくのも仕方なくない? だって僕はずっとサニーと一緒にいて、何度も何度も会話を遮られているんだ。
    「今までも呼び出されることはあったけど最近は特に多いんだ。全然知らない人たちも告白しに来てるんだけど、あの人たちはサニーの何を知ってるの? 見た目だけで好きだなんて言ってサニーの時間を奪う資格あの人たちにないでしょ」
    「わお……」
    「熱烈だな」
    「揶揄わないで」
    「揶揄ってないよ。本当に……なんというか、……おまえって普段周りにニコニコいい顔して敵を作らないように立ち回るだろう」
    「ふーふーちゃん以外ね」
    「俺はいいんだよ、アルバーンにニコニコされたって嬉しくないし。そのおまえがここまで言うって……そうとう溜め込んでるな?」
    「……大好きな人が告白されまくってたら僕だってストレスくらい溜まるよ」
    「……おいでアルバーン、ぎゅってしてあげる。ハグはストレス発散になるんだよ」
    優しい声に顔を上げた。浮奇は僕に向かって手を広げている。僕よりも小さい体で、でも浮奇は誰よりも大きな優しさを持っている。その腕に甘えたくなる気持ちをグッと堪えてチラリとファルガーを伺った。
    「……彼氏の前で浮気していいの」
    「友愛のハグだからセーフ。それに少しくらいヤキモチ妬かせたいし?」
    「……」
    「……好きにしろ。俺はハグなんてしてやらないからな」
    「おまえからのハグなんていらないよ」
    べっと舌を出してファルガーに顔を顰めて見せてから、僕は椅子から立ち上がり浮奇に近づいた。座ったままの浮奇に覆い被さるようにしてあたたかな体をぎゅうっと抱きしめる。
    ハグをするとなんとかって幸せホルモンが出るんだよね。確かに、黒くもやもやしていた心の中は少し明るくなっていく気がする。浮奇の手がぽんぽんと優しく僕の背中と頭を撫でてくれて、ほんのちょっと泣きそうになった。なんでかな。
    「サニーはアルバーンのこと大好きだよ。誰に告白されてもそれは変わらない」
    「ん……わかってる。全部断ってることも、わかってるんだ」
    「うん。わかってても、嫌だよね」
    痛んだ心を包むような浮奇のやわらかい声に腕の力を強くすると、パシッと手を叩かれた。顔を上げれば目の前にいるファルガーが眉間に皺を寄せている。はっ、おまえもヤキモチ妬いたりするんだ?
    「浮奇、愛されてていいなぁ」
    「え? なにが?」
    「余計なこと言うな」
    「待って何、ふーふーちゃんなんかしてるの?」
    「何もしてない。アルバーンはもう元気になったようだからさっさと外に放り出して来い」
    「もうちょっとハグさせてよ。友愛ならセーフでしょ?」
    「おまえがムカつくからアウトだ。浮奇、手を離せ」
    わちゃわちゃとしたくだらないやりとりに笑い声を溢し、僕はこれ以上巻き込まれるのを避けるためにパッと手を離し浮奇から一歩遠ざかった。僕に掴みかかろうとしていたファルガーが勢い余って浮奇に抱きつき、うわっと言って飛び退く。振り向いた浮奇は逃げる隙を与えずファルガーを抱きしめた。
    「ぐ……おい、手を貸せアルバーン!」
    「お願いの仕方がなってないんじゃない?」
    「チッ……!」
    「あははっ! お邪魔虫はもういなくなるから、あとはお好きにどうぞ?」
    「アルバーン、ちゃんとサニーと話した方がいいよ。思ってることを伝えて、素直に甘えておいで」
    「んー……お手本、見せてくれる?」
    半分本音、もう半分は揶揄う気持ちでそう言い小首を傾げると、浮奇はじっと僕を見つめたあとファルガーの方へ顔を向けて、二人はキスができそうな近い距離で見つめ合った。何をされるのかと警戒しているファルガーは体を強張らせてピクリとも動かない。
    「……我慢すればいいだけだから言わないでおこうと思ったんだけど……隣の席の子にあんまり優しくしないで。何もないことは分かってるけど、でも、……いやだから」
    「……、わかった。教えてくれてありがとう、浮奇」
    浮奇の小さな告白に、ファルガーは僕がいることなんて忘れてそうな甘い声音でそう言って微笑み浮奇の頭を撫でた。友達のイチャイチャなんて最悪だって思ってるけど、それとはちょっと違うかも。どうしてかものすごくサニーに会いたくなって、僕は二人に声をかけることもなく図書室を飛び出した。
    素早くスマホを操作してサニーの番号を呼び出し、出口に向かう足を早める。耳に当てて、コール音一回。すぐに繋がった電話のむこうでサニーがいつもより焦った声で「アルバーンどこにいるの?」と言った。
    「もうすぐ出口! サニーは?」
    「教室。すぐそっち行く」
    「! じゃあ僕が戻る! すぐ行くからそこで待ってて!」
    サニーの方が走るのが早いし、サニーがこっちに来る方がそのまま帰れるし、僕は出口で待って息を整えておいた方がいいかもしれない。でも、どうしても僕がサニーのところに行きたかった。
    階段を駆け上って、転びそうになりながら走って、教室の扉を力任せに開ける。僕の席のすぐ横に立っていたサニーは目を丸くして、それからふわりと微笑み僕に近づいてきた。
    「もう帰っちゃったかと思ったけど、待ってて良かった」
    「はぁ……はぁ……」
    「座って休もう。まだ時間は大丈夫だから」
    サニーにそう言われて、僕はようやくオレンジ色の眩しい夕陽が差し込む教室を見渡した。授業が終わってだいぶ経ったから僕たちの他には誰もいない。繋がれた手を引かれるままに足を動かし、僕とサニーは前後に並ぶ自分たちの席に座った。サニーは僕が荒い呼吸を落ち着けるのを何も言わずにじっと待っている。
    「……サニー、僕、言いたいことがあって」
    「うん。全部聞くから、なんでも言って」
    「……あの、ね」
    ちゃんと言うって決めて走ってきたのに、いざ目の前にすると声に出すのはとても難しい。深呼吸をしてドキドキうるさい心臓を制服の上からぎゅっと押さえた。
    「僕、最近、すごく……嫌だったんだ、サニーがたくさん告白されるの」
    胸の中にずっとつっかえて心を蝕み続けた感情を言葉にして吐き出し、僕はサニーの反応を見るのが怖くて視線を落とした。僕の机の上、サニーと繋がったままの手にわずかに力を入れて息を吸う。
    「サニーにその気がなくても近づいてくる人はいるし、どうしようもないって分かってるんだけど、……サニーとの時間を邪魔されてるみたいに思って、嫌だった。わがままでごめんね」
    「……全然、わがままなんかじゃないよ」
    するっと手を動かして、サニーは指を絡めて手を繋ぎ直した。「アルバーン」と優しく名前を呼ばれ、反射的に顔を上げる。
    「告白を断る時に、付き合ってる人がいるからって言ってもいい? そうしたら勝手に女子同士で広めてくれるだろうから、告白してくる人も減ると思う」
    「……う、ん」
    「ありがと。だからアルバーンも、告白されたらちゃんと付き合ってる人がいるって言って断って?」
    「……サニー」
    「うん」
    「……ずるいよ。……僕、サニーの恋人?」
    僕はサニーのことが大好きで、サニーが僕のことを好きなのも分かってる。でもそれをきちんと伝えあったわけでもないし、キスをしたこともない。手を繋ぐのは友達と恋人との間をふらふらするみたいに曖昧なことだ。はっきりと言葉が欲しかった。大好きと、目を見て伝えたい。
    ぎゅっと目をつむり溢れてきそうになる涙を引っ込めてから、僕はサニーのことをじっと見つめた。ねえ、僕は、サニーの何になれる?
    「……俺と、付き合ってくれる? 他の誰にもアルバーンを取られたくないから」
    綺麗なブルーの瞳が僕のことだけを映してる。クールに見えるその表情が、本当はすごく緊張してる顔だってことを知ってるのは僕だけがいい。
    「うん! 大好きだよ、サニー!」
    サニーが可愛いって言ってくれるとっておきの笑顔でそう言うと、サニーは目を見開いて一瞬固まり、ガタッと椅子から立ち上がって身を乗り出した。伸びてきた腕が僕の肩に触れる。机を挟んでいるせいで不恰好だけど、サニーの静かな呼吸音が耳元で聞こえて抱きしめられているんだって分かった。
    「俺も、大好きだ……!」
    切羽詰まったような余裕のないその声に心臓が飛び出そうなくらいドキドキして、声の出し方を忘れちゃった僕は無言のままこくこくと頷いた。ありがとうと伝えるために頬を擦り寄らせるとサニーは腕の力を強くする。今度こそ溢れた涙が見つかってしまわないように、僕はサニーの背中に手を伸ばした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖😭😭😭👏👏👏💖💖💖👏👏👏💴😭👏💯❤💒💖💖💖😭😭😭😭😭👏👏👏💖❤💖😭👏💖🌠❤❤😭😭😭😭☺☺👍👍😊😊💘💘💘💯💯💯😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works