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    抱き締められたい🧡のお話。
    人肌が恋しくなっちゃった🧡と、それに応えてくれる❤️
    ラで旅行中。💛微出演。

    #FoxAkuma

    もっと、ぎゅっと。.


    「は〜〜〜………ハグしたい。」


    ひとりの部屋でそうぽつりと呟いた。
    誰かが返事をくれる訳もなく、その小さな小さな願いは白いシーツに吸い込まれていく。

    夏の休暇を取り、ミスタはLuxiemのメンバーと旅行へ来ていた。
    何ヶ月も前から全員で計画を立て楽しみにしていたが、ちょうど世間一般の夏休みやら連休やらにぶつかったせいでホテルの予約が遅れてしまい、取れたのは3部屋のみ。
    2人部屋が2室に1人部屋が1室。どう部屋割りをしようかと話し合いを始めた最中『これは男なら文句なしじゃんけんだろう』とあの時言い出したのは紛れもなくこの名探偵である。
    意気揚々と片手を振り上げ、電線の鳥が飛ぶほどの声量で掛け声をかけたと思えば、決まった部屋はヴォックスとの相部屋。
    正直、夜になれば誰かの部屋に全員で集まることが多いだろうから部屋割りなんて大した問題ではないなと軽く考えていた。
    ルカが1人部屋になり、しゅんと耳を垂らしたのは覚えているけれど。

    そうして話は冒頭へと繋がる。


    「な〜んでこんな広いベッドなんだよ。」


    そこそこ体格のいい男が横にゴロゴロと転がっても、まだ余裕のある広いベッド。
    ヴォックスとミスタの部屋にあるベッドは、キングサイズが1つだけであった。


    「アイクとシュウはシングル2つらしい、まじでなんで?」


    自分の家のものより遥かに大きなベッドを見て、最初はさすがにテンションが上がった。
    満足するまで転がり飛び跳ね、転げ落ちてしまはないかヴォックスに見張られるほど。
    広くて清潔でふわふわで、もう一生ここに住んでもいいかもしれないとシーツに沈みながら考えていた。

    だが一夜明け、初めて夜を共にしたというのに起きると隣にヴォックスはいなかった。
    その代わりベッド脇のサイドテーブルに『少し買い出しに出てくる』と、ペットボトルのドリンクに添えてある置き手紙が1枚。


    「あいつ…余韻の欠片もねえな。」


    もちろんナニも起こってはいない、完全に茶番である。
    ヴォックスがベッドを出てからしばらく経つのか、しわになったシーツは少しも熱を帯びていなかった。


    「……起こしてくれたら俺も行くのに。」


    そう口から零し、ヴォックスへ「おきた。なんじに帰ってくんの」と連絡をする。
    買い物に集中してるだろうから返事はないだろう。そう思いながらスマホを伏せる。
    枕に顔を押し付け、しわが濃くなるくらいぎゅっと掴んだ。

    てっきり朝はのんびり起きて、なんだかんだ一緒にゴロゴロして、ご飯食べて出かける準備して…なんて思っていたのに。


    「だぁーーーー………くそっ、」


    慣れない環境とは不思議なものだ。しかもそこに自分1人だなんて。本当にちょっと、ちょっとだけ…


    「……なんだよ、寂しいって。」


    声に出して恥ずかしくなった。
    大の大人が、こんな男が、友人の男が隣にいない朝を寂しく思うなんて。恋人でもあるまいし。

    自分でも自分がよくわからなかった。


    「全部このベッドが悪いだろ、このデカすぎるベッドが。」


    広いが故にぽっかり空いてしまった隣を見て、頭がその空間を埋めたがっている。そうに違いない。

    ミスタは時々人肌が恋しくなることがあった。
    恋人が欲しいとか誰かと体を重ねたいとかそういうことではなくて、本当に文字通り無性にただ人肌に触れたくなる。
    毎日家で1人パソコンに向かい仕事をし、家族とも離れ友人と会うこともない日々を過ごしていると、途端に寂しい気持ちに襲われるのだ。
    そしてそういう時に助けられてきたのが、大事にしている抱き枕の存在だった。
    片手を上げた猫の可愛らしい抱き枕で、それをぎゅっと抱きしめると安心して眠りにつける。
    暖かくはないし人肌でもないけれど、そうやって自分の心に出来た穴を埋めていた。

    だが今はホテルのため、いつもの安心材料はここにいない。

    さて、どうしようか。



    「これ代わりになるか…?」


    徐に手に取ったのは、今朝までヴォックスが使っていた枕。
    横になったまま、それをいつも抱き枕にするのと同じようにぎゅっと抱きしめてみる。
    しかし見た目に反して綿が少ないのか、思ったよりも柔い枕はミスタの力に負けすぐに形を変えた。
    ミスタはもっと抱きしめてる感が欲しかった、これなら自分の体に腕を回して抱きしめる方がマシだ。全然満たされない。

    次に目をつけたのは、昨日ヴォックスが着ていた上着だった。
    丁寧にハンガーへとかけられたそれを、少し雑にずり下ろす。
    くるくると丸め、先程と同様抱き締めた。
    けれどもこれも違う。枕よりは幾分か良いが、如何せん形が歪で安心感が足りない。
    上着を広げ、変にしわがついていないか確認し、掛け布団のようにして口元までを覆ってみる。

    その時、ふわりと好ましい香りが鼻をくすぐった。


    「…ん、いいなこれ。」


    それは紛れもなく上着が吸い込んだヴォックスの香り。
    男らしいけれどもどこか繊細で、甘さも大人らしさも兼ね備えたそれは、おそらくどんな人をも魅了するだろう。
    隣を歩くだけじゃ分からなかった細やかな部分まで香ってきて、無意識に鼻からすんっと強く吸い込んだ。


    「あれ、俺変態じゃね…?」


    傍から見ればそうかもしれない、しかもそれが1年以上活動を共にした仲間のものだなんて。けど今は部屋に1人だ。許されるだろう。
    そう言い聞かせ、より深く浸るために上着で鼻を隠した。
    普段の生活では絶対に嗅ぐことのない他人の香りが、妙にミスタの気持ちを落ち着かせた。
    今まで抱き枕を抱き締めるだけじゃ得られなかった安心感を、ただ上着に包まれただけで過剰摂取出来てしまっている。

    そこでふと思う。

    もしかして自分は…ハグしたいんじゃなくて、ハグ"されたい"のかも。
    誰かの体温と香りにすっぽり包まれて、安心したいのかも。

    思い立ったらすぐ行動だと、雑に伏せたスマホを探った。
    自分がハグされてすっぽり収まるとしたら、体格的にヴォックスかルカだろう。
    アイクとシュウも悪くないが、身長や肩幅を考えると2人の方が適任だ。
    しかしヴォックスは出かけているため、選択肢はルカの一択へすぐに絞られる。


    「…あ〜、まじか。」


    しかし試しにYouTubeを開いてみると、ホームの1番上に表示されたのは【LIVE】と赤い表示のついたルカのサムネイルだった。
    そういえば今日は雑談するって言ってたっけ。
    配信中にハグを求めに行ったらリスナーは盛り上がるだろうしルカもハグしてくれるだろう。けれどそんな邪魔はしたくなかった。


    「それはナシだな、さすがに。」


    また振り出しに戻ってしまった、とスマホを雑に枕へと投げた。
    もう一度ヴォックスの上着を手に取り、今度は軽く包まってみる。
    こんなことなら、自分の抱き枕くらい持ってくるべきだった。スーツケースはあまり大きくはないけど、次の旅行ではなんとか詰め込んでみよう。



    .



    上着に包まれうとうとし始めた頃、ピッという解錠音の直後に部屋の扉が開かれた。
    重くなりかけの瞼が閉じてしまわないよう軽く目を擦る。


    「…おかえり、だでぃ。」
    「ただい……どうしたんだいミスタそんな可愛いことして、誘っているのかい?」


    いくつかの買い物袋を下げたヴォックスがミスタを見て動きを止めた。
    それもそのはず、可愛い男がベッドの上で自分の上着に包まれているのだ。
    目が合い、ミスタは眠気と戦いながら考える。


    「…いや違うけど。」
    「…そうかそれは残念だ。」


    だがお前ならいつでも大歓迎だぞ、とまるで親父のギャグのような言葉選びにミスタは眉をひそめた。眠いのに勘弁して欲しい。

    ヴォックスは少しミスタを見つめたあと、テーブルに袋を下ろし中身をガサガサと探り始めた。


    「それより、連絡を返せなくてすまなかった。気づいたのが遅くてな、返すより帰った方が早いところまで来てしまっていたんだよ。」
    「いいよ全然。なに買ってきたの、それ。」
    「あぁ、今晩この部屋でみんなで酒でもどうかと思ってな。つまみも合わせて色々買ってきたんだよ。ミスタはどれが飲みたい?」


    もう全員に連絡は済ませてあるんだ、と楽しそうに笑いながら、手に持った酒を色々と見せてくる。

    だがミスタは今は酒のことを考える気分ではなく、あまり頭に入ってこなかった。
    ニコニコしながら説明をするヴォックスに、何も言わずにじーっと視線を送る。


    「こっちはビールでこれは………ミスタ、そんなに見つめてどうしたんだ?」


    私の顔に何か付いているか?と不思議そうにするヴォックスへ、ゆっくり両手を広げてみせた。


    「…本当に誘っているのか?」
    「いや違うって、でも早く。」


    フリフリと両手を揺らして催促する。もう待てなかった。体温と香りに早く包まれたかった。

    ゆっくりゆっくり近づいてきたヴォックスの胸に顔を埋める。ぎゅーっとそのまま抱きつき、肺の深くまで息を吸い込んだ。


    「ミ…っ、」
    「ごめんだでぃ、ちょっとだけこのままがいい。」


    それは想像よりも暖かくて安心出来た。
    久しぶりの誰かの体温、心地よい香り、耳障りの良い心音。
    全てが求めていたもの以上で、急速に満たされていくのが分かる。


    「…私もきちんと横になって、抱き締め返してもいいだろうか?」
    「…いいよ。」


    背中に腕を回されると、安心を通り越してまた眠気に襲われた。
    大きくて暖かくて、そこに全て委ねてしまいたくなる。
    ぐりぐりと硬い胸板に頬を押し付けた。

    抱き締める腕に力を込めれば、それに応えるようにヴォックスも強く抱き締めてくれる。
    それが酷く安心出来て、気持ち良くて。
    ミスタはゆっくり目を閉じた。


    「このまま少しおやすみ、ミスタ。」


    ヴォックスは前髪の隙間から覗く 丸くて可愛らしいおでこにそっとキスを落とす。
    優しく頭を撫で、愛しい子がよく眠れるよう体温で包み込んだ。


    .


    その後夜まで眠っていたミスタは、晩酌に呼ばれ各々集まりだしたメンバーに気づかなかった。

    スマホを持って部屋を駆け回るルカを、ミスタは必死になって追いかけている。


    「ルカ!!早く消せよそれ!!」
    「やだって!! 別にツイッターに載せたりとかしないからいいじゃん!」
    「よくない!!!」


    2人で眠っていたところをルカが写真に収め、ニコニコで報告してきたのだ。

    ヴォックスがそれをしばらくの間待ち受けにしたのは、決して本人には言えない秘密である。


    「くそ…! もう絶対ヴォックスと同じ部屋なんてならない!!」
    「!? なぜだ坊や!?」
    「んはっ、ヴォックス嫌われちゃった?」
    「シュウ!? いやまさかそんな…私は何も…」
    「自業自得だね。」
    「アイクまで…No~~~~~~」



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