人はそれを恋と呼ぶ馬鹿だし‥。
いや飛び級で東大法だっけ?でも馬鹿だよな?
じじ臭いし‥。
幼く見られたくなくてわざとだったっけ。でも それじゃ大人通り越してただの地味なおじさんだろ。
無鉄砲で馬鹿だし。‥‥馬鹿はさっき もう言ったか。
高身長 高学歴 高収入 ったって、僕の方が学歴も収入も上だし。
身長高いったって 高けりゃいいってもんじゃ無い。高いのが魅力的なのはせいぜい186cmまでで、それ以上デカいのはかえって鬱陶しいとか邪魔とか怖いの部類だよな。
12も歳下だし部下だし馬鹿だし(あ。馬鹿3回めだ‥)男だし‥
‥‥なんでこいつなんだろう。
頭の中で散々ディスっていた男は なんせ馬鹿だから僕の視線をしっかり誤解して顔を近づけてきた。12も歳下だから人生経験も少なくて状況判断も間違ってばかりの困った奴。
まぁ 結果オーライになっちゃうところがこいつの怖いところだったりするんだけど。
もう‥‥本当になんでこんなの好きになっちゃったんだろう。
とかく世の中は思い通りにはいかない。理性なんて。明晰な頭脳なんて。本能や感情の前ではさっさと白旗上げて降参して寝返るんだ。
だってほら。地味でおじさんそのものの髪型と眼鏡(‥でも実は好きだったりする)で近づいてきた整った顔にざわめく。デカ過ぎる上背に包まれて落ち着く。
ディスられていたとも知らず 「そんなに見つめられると照れます」と頬を染めての見当違いの間抜けな台詞に「違う」と言いかけて開けた口は容易く舌の侵入を受け入れる。
舌を絡めながら囁かれる少し残念な語彙力の日本語に 体温が上がっていく。
仕方ないな‥。世の中 思い通りにならない事ばかりだ。僕の優秀な脳は人が思う程 優秀じゃない。なんで?なんて 考えても分からない事は分からないし結果は変わらない。
よりによって 一回りも歳下の部下の男のこいつなんかに。
‥うっかり過ぎる僕の残念な本能。
口付けの合間 自分のうっかりについついた溜め息は、僕の耳にも甘い吐息に聞こえた。 当然こいつもそう捉えて‥。
仕方ないな‥。無駄な抵抗は諦めて たまには本能に身を委ねてやろうかな。明晰な頭脳も豊富な言語能力も 全ての武装解除をしても こいつの大き過ぎる身体が僕を包んで安全地帯を作る。
‥‥仕方ないな。