龍陽の契り 龍陽の契り
──身体が輪郭を無くし、海に溶ける。まるで海月のように浮き沈みを繰り返しながら夢の狭間を漂う。ふと目の前を、一片の楓が舞う。手を伸ばすと、それは泡のように霧散した。
──瞬間、視界が白く塗り潰される。
目を開けると、眼前には海の中を模したような壮大な景色が広がっていた。柔らかなさざなみの音が響き、濃藍の空に満月が浮かぶ。その月明かりは、まるで見守っているかのように傍らに立つ人影と丹恒を照らしていた。
「──緊張しているのか?」
隣から声が聞こえた。その声は驚くほど優しい。こちらを気遣うような気配で、それが少しくすぐったい。
「緊張していないと言えば嘘になる。……けれど二人でなら、必ず使命を果たせると信じている」
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