Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    nbsk_pk

    @nbsk_pk

    @nbsk_pk

    文字を書きます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 87

    nbsk_pk

    ☆quiet follow

    炎さんの夏コーデがおやばすぎて気がついたら出来上がっていた。炎博バカンスデートしてくれ…

    #炎博♂

    「え、君って夏服持ってたんだ」
    「それはこちらの台詞だ」
     片や黒ずくめの戦闘服をノースリーブと涼しげな上着に、片やフードのついたロングコートを鮮やかなロドスブルーのパーカーと生成りのハーフパンツに。あまりにも見慣れぬ姿に同時に怪訝な顔になった両者が開口一番言い放ったのがそれだった。
    「へっへーん、これは去年かわいいアーミヤに見立ててもらったものでーす。『そのお洋服のままですと、暑さで倒れてしまいますよ!』って。かわいくない? 私を心配してくれたんだよ」
    「黒ずくめの不審者と一緒に歩きたくなかっただけだろう」
    「オブラート! わかってるけどオブラートに包んで!」
     さんざん地団太を踏む上司を鼻で笑いながら、サルカズはそれで、と話を軌道修正した。
    「どこに行くつもりなんだ」
    「メインマーケットの西側に古い建物を残したエリアがあるらしいんだよね。そこの寺院群を見てみたくて」
    「治安は?」
    「悪い」
    「よし」
     傍らに置いた大刀を持ち上げながら、物騒な形に唇の端を吊り上げる。わあ、とまったく感情のこもっていない悲鳴を上げながら、ドクターはパチパチと気の抜けた拍手までしてみせた。
    「結局、バカンスでも刀は持ってきたんだね。新しいやつはどう?」
    「訓練室である程度手には慣らした。ちょうど試し切りの機会が欲しかったところだ」
    「あのへんの壁、古くて脆いから力加減を気を付けてくれ。君ほどのベテランに言うほどのことでもないけど」
     あと他にも見たいものがあってね、と歩き出すサンダルの上の骨と皮ばかりの踝を見下ろしながら、昨晩、シーツの中でその足がピンと跳ねていたことを思い出す。歯型でも残しておけばよかったな、と考え、しかしあまりにもな思考に頭を振って霧散させた。どれもこれも目の前の男と暑さが悪い。
    「なんだい」
    「ひとりで黙って出ていく手もあっただろう」
    「そっちのほうが余計に厳重な護衛がつくんだよね。なら先に手練れを一人指名したほうが身軽で済む」
    「何も出ないぞ」
    「事実だよ。褒め言葉くらい素直に受け取ってくれ。せっかくのバカンスなんだから」
     どうせ何を考えていたかなどお見通しなのだろう。フードの奥のからかうような眼差しに、エンカクはわき上がる苛立ちのままにそのうなじへと歯を立てたのだった。


    *****


    「終わった?」
     ひょっこりと壁の奥から姿を現した青い姿があまりにも見慣れず、一瞬おさめたばかりの刀を抜きかけてしまった。そんなこちらのことなどすっかり見えているだろうにまったく意にも介さずに、痩身は倒れた連中や瓦礫の山を危なっかしく避けながら近づいてくる。
    「顔は見られていないだろうな」
    「うん、君が貸してくれた”これ”もあったし」
     押し付けたサングラスの下から覗く瞳がよく見知った色をしていることに安堵をおぼえ、しかしそんな自身に猛烈に腹が立ち誤魔化すために昇り始めた二つの月へと視線を移した。
    「おかげでホテルのディナーには間に合いそうだ。今日は何が食べたい? 私のおすすめはエビの揚げたやつ。駄獣の乳が隠し味らしいんだけどこれがまた絶品でね」
    「これで終わりなのか、つまらん」
    「その割には遠慮なく壊してくれたみたいだけど」
    「勝手に吹き飛んで勝手に当たって勝手に壊れた。現地警察への言い訳を考えるのはお前の領分だ」
    「はいはい、それじゃあ見つかる前にさっさと帰ろう」
     自分から見たいと言ってここまで来たくせに、到着するや否や現地ギャングの抗争に巻き込まれ逃げまどい撤退し体勢を立て直して全員地に叩き伏せた。観光どころではなかっただろう。だがそれを気にするのはエンカクの仕事ではない。
    「見るべきものは全部見たよ。何人かそこそこ手ごたえがあっただろう?」
     不本意ながら頷けば、男はにんまりと満足そうに微笑む。その頭の中にあるものなどさっぱり理解はできないが、つまりは上手く利用されたということなのだろう。いつものことながら腹立たしい上司をうながせば、へらりと続きの言葉を口にする。
    「気になった荷の流れがあって、どっちなのかわからなかったから直接確かめたほうが早いかなって」
    「それで目立たない護衛のアイツらじゃなく俺を指名したのか」
    「だって私の武器はかっこいいのだもの」
     青いのもきれいだね、炎の温度を上げたのかいとニコニコ笑う顔にこそ、彼らは銃弾を叩きこむべきだったのだ。地に沈んでしまった彼らに今さら言っても仕方がないことではあるが。上機嫌にフラフラと歩く腕を掴んで暗闇の中の瓦礫を避けさせながら、表通りの明かりを目指して歩みを進める。横に並んだ彼はふと気がついたかのようにサングラスを外してこちらに差し出しながら、にこりと笑って言った。
    「それに、こうでもしないと君は私とデートしてくれないだろう?」
    「……なんだと?」
     脳が理解を拒絶する単語が聞こえた。幻聴だと信じたいがあいにくと掴んだ腕の骨皮ばかりの感触には嫌というほどおぼえがある。
    「ほら、サングラス返したいからもうちょっとかがんで」
    「いらん。そのままかけていろ」
    「え、くれるってこと? やったぁ」
    「ホテルに戻るまでその腹立たしい顔を隠していろと言っている」
     掴んだままの腕は振り払われる気配もなく、背に負った大刀がガチャンと音を立てて揺れる。固定ベルトの調整はもう少し必要なようだ。こんな大きな音を立てるようでは護衛も何もない。結局、彼の本意がどこにあるのかなど考えるだけ無駄なのだろう。こういうことで嘘をつくような人間ではないが、おそらくは出歩いた理由はそれだけでもない。だがひとつ言えるのは、その伏せられた理由が次の戦場へと繋がっているという、実績のある確信だ。ならばエンカクがここで見捨てて一人で帰らない理由としては十分である。


     恋人つなぎというにはほど遠く、宿までのほんのわずかな道のり。二つの影は一瞬だけ重なり、そしてゆっくりと同じスピードで歩みを進めていった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞🙏😍💯💯💯💯💯💯💯💯💯💯💘☺💯💖👏💒💕💞💞💞💞💞💞💞👍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nbsk_pk

    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
    2835

    nbsk_pk

    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
    2030

    related works

    nbsk_pk

    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
    1015

    nbsk_pk

    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
    1956