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    Drowning_peach

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    Drowning_peach

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    プロム行ってない💜の話からした妄想。
    🧡💜は双子。毒親育ち。
    プロムの話。🧡+💜
    ぜーーーんぶ妄想

    #Myshu
    #Shusta

    双子のプロム🧡💜プロム🧡💜
    日が傾いた頃に浮き立つ足が次々とパティー会場に吸い込まれてゆく。着飾った生徒――いや卒業生たちが高揚した気分もそのままに彼らの未来の華々しさを魅せるように、或いは願うように飾り付けられた高校生活最後の祭りへと赴く。
     
     シュウはいくつかの誘いを断ってプロムの会場を傍目に校舎を歩いていた。
     人生が山と谷で出来ているという人がいるが、の高校時代はまさに山の頂きと谷の底を行き来したようなものだった。
     決して楽なものではなく、山の最果ては途方もなく寒く、谷の最奥は激流による歓迎が待っていた。長い目で見ればそんな苦難も笑えるものなのだろうか。
     
     シュウはその長いまつ毛の影を頬に落として陽気な音楽を背に遠のく。プロムへの誘いを断ったのは「何となく」と「行かなくていいかな」と「僕だけ?」という理由だった。シュウが高校生活を続けていられたのは双子の兄弟がいたおかけであった。
     あぁ、早くあの安心する顔を見たい。
     堅苦しい式典は終わったのだから、早く帰れば良いのだが。
     シュウがそう出来ずにいたのは校舎と兄弟の思い出が降って湧いていたからだった。校舎の壁につけた傷は上からペンキが塗られているが花火の光に照らされて影を強く見せる。ここには兄弟、ミスタも通っていた確然たる証拠があった。彼が通ったのは一年にも満たなかったが。
     シュウは比較的真面目に過ごしていたが、兄弟のミスタはそうではなかった。やれ授業を抜け出そうと言ったり、居眠りの常習犯だったり、宿題の多くはシュウのものを写していたし、弁当はいつも人より早く食べていたり。

     「僕より、ミスタの方が学校生活楽しんでたよきっと」

     シュウの小さな呟きは花火の音に掻き消えた。
     景気の華やかな夜の火花がシュウの影を濃くする。
     
     この日は出来れば、ミスタと迎えたかった。血を分けた兄弟、辛いことも楽しいことも一緒にしてきた。
     授業を抜け出したのも、勉強を頑張ったのも全部ミスタと一緒が楽しかったからだ。
     友人がいなかったかと言うとそうでもなかったし、ミスタが中退してからシュウはミスタがいたらと――「そうあれ」と過ごしたおかげで少しは退屈しないものになった。退屈しなかったのはクラスメイトでは?とも思えるが、それはこの際気持ちのいい思い出にしてしまおう。
     クラスメイトたちとの関係は悪くないが、良くも悪くもあまりにも薄く淡い関係でプロムを断るとやはりそれで終わった。シュウに後悔はないが、引っかかるのはただ兄弟のことだけだった。
     さて、花火も目に焼き付けたし。ミスタがキッチンを爆発させる前に帰って夕食にしなくては。今日は少し奮発しても良いだろうか。シュウの卒業は、ミスタの卒業でもあるのだから。
     シュウが踵を返すと、目の前に見慣れたアッシュグレーが飛び込んでくる。

     「シュウ!まだ居た!」
     「え……?」

     目の前に居たのは自宅で自分の帰りを待つはずの兄弟――ミスタだった。
     朝、卒業式が終わったらなるべく早く帰るね、待っててねと伝えたし、ミスタはそれに「わかった」と返事をした。
     なぜ、ここに?

     「へへ、忍び込んだ!よく抜け出してた穴あったろ?生垣の。あそこまだあってさ、先生花火とプロムに必死だから簡単だった」

     歯を見せて笑う。喧騒も、煩わしさもミスタと一緒なら派手なBGMになる。シュウは今日やっと声を出して笑った。

     「んへへ、なにそれ。葉っぱいっぱいつけてさ」
     「うっそ!?結構はたいたのに!」

     一枚、一枚と葉をとりながら怪我がないか確認する。小さな擦り傷は愚か服にもほつれがない。上手く穴を抜ける技術は衰えていないようだった。
     ミスタは、大人しく目を瞑って少し屈んだ。
     シュウはいつもそうすると「別に僕背低くないんだけど」と憤ったが今日はそうでもなさそうで、にやける口元を抑えられずにいた。
     入学式の際には同じほどだった身長も双子の割に差ができた。今では、ミスタの方が4cmほど高い。

     「なに?くすぐったい?」
     「違う!違うけど、別に知らなくていいから大丈夫」

     そう、別に知らなくても良い事だ。ミスタは何となく、得てすぐの少しの優越感を胸にしまった。
     そしてまぁ、隠せてもいなかった大きな紙袋を突き出す。有名な仕立て屋の名前がパッケージに入っていた。
     シュウは「うちに、こんな紙袋あったっけ?」と思いつつ素直に聞く。

     「なにこれ?」
     「プロムの着替え!俺のへそくりから出した!」
     「……は!?なにそれ!聞いてないんだけど」
     「まてって、待てよ!ちゃんと見て!」

     怒んないで!と締め括られた耳を疑いたくなるような言葉を聞いたあと、シュウは一度諦めて袋を覗き込む。するとどうだろう、袋には2つ包みがある。ムラサキ色のリボンと……オレンジ色のリボンて飾られた箱。

     「もしかして」
     「そ!俺と二人分!」

     ――――

     採寸を行っていないはずなのにピッタリのジャケットがくすぐったい。
     スタンダードな背広は2人が持ち主だときちんと物語っていた。襟から袖、裾まで2人の体にきっちり合わせて作られている。
     ミスタのこだわりだろうか、スラックスの裾とジャケットの袖に濡れ羽色の糸で刺繍が入っている。

     「これ、どうやって注文したの」

     2人は花火が遠目に見える空き教室で着替えていた。
     音が聞こえる程で、光はほとんど見えず空が照らされていることが分かる程度離れた場所。2人が一年生の時共にすごした教室だった。

     「んっと、」

     とミスタは両手を突き出す。腕を指さして

     「手がこれくらいの長さで」

     右手を指していた左手がそのまま右手と共に輪を作る。

     「ウエストがこれくらいで」

     左手がミスタの喉にかかる。

     「首はこれくらいで」

     続いて両手を伸ばして隙間を作って

     「胸がこれくらいの厚さって伝えた」
     「……仕立て屋さんの腕が良かったのがすごくわかる話だよ」
     「まじで、めちゃくちゃいいおじさんだったよ!」

     慣れないシャツに蝶ネクタイが気持ち悪いけど、と赤い舌を出したミスタにシュウが言う。

     「似合ってるよ、ミスタ」
     「いや、シュウに合わせたからさ!似合っててほんと良かったわ!いやこれ、高……くなかったから大丈夫」

     ミスタが、下手に誤魔化す。目が空を向いて泳ぎ口篭る。
     シュウとて馬鹿ではない。親はとんでもない人だったが、そもそも両親は裕福で2人ともそこそこに善いものを身につけて幼い頃生活していた。
     シュウはその頃の布の触り心地くらい覚えていたし、今自分の身を包むジャケットがそれと同じか、それに似た手触りなのも分かっていた。
     そう、とても高価なものをミスタは二着準備していた。ただでさえ生きていればお金がかかることばかりなのに。
     
     「……あのさ」
     「まって、シュウ違うよ。お金の話するなら、お金じゃないから、こういうのってさほら、愛だよ愛!俺自分にも愛注いだんだ、あははは!」

     それに、双子は揃ってなきゃってシュウよく言うじゃん。とミスタは左手を差し出す。

     「Shall we dance」
     「……Sure, I'd love to.」

     空を殴るような花火の破裂音と、あまりにも遠鳴りのパーティーミュージックを背景に踊る。
     履きなれない革靴が痛くて途中で素足になった。
     互いの足を踏んで笑って、ミスタが買ってきていた軽食を2人で食べる。
     2人っきりのプロムは月明かりと色鮮やかな空を焼く煙が照らしていた。強い風がカーテンをゴウと持ち上げる。
     それとなく整えた2人の髪が乱れて笑い声が廊下まで響いた。暗がりを明るくするスマホのライトは必須だった。ミスタはシュウがいるから怖くないと言ったが明るいことに越したことはないからと2つ懐中電灯をつけた。
     踊って笑って、ふざけて手を繋いでなんて楽しいプロムだろう。
     シュウはプロムなんて断ってよかったと心から笑う。
     ミスタは頑張って働いたかいがあるとシュウの姿を目に焼きつける。
     シュウの笑顔はミスタの喜びだったし、ミスタの笑顔はシュウの幸せだった。
     幾分そうしていただろう、2人の祭りは唐突に終わりを告げた。
     
     「誰かいるのか!」
     「やっべ!」
     「もしかして逃げる奴?」
     「全力でな!」

     荷物を紙袋に雑に詰め込んで手を繋ぐ。
     手の大きさはミスタの方が少し大きく握る強さはシュウの方が幾分か強い。

     「こら!逃げるな!」
     「そう言って逃げない奴がいるかよ!」

     ミスタが振り返って舌を出す。
     警備員は弾かれたように声を荒らげた。懐かしく可愛らしい不良生徒との再会だった。

     「ミスタ・リアス!?」

     革靴がかかとに刺さり、つま先から確実に出血を感じる。それでも2人は走る。
     今掴まってしまってはこの祭りの終焉が最高に似合わないものになる。
     走って走って、消した2人の手は離さず。
     乱れた息すら2人揃って、まるでひとつの生き物みたいだと双子は思った。

     「もうちょい、校門、でたら、諦めるだろっ」
     「しつ、こい!」

     警備員からすら笑い声が聞こえてくる愉快な追いかけっこが終わったのはちょうどプロムの終わりと同じ頃。
     会場からでてきた赤い頬達が門の前、そこらじゅうに出てきている頃だった。ミスタとシュウを隠すのにはあまりにも最適な場所だった。
     走る足を弛めて2人して上がった息を整えながら歩き続ける。
     時折かけられる声をあしらって突き進む。これからの人生できっともう関係の無い人々。
     ミスタが辞めても、シュウの人が変わっても何ともしなかった刹那主義者たち。

     さらば愛しの学び舎よ。


     ――

     2人の足は絆創膏まみれになっていた。
     プロム用に履き替えた白い靴下を脱いで、素足で人気のない浜辺に腰を下ろす。

     二人の住む街には小さな海岸があった。夏になると海水浴客で賑わう海浜は大きな月に照らされさながら砂漠のごとく白く輝いていた。

     「あいつしつこかったなー」
     「ミスタと仲良かったもんね」
     「あれは仲良いとかじゃなくない?」

     ミスタの投げ出した足を風が撫でる。
     シュウは膝を抱えて座り、座り方ひとつ喋り方ひとつ持ってもこんなにも違うものかと兄弟を眺めた。
     さっきはあんなにお揃いって言う感じだったのに。

     波の音と雲ひとつない満月。命の母たる海は双子の話に邪魔をするつもりは無いようだった。静かな波音が2人を包む。
     おもむろに口を開いたのはミスタだった。心地のいい沈黙が終わった。

     「学校では聞かなかったけどさ」
     「ん?」

     波が砂を動かす。ミスタもモジモジと足を動かして砂を掻いた。
     風に揺らされる髪をウザったそうにかきあげたミスタは続ける。

     「会った時クソつまんなそうだっけど、学校楽しくなかった?」
     「そんなことないよ!」
     
     シュウは大きなアメジストを見開いて否定する。弾かれたような動きにミスタの肩はビクついた。ミスタは歯を見せて笑う。
     そんなことないけど、ミスタが居なくなってからも同じことが言えるか?と問われれば少し悩むことになる。
     
     シュウとミスタは学校に通い続けるための選択肢として「どちらかが稼ぐ」を必ずどちらかが選び取らなければならなかった。選んだのはミスタで「俺学校苦手だし、勉強好きじゃないし、働くよ。シュウいっぱい勉強していい大学でも行けるように俺がしてやるからな!」とそういった。
     初めて、2人で同じことを出来なくなった。
     お揃い、で育った2人箸もめての分岐点だった。
     シュウはミスタの稼ぎで辛うじて高校に通い続けたために、楽しくなかったとは口が裂けても言えない。
     ミスタがいた方がもっと楽しかったよ、なんてとんでもないわがままでエゴだ。
     こういう時に双子というのは厄介だと感じる。ミスタはシュウの考えを大抵予想出来たしそれはほとんどの場合当たっていた。それはシュウも同じであったがミスタの方が得意だっただろう。
     どんな嘘でも大抵見破られてしまう。
     ミスタは目を細めながらシュウの気まずそうな顔を見つめる。もはや言葉入らず真実はただ波の音だけでいいだろう。

     「へへ、なぁ、終わったことだよ、シュウ。もしかして、塩水って傷にしみる?」
     「痛いと思うけど、どうして?」
     「せっかく海だからさ!」

     ミスタが波に向けて走り出す。片足が海に浸かった瞬間にいってぇー滲みる!と叫ぶ。
     その声の大きさのままに。

     「シュウ!卒業おめでとう!」

     なんて眩しいのだろう。
     シュウにとってミスタはいつまでもキラキラと輝く導き星だった。
     君とこれからも笑っていたいな、シュウは思ったことはきっと伝わる同じことを思ってるとその言葉を胸にしまった。

     「ミスタも!」

     走り出したシュウはミスタの両腕の間に飛び込むように海に飛び込む。
     浅瀬に尻もちを着いたふたりは塩水を被って大いに笑った。
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