30cm──負けられない試合がある。
今日は薪さん率いる俺たち第九と 第一の雪子さんの旦那さんの黒田さん率いるSPチームの草野球の試合。
(何故 そんな事になったのかは分からない。薪さんが所長じゃなく室長なのも変。勝たねばならない 負けられない何かがあるのだが 思い浮かばない。
とにかく 負けらないのだ。)
デスクワークの俺たちと 身体能力の高さが仕事のSPチーム。
勝負は最初からついているかと思われたが、コールドゲームにもならず、9回裏までもつれ込んだ。
初回に入れられた1点だけでその後の得点を許さなかったのは 今日に向けての鬼の室長(薪さん)の特訓の成果か。
9回裏 トップバッターの山本さんがフォアボールを選び一塁に出た。次の打者は薪さん。
山本さんが帰れば同点。でも 選球眼はあっても走るのは早くない山本さん。下手したらゲッツーの可能性も‥。
打席に立つ薪さん。
ユニフォーム姿も麗しい。ヘルメットでお髪が隠れてしまうのが勿体無いが、野球のユニフォームでバットを構えても絵になるなんて。(流石コスプレ大王。)
さて、薪さん。
打席に立つと不敵な笑みを湛え右手で観覧席を指さした。
予告ホームラン?
まさか。
幾ら なんでも出来る薪さんと言えども‥。
(ふふん。9回まで見てきたんだぞ。おまえの球は見切った‥あとはスイングして当てるだけ。体重移動 腰の捻り バットの角度 よし! フォロースルーまで完璧‼︎)
打球は綺麗にバックスタンドに吸い込まれていった。文句ない逆転ホームラン!
これなら足が早くなくてもベースさえ踏み忘れなければ問題ない。俺たちの逆転勝利だ!
薪さん!流石 薪さん。
これで俺たちの危機は救われました!(←なんだったんでしょうねーw)
感極まった俺は真っ先にベンチを飛び出し ホームベースを踏んだ薪さんを思い切り抱き締めた。
ぎゅーっと。
感極まったままに。
‥30cm下で ヘルメットを被っていない薪さんの亜麻色の髪がさらさらと球場に吹く風になびいて‥‥
呼吸困難になった小さな身体がバタバタともがいて。
俺は 地面からほんのちょっと浮いていた足で思いっきり弁慶の泣き所を蹴られた(泣)
【教訓】30cmの身長差がある薪さんを思いっきり抱きしめると 薪さんは空間が無くて窒息状態になるので、気をつけます。‥でも 思いっきり抱きしめられて身体がちょっと地面から浮いちゃってる薪さんも、空気を求めてもがいてジタバタする薪さんも ユニフォーム姿の薪さんにも萌えました まる。
*野球の事 よく知りません。おかしくてもお許しを。