根無し草たち クルビアの冬は大層冷え込むため、道行く人々は皆着膨れしていて、それでもなお寒そうに身を縮こまらせている。ショーウィンドウに映った自らの輪郭と向き合う。ガラスの向こうには暖かそうな毛皮のファーを纏ったコートが展示されていた。マネキンは通行人の視線を集めようと必死なようで、すらりと長く伸びた手足はわざとらしいポーズを取っていた。
連れは急に足を止めたドクターに反応しきれず、一歩先を行き、そして振り返る。
「どうかした?」
「君に似合いそうなデザインだと」
ガラスの向こうとドクターを見比べ、エリジウムは照れくさそうに笑みを作る。
「このコートだって君に贈ってもらったばかりじゃないか。僕のこと、着せ替え人形にするつもり? 君が楽しいなら吝かじゃないけどね」
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