ミスタには恋人のヴォックスがいる
空気が冷たく突き刺さる夜、2人でポケットに手を突っ込みながら歩いていた時にミスタは車道側を歩くヴォックスに思いを告げた
ヴォックスもミスタに好意を寄せていたので2人は晴れて恋人になった
確かにそのはずだだがミスタは恋人になったという事実が、ヴォックスが自分を好きでいてくれるという真実を信じることが出来なかった
「きっとあたしに気を使ったんだ、」
「でもあたしの事を好きだって」
「それでも」
「あたしの全てを知ったら」
「こんなめんどくさい自分を愛してくれる人だなんて」なら、確かめよう そう決めたミスタはディスコードを立ち上げ、愛しの彼にメッセージを送る
「突然でごめん、今忙しいかな」
「いいや、どうしたんだい」
「あたしの」そこまで書き留めてミスタの頭の中に嫌な記憶がフラッシュバックした自分が殴られている記憶。殴っている相手はミスタの元彼だった
「ほんとにお前は可愛くないな」
そんなことない、ヴォックスはあたしの事可愛いって言ってくれるもん
「泣いても笑ってもお前は醜いな」
痛い、
「俺が女と居たって関係ないだろ お前と居たら浮気ぐらいしたくなる それは俺じゃなくてお前のせいだろ?」
殴る力が強くなるにつれて、痛む感覚が薄れていく
「そうだよな?」
「っはっ、、っは、、っ」
嫌なことを思い出してしまった
ディスコードにはヴォックスがミスタの返信が無いことを心配するメッセージが届いていた「ミスタ?どうしたんだ?」
あんな酷いやつとヴォックスは違う、そう分かっていても思考が歪んでいく
ミスタはいつか聞いたヴォックスのタイプを思い出していた
「好きなタイプが母親にバレていたんだ」
「あんたが好きなのは黒髪でおしりの大きい子でしょ?」
あたしは黒髪じゃない、おしりだって大きい方ではなく、痩せていてむしろ小さい方だ「そういえば、」
付き合う前、ヴォックスが目で追っていたのは黒髪の綺麗な女性だった
「わたしは、、」
鏡の前に立つ
「やっぱり、嘘だ」
こんな自分をヴォックスが愛してくれるだなんて
1人からの愛もろくに受け取れない、自分を上手く愛せないそんな自分に嫌気がさしたふらりと机に置いてあった瓶を掴む
白く、無臭の小さな魔法を口に詰め込む
嗚咽を吐きながら何度も零しながら流し込む
頬に生ぬるいものが伝うのを感じながら
ミスタは小さく幸せな夢へ意識を離した