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    na2me84

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    フォロワーさんとお話してた、冥食を食べ過ぎて冥食になっちゃった暁人くんのお話を書いてみました。最後まで書くとZ指定になっちゃうので、途中までです。若干ですが、カニバリズムっぽい表現があるので、ご注意下さい。若干です。

    #K暁

    捕食 人の身体は食べたもので作られる。

     そんな言葉を聞いたことがある。あの夜、俺が取り憑いた相棒は、怪異たるマレビトと戦い、そのダメージから回復するために普通の食べ物だけではなく、冥界の食べ物をも口にした。半分死んだ身体で、それらを大量に摂取した結果、あいつの身体は向こう側の存在へと傾いてしまったらしい。それも、ただ冥界側に寄ったのではない。冥府の者の糧になる身体、要するに連中の餌として、だ。見た目も人格も何一つ変化はない。ただ、怪異連中にとって『美味そうな』存在になってしまったのだ。あの夜、般若を阻止し、何があっても生き抜くと家族に誓ったあいつにとって、あまりにも皮肉な運命だろう。あの時からあいつは、捕食対象として、執拗に怪異たちから狙われるようになった。

     あの夜に死んだはずだった俺の方は、なんの因果か普通に体を取り戻してこの世に舞い戻ってきた。それならば、俺があいつを捕食者どもから守ってやればいい。あいつの受難は俺のせいなのだから。そう思っていた俺は、世の理を甘く見過ぎていた。反魂した俺が、今までと同じようにいられる訳がなかったのだ。



     暗がりから暁人の首に伸ばされる腕。匂いを嗅ぎ付けてきたのだろう、ぬらりと現れた裂けた口からは待ちきれないとばかりに、涎が垂れている。背後の気配に気付いてもいない暁人の腕を掴み、自分の方に引き寄せる。
    「ぼけっとしてんなよ…!」
    獲物を掴み損ねた腕は、即座にこちらを狙って来た。人間ではあり得ない距離まで長く伸びると、鋭い鉤爪で俺の首を掻き切ろうとしてくる。敢えて前に出て、暁人を後ろに下がらせると、首に刺さる寸前の手首を掴む。そのまま力をいれると、枝が折れるような乾いた音がした。意外と脆いな、と思いながらそのまま手首を横方向に90度曲げると、さらに音が響いて、凄い勢いで振り払われた。離すと腕は引っ込んでいった。大きな目には不釣り合いの小さい瞳孔でこちらを睨む敵は、ざんばら髪に裂けた口、餓鬼のような膨れた腹をして、垂れた腕は手のひらが地面に着く程長い。威嚇するように低い振動音を鳴らしている。
     
     俺の肩越しに暁人が様子を伺うと、振動音は大きくなり、先程とは反対の腕が暁人に向かって伸ばされる。
    『美味ソウ……喰イ…タイ…喰ワ…セロ…!』
    裂けた口から擦過音と共に漏らされる言葉に、暁人がびくりと肩を震わせる。舌打ちし、右手を振ってワイヤーを奴の腕に巻き付け、ぐいと横に引くとバランスを崩して、動きが止まる。振り返って暁人に離れるよう指示すると、暁人は素直に俺から距離を取る。丸腰で怪異に向かう程愚かではない。
    「こいつは俺のもんなんでな、てめぇなんぞに喰わせるわけにはいかねぇんだよ」
    一瞬、よろけた敵はそのまま四つん這いになると、長い腕をたわめて跳躍し、俺を目掛けて跳んでくる。まるで蛙だな、膨らんだ腹にぶち当てたエーテルが水飛沫をあげるのを見て思った。露出した核を腕を突っ込んで握り潰す。断末魔まで蛙の鳴き声に似ていたので、やっぱりあれは蛙だったらしい。

    「KK!大丈夫?怪我はない?」
    蛙が消えたのを確認すると、暁人はすぐに俺に駆け寄ってきて、そっと首に触れて喉元に傷などがないか確認する。
    「別に怪我なんかしてねぇよ」
    俺が言うと、暁人はほっとしたように息を吐いて、触れていた手をそのまま、俺の首に回して抱きついた。
    「良かった…」
    耳元で声が聞こえて、柔らかい髪が頬を擽る。触れ合う体温を逃がさないように、俺も暁人を抱き締めた。
     
     ふわりと香る匂いに視線を落とすと暁人の首筋が目に入る。男にしては艶かしい首は、しっとりと水気を含んだような張りのある肌の下に、青年特有のしっかりした筋肉を忍ばせ、脈打つ心臓から送られる新鮮な血液を巡らせている。薄い皮膚を食い破れば、そこには滴る血肉が。
    「…KK?」
    ごくり、と喉を鳴らした俺に暁人が声をかけた。
    「……大丈夫?」
    心配そうに俺を見つめる瞳に不安の色が見える。
    「…大丈夫だ。…おまえは何も心配すんな」
    ぐしゃぐしゃと乱暴に頭を撫でると、俺の肩に頭をのせて強くしがみついてくる。
    「離れないでよ、KK。ずっと、僕と一緒に居てよね。……お願いだから」
    俺は答える代わりに、抱き締める腕に更に力をいれる。絶対に離したくないという想いを込めて。

     こんな俺を信じて、共に居たいと願ってくれるおまえに言える訳がない。こうして抱きしめてる間も、おまえが俺の視界に入っている時も、別々に離れている時でさえも、おまえの事を文字通りに「食いてぇ」と思っている事など、言える筈が無い。おまえを守るはずの俺が、化け物共と同じように、自分を捕食したいと思ってるなんて、想像もしていないだろう。いつまで俺が、この欲求に耐えられるかは分からない。それでも、俺はあいつから離れる事は出来ないし、あいつだって俺からは離れられない。

    「KK、大好き、愛してる」
    俺の腕の中で暁人が囁く。甘い、幸せそうな声で。
    「あぁ、俺も愛してるよ、暁人」
    そう返す俺の声も、吐き気がする程に甘い。
    この感情の名前は、本当に愛なのだろうか。
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