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    aya.t

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    aya.t

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    こっそりツイッターにあげてたシリーズ。ちょっと直してちょっと(?)加えました。全方面からのブーイングが聞こえてきそうです。長い!タグは青薪。これで青薪タグ付けたら詐欺だよ?と言われましたが そんな事はない‥と思う‥。多分 あげた後も直しが入ります。やり過ぎました。削って元に戻そうかな。色々 すみません🙇‍♀️

    #秘密
    secrets
    #青薪
    AoMaki
    #薪剛
    Maki Tsuyoshi
    #タジク
    tajik
    #青木一行
    Aoki Ikkou

    単なる遊び‥この玄関を開けるのも もう慣れた。
    居心地の良さと ほんの少しの後ろめたさとも言える逡巡。初めて訪れた時に感じたその比重がいつのまにか逆転しかけているのに戸惑う自分がいる。
    そして新しく加わった更に戸惑う感情。‥それは期待とも呼べるもので。

    青木とは望めない この男が与えてくれるこの部屋での時間を望んでしまっている僕がいる。


    「薪さん いらっしゃい。お待ちしていました。」

    僕を招き入れるタジクに続いて部屋に入る。
    咄嗟に俯いたとはいえ 僕の瞳に宿る期待は 押さえ切れない欲求は、きっとこいつにはお見通しだろう。
    僕が おまえの僅かに弾んだ声にそれを聞き取ったように。
    ‥そう。僕らはお互い似た物同士で。
    丁度いいんだ‥。たまに息抜きをする相手として。──相性がいいんだ。

    心の中で ここにはいない男に言い訳をしている。そんな事をしても後ろめたさが無くなるわけでも無いのに。

    おまえでは得られない刺激。

    ‥青木の目を盗むようにしてのこの部屋への訪問をやめられない僕は ──自分の欲求に抗えない弱い人間だ。

    「飲みますか?」

    「少しだけな。‥あんまり飲むと‥‥出来なくなる‥」

    「そうですね。」
    くすっとタジクが笑った。

    「飲み過ぎると感覚がどうしても鈍くなりますからね。 それにしても、前回の。 よっぽどお気に召したんですね。こうやって日を置かずやって来て下さるなんて。いや、正直 貴方はお好きそうだと常々 思っていたんですがね。」

    そんなにあからさまに 僕はそんな風に見えるのか。

    「あの泣き虫の彼とはちょっと楽しめないでしょうしね。」

    青木には‥。青木としたいのはそんな事じゃないから。そんな事しなくたってあいつといればそれだけで‥。

    「あなたの嗜好にあの坊やでは応えきれない。だから貴方はここに来た。‥認めてしまいなさい。あの坊やでは物足りないって。俺としたい って。」

    耳元で囁かれる。‥絶対わざとだろ。性悪め。

    「あいつの事はいいだろ? やるのか?やらないのか?」
    睨みつけてやる。

    「ゾクゾクしますね。貴方のその勝ち気な目。いつまでそのままでいられるか‥。」

    グラスを置いたタジクがクローゼットの扉を開ける。中から取り出した物を見て一瞬 固まる。

    「‥‥。」

    「どうです?この前 貴方がお気に召したようだったので極上品を購入しておいたんです。 貴方と楽しむ為に。 前回のは初心者用で導入としては充分でしたが、ちょっとチャチでしたからね。これは‥本格的でしょ?」

    本格的も何も。見るからに 熟練したその道のプロの手による品だと分かる。

    「わざわざ買いに行ったのか?」

    「まぁネットでも買えますがね。実際に実物を見て買いたかったし、色々、やり方やコツなんかも聞けて 勉強になりました。 宣伝も看板も出していないけどその道では有名な店でね。他では手に入らないようなマニア垂涎の品物が手に入るんです。中には年季の入ったモノもあって。」

    「‥物好きだな。そこまでしなくても。」

    あぁ こいつはそういう奴だったと思い出す。僕と楽しむ為なら労を厭わず 興味の赴くまま財布の紐を緩める物好きな奴。
    さっき クローゼットの奥に 先月まで散々2人でのめり込んで楽しんだ物がチラッと見えた。
    クリスタル製の精巧な作り物。‥何もクリスタル製である必要はなかったのに。


    「美しいでしょ?」
    それを初めて僕の前に差し出した時 こいつは言った。
    その時も僕は呆れながら
    「物好きだな。別に美しい必要はないだろ?要は使えればいいんだから。」と言った気がする。

    「又 あなたは‥。あなたがこれを手にして動かしているところを想像してご覧なさい。このクリスタル製の精巧な芸術品とあなたの手‥」
    うっとりとタジクが囁いた。

    「‥馬鹿か? 観賞用じゃなくて使用目的がはっきりしている実用品だろ?使えりゃいい。 第一 割れたら危ないだろうが。」

    「割れませんよ。」
    くすっとタジクが笑った。
    「その為に作られた物なんですから。普通に使う分には。でも‥‥そうですね。貴方が興奮して我を忘れたりしたら‥有り得なくはないですね。」

    ‥貴方は夢中になると 人が変わったように熱くなるから‥。
    ──我を忘れた貴方の手に握られたコレが 割れて粉々になって 貴方の身体を傷つける。貴方の体の奥深くに食い込むガラスの破片。血を流して痛みに苦悶する貴方‥。
    救急車呼ばなきゃ ですね。
    病院で。 きっと全身麻酔じゃないから 貴方は意識のある状態で 医師が貴方の体からガラスの破片を一つずつ取り出すのを見る事になるのでしょうね。

    楽しそうに妄想に耽るタジク。

    勘弁して欲しい。そんな事になったら恥ずかしくて憤死しそうだ。我を忘れてそんな事になったなんて‥。青木に知られたら‥。

    クリスタル製の精巧な作り物。
    施された細工は確かに芸術品と言ってもいい程で 流れるような曲線 筋の入り方まで 本物の質感を伝えていた。

    「冷たそうだな‥」
    「やり始めたら気にならなくなりますよ。」

    ‥僕はもう したくてたまらなくなっていたのに こいつはわざと僕を焦らして。
    それも 優位にコトを進めたいコイツの策略だと分かっていながら タジクの手が弄んでいるクリスタルに我慢出来ず、僕はあいつが望む台詞を口にした。
    「焦らすな。早く‥‥! もう我慢できない‥」

    してやったりのタジクから 乱暴にそれを取り上げて。

    取り上げたそれは やっぱりひんやりと冷たかったけれど。 タジクの言う通り すぐに気にならなくなった。
    僕らはあっという間に熱く燃え上がったから。
    僕の手によって動かされるクリスタル。
    他に何も考えられなくなって 夢中で動かした。

    「薪さん。そんなに熱くならないで‥。もっとゆっくり楽しみましょ?」

    待てない!早く‥早く!とタジクを急かして。 ゴールへと向かって それだけを追い求めて。
    早く 早く!タジク 来て‥!ここに。
    ここにおまえの‥!

    タジクの動きと僕の動きが慌ただしくなって もう冷たさなんて感じられなくなって。
    熱くなったお互いがスパークするようにぶつかり合って。

    僕の手が、タジクの手が握り込み、追い詰め追い詰められ 夢中になって動かしたそれは 今はクローゼットの奥に放置されている。

    思い出したらちょっと興奮して 身体の中を言いようのない痺れが走った。‥いずれ又 使いたい‥。いや、きっと又 僕らはそれを手にするだろう‥。


    でも、僕は今、僕の前に差し出された新しい玩具に目が釘付け。

    「せっかく貴方とやるんですから 吟味した物を使いたい。 やっぱり拘りたくなっちゃいますよ。
    楽しみましょう。一緒に‥。
    さぁ。時間がもったいない。始めましょうか‥」

    タジクが近付いてきた。
    僕とタジクでは体格差があるから 支えきれずに思わずよろめく。
    「重‥い。」

    タジクはいつものように黒のVネックを着ていた。身体のラインを見せつけるようなぴっちりとしたサイズ。
    別に筋肉フェチじゃないけど 仕事をしている筋肉は好きだ。

    「触って」
    タジクの手が僕の手を誘導する。

    「硬い‥」

    くすっと笑われた。
    「お気に召しましたか?」

    「‥‥楽しい夜になりそうだ。」
    期待に思わず 全体を撫でるように触っていた指に力が入った。

    「夜は短い。早速始めましょうか‥」

    ピシッ。
    タジクが試し打ちをする。

    いい音だ。わざわざ買いに行ったというだけある。マニア垂涎という品物に間違いはないのだろう。前回使ったのとはまるで違う。思わずうっとりとしていたら、
    「ほら。始めますよ。集中して。」
    と いう声と共にいきなり

    ピシッ!

    「あ‥」

    ピシッ!

    (そんな所に‥!)

    一方的に攻めたてられる。
    攻めたてられて僕の奥深い所に火が灯る。‥ゾクゾクする。やっぱり僕はこういう事が好きなんだと自覚する。

    「その目。その挑むような目がたまりませんね。」

    緊迫した空気の中での興奮に伴い お互いの顔が紅潮していく。思わず息を詰めていた事に気付き ほぅ‥と 溜め息を吐いた。

    「おまえ。ずいぶん。‥この前の時から比べると手慣れてないか‥?」

    「貴方をがっかりさせるわけにはいきませんからね。あれからネットを駆使して研究したんですよ‥。ここなんて どうですか?」

    ピシっ!

    ‥思わず顔が歪む。

    タジクが容赦なく僕を攻め続ける。

    ‥どの位時間が経ったのだろう。
    僕は夢中でタジクに縋っていた。 2人で作り出す世界を全神経で味わっていた。深淵な宇宙の中に2人きり。誰も入ってこれない。タジクがもたらす全てが刺激的だった。僕の弱い所を的確に探り当てて攻めてくるタジク。

    今日は一方的に攻めたてられて ‥はっきり言ってもう‥‥。でも‥!

    「そろそろ終わりにしますか?」

    タジクが終わらせようとしている。

    「や‥ヤだ!まだ‥。まだ終わりたくない!」

    タジクと作る世界 2人で作る世界 まだ もう少し‥。

    「やだって‥。仕方のない人ですね。あなたって人は‥。俺だってもう少し楽しみたいのはヤマヤマですけどね。」

    ──その時 床に放置したスマホが鳴った。聞き覚えのある着信音。
    発信者名の表示は「青木」

    タジクとの時間に夢中になっていて気付かなかった。膨大なラインメッセージを告げる通知。

    「出なくていいんですか?」
    にやにやしながらタジクが聞いてくる。

    出れるか!こんな状況で。
    今 出たら。きっと手も声も震えてしまう。タジクにいいようにされている弱い自分が不甲斐なくて。

    それに、
    まだ終わらせたくない。まだ‥。タジクとのこの時間を。
    攻めたてられて満身創痍なのに まだ終わりたくないと取り縋っている。
    ‥ごめん。青木。おまえが好きだ。でも。
    今 目の前にある タジクと2人きりの世界を‥おまえにも 邪魔されたくない。


    ドンドン!

    玄関から大きな音。

    「薪さん。薪さん!いるんでしょ⁈」
    青木の声。あぁ そうか。LINEに反応が無かったから きっと心配して。

    ドンドン!

    瞬間的に我に返った。思わず身体が強張る

    「おやおや。良くここが分かりましたねー。流石 犬と呼ばれるだけの事はある。」

    ドンドン!「薪さん‼︎」

    「あーあ。ご近所さんから苦情が来ちゃいますよ。しょうがないなぁ。」

    タジクが立ち上がって玄関に向かう。

    「待って!やだ。見られたくない!」

    「見られたくないって。仕方ないでしょ?貴方が自分で蒔いた種なんですから。」
    鼻歌でも歌いそうな様子で玄関に向かうタジク。
    ‥‥見せつけたいんだ‥。青木に。
    唇をかむ。

    バタン!

    玄関の開く音に続いて 廊下を走ってくる音。

    「薪さん!」

    思わず顔を背ける。

    ‥おまえには見られたくなかった。

    「‥薪さん‥」

    僕の惨状を目の当たりににした青木が、 全てを悟った青木が 言葉を失う。

    「そんな‥。薪さんが。‥どうして?」

    にやにやしながらタジクが答える。
    「あなたじゃ薪さんを満足させられないから 薪さん俺とやりに来たんですよ。今も、まだ終わりたくないって駄々こねて。」

    「だからって 薪さんがこんな状態に!」

    「薪さんの為にオレも一生懸命研究しましたから。」胸を張るタジク。

    「青木‥」
    狼狽と羞恥 見られたくない姿を見られたショックから立ち直った僕は それでも震える声で呼びかける。

    「おまえ この状況が把握できて?」


    「分かりますよー。この前 薪さんがすんごく楽しそうに タジクさんと勝負して勝った話して下さって。おまえはあんまり向いてなさそうだなぁ って残念そうに仰って。俺 薪さんのお相手が出来るようにあれから勉強したんですから!」

    そんな事 言ったっけ?
    前回 お互い初めてやって 僕が勝ったんだよな。タジクは悔しがって 僕は気分よく帰宅した。

    「もう これは薪さんのぼろ負け。終わりたくないとか駄々捏ねられる盤面じゃありません!終わってます!」

    もう! 帰りますよー。この前までチェスだったのに、今度は囲碁ですか?次は将棋とか言い出すんでしょ?もう 薪さん お好きなんだから。確かにネット相手にやるより人間相手で しかもタジクさんとなら楽しいでしょうけど。

    ぶつぶつ言いながら ぼろ負けして打ちひしがれている僕を青木が立たせる。

    ついでに 碁石を片付けて碁盤ごと持ち上げた。
    「重っ。それにこれ何の木で作られてるんですかー? 硬いですねー。」

    タジクさん、これ何処に片したらいいんですかー?これそのままだと 薪さんもうひと勝負とか言い出しそうだから 仕舞っちゃいますよー。
    あーあ。何ですか。コレ?クリスタル製のチェスセット?
    こんなに綺麗だったら仕舞い込まずに飾っておいたらいいのにー。

    サクサク片付けて 僕を引きずって玄関に向かう青木。

    「ほら 帰りますよ。タジクさんどうもー。」

    タジクが向こうで手を振って見送っているのが見えた。

    悔しい! 次は負けない!
    (おわり)




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    kouyamaki

    DONEpixivに上げた「青木の選択」シリーズの続き。
    #10「悪行」

    悪戯の後、薪さんと青木がくっつくまでの話。他のシリーズとは別軸の2人です。

    季節感はフィクションです。ネモフィラと球根生産のチューリップがまだ同時に咲いているような、4月下旬~5月上旬のイメージです。

    このシリーズはあと1~2回で完結の予定です。最後まで書くのが目標です。お付き合い頂ければ幸いです。
    #10「悪行」光が残した絵のキリンのガントリークレーンは、5基になっていた。









     去年の暑い夏は光を苦しめた。暑くなる前に海で眠らせてやりたいと青木の母は言う。
     どんたくが終わってしまえば福岡は初夏だ。どんどん気温が上がる。梅雨に入れば湿気も重くうっとおしい。
     49日までまだあったが、青木も舞も散骨に賛成した。49日といっても、生前の光の希望で宗教的な葬儀は一切執り行っていない。青木家3人と薪で小さな骨を拾った。
     船を出してくれる葬儀社や、付き合いのある生花問屋の伝手で、青木の母は大量のチューリップの花びらを用意することにした。球根生産のための、花摘みの最後の季節だったのだ。
     かつて散華と名うって、100万枚のチューリップの花びらをヘリから地上に撒いてみせた前衛いけばな作家がいた。
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    aya.t

    MOURNINGこっそりシリーズ 
    とっても大好きな沼の民様(いつも大変お世話になっております🙇‍♀️)。お話しさせていただいているうちに妄想が暴走して つい。つい‥。
    気付けばタジク3つめ😅
    一部 別のやはり大好きな沼住民様の呟きを借用させていただいております🙏
    タグは青薪。 ‥間違ってないと思う‥けど‥全方面からのブーイングが‥🙇‍♀️
    「やだ‥ もう許して‥」
    ─駄目だ。涙が‥。

    タジクがニヤリと笑って僕の目尻を拭う。

    「この綺麗な涙はね。あの 貴方のことが大好きで宝物のように扱う坊やには効くのかもしれませんが、俺にとっては燃料にしかなりません。もっと泣かせてみたくなる‥。あなたの 理性が失われた先のあなたの姿を‥見たい」

    ──落ちていく。
        あおき アオキ‥
          


    あの時は こんな事になるとは思わなかった。 

    目の前の誘惑。
    ‥好みだったんだ。そう はっきり言って 何もかもが僕の好きなタイプだったんだ。
    ちょっとした気の緩み。
    行き詰まっていた捜査で煮詰まっていたのもある。全区あげての捜査。僕だけでなく全ての捜査員が休む間もなく。 ‥青木とは逢瀬どころかプライベートの会話すら ずっと出来ていなかった。
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