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    炎さんの同居人モブがひたすら喋ってるだけ。モブは炎さんについてちょっと誤解している。

    #炎博♂

    春の嵐に巻き込まれ 唐突だが、俺の同居人の話を聞いてほしい。
     そいつは俺と同じサルカズで、俺とは比較にもならないくらいのイケメンなんだけど、とうとうあいつにも春が来たっぽいんだよ!

     ロドスの一般向け居住区はルームシェアが基本だ。二人部屋か四人部屋が多くて、俺は二人部屋のほうに住んでる。もちろんお偉いさんたちは個室暮らしらしいし、もっと広いエリアを借り上げてる金持ちな人もいるらしいんだけど、俺のような内勤の一般職オペレーターなんかは大体二人部屋だ。理由として、この艦はかなり大きいクラスではあるけど収容人数的にそこまで余裕があるわけじゃないことと、住人の多くが感染者ってことにある。サーベイランスマシーンの装着は義務付けられているけど、万が一の場合にすみやかに緊急通報装置のボタンを押す必要があるから、できるだけ誰かと一緒に住んでたほうがいいっていう合理的だけどやるせない理由。ま、そんな事態にいままで出くわしたことはないけど、だから俺みたいな感染者のサルカズは同居相手に同じ感染者のサルカズを希望することが多い。
     俺が希望条件に挙げたのは、機関部勤務で夜勤が多い俺と生活時間がかぶらない別時間のシフトであること、できれば外勤が多いやつだとありがたいなってこと。贅沢過ぎる条件で正直期待はしてなかったんだけど、優秀なロドスの管理コンピュータはひとりの候補者を連れて来てくれた。それがエンカクっていう今の同居人てわけ。
     そう、このエンカクに春が来たらしい話をしたいんだけどその前にこいつの紹介をしておいたほうがいいと思う。エンカクはサルカズでもそこそこ大柄な俺よりさらに頭半分背が高くて、バリッバリの武闘派でいつもごつい刀を持ってる。元傭兵らしいって聞いたときには納得しかなかった。だってそれ以外に見える要素が欠片もないんだからさ。あいつの名前を聞いた職場の先輩は何人か顔色変えて大丈夫なのかって仕事の時より親身に心配してくれたし、何かあったらってあの無口な親方まで言ってきたのには驚いたから、けっこう有名人だったらしい。つっても俺より下の世代にはいまいちピンと来ない話で、そういう噂もあるんだなってくらいだった。
     初顔合わせのときは正直怖かったし同居とか無理だろって思ったんだけど、しばらく一緒に暮らしてみたところ、俺たちはまあまあ上手くやっていけることがわかった。というのも、俺らまずほとんど顔を合わせない。一般的な昼シフトのあいつと夜勤がメインの俺はそもそも寝るときにしか部屋にいないし、あいつは戦闘オペレーターだけあって外勤がとにかく多かった。そう、あいつすっげえ強いらしいんだよ。あのドクターの指揮を直接受ける部隊に配置されることもあるらしくってさ。あ、ドクターってわかる? さすがにわかるよな。お医者先生の多いここで、唯一ただの”ドクター”って呼ばれるのはあの人しかいないもんな。
     で、話を戻すけど、意外なことにあいつ花を育てるのか好きらしくって、少ない私物のほとんどが大小の鉢植えなんだよな。長期の外勤任務に出るときには水やりとか頼まれたりする。手入れが難しいのは園芸部の他のメンバーにお願いしてるみたいだけど。枯れたらそのままにしておいてくれって言われるのがちょっと不思議だけど、あいつなりのこだわりがあるんだろうから詳しく聞いたことはない。
     そんな仕事と植物以外に興味なさそうだったあいつに、とうとう良い人が出来たっぽいことを知ったのは、ほんの数週間前のことだった。
    「この日なんだが、一日部屋を空けてもらえないか」
     ははぁ、さすがに鈍い俺でもピンと来たね。これは連れ込みたい相手ができたんだなって。これはルームシェアが基本なロドスでは頻繁に起こる問題で、帰宅したら同居人がよろしくやってる真っ最中だった、なんてしょっちゅう聞く話なんだよ。俺? 悲しい話を聞くのはやめてくれ。俺の話なんていいんだよ、今はこのイケメンの同居人の話なんだってば。そう、これだけ顔が良くてムッキムキで戦闘も強いらしいやつに浮いた話のひとつもないっていうほうが不自然なわけで、とうとうその日が来たんだなって俺は感動したんだよ。まあ下世話な興味ってやつもちょっとはあったのは否定できないけどさ、素直に祝福したい気持ちのほうが大きかったのは本当の話。だって戦闘オペレーターってロドスの中でもトップクラスに明日もわからないような職業で、しかも感染者なんだ。いい思い出なんていくつあっても足りないんだから、こういうのはどれだけでも祝福したいもんだろ。
    「じゃあその日は俺ちょっと早く出て友達んとこ泊まるわ。あ、準備とかあるなら前の日から出てったほうがいい?」
    「そこまでは必要ない」
     そういうもんなのか。まあ友達の部屋と比較してもかなりきれいに片付いてるほうの部屋だとは思うけど。あいつのスペースにはいくつかの鉢植えと武器やらの手入れ用具一式くらいしか大きい私物はないし、俺のスペースは……あ。
    「鉄道のポスター剥がしていったほうがいいかな」
     言い忘れてたけど俺、趣味が鉄道模型で戸棚には結構な数の模型を詰め込んでるんだよ。うわあ気まずい。せっかく連れ込んだ部屋の半分がどう見てもオタクの部屋って迷惑にならないか。ごめん、エンカク。なんなら同志に拝み倒して預かってもらえなくもないから正直に言ってくれ。
    「別に気にするようなやつじゃない」
    「そ、そう。心広い人なんだ」
    「いいや、あれはただ気にしないだけだ。アイツの前ではおおよそのものがただの数字でしかない」
    「へ、へえ……すごい人なんだな」
     ねえ恋人の話をしてるんだよね!? なんか今一瞬うっすらと笑った顔がすっげえ怖かったんだけど! ビビり倒しながらもスムーズに予定のすり合わせは終了し、あっという間に当日はやってきた。
    「じゃあまた」
    「あぁ」
     いつも通り簡素なやり取りで、仕事道具と泊まりの荷物を抱えた俺はすみやかに自室から退散した。同じ趣味の友達の部屋に転がり込んで、一晩(というか昼夜逆転してるので昼だけど)語り明かす予定になってる俺の足取りはいつもよりかなり軽い。せっかくだからとあれこれ詰め込んだ雑誌とかを確認して――あ、しまった一冊机の上に忘れてきた。昨日気になることがあって調べるために引っこ抜いたの浮かれて忘れてたわ。始業までまだ時間もあったことだし慌ててエレベーターまで戻って居住区のフロアに降りたとき、俺は珍しい人物を目撃した。あの真っ黒いフードに仮面みたいなフルフェイスマスク。ドクターだ。俺はでっかいイベントでの開始の挨拶とかでしか見たことはないんだけど、あの特徴的な姿が艦内に二人もいるとは思えない。ってなんでロドスの三トップのひとりが護衛もつけずにこんなとこふらふら歩いてるんだよ。思わず隠れてしまったけど別に俺悪いことなんてしてないのに、自分のとった意味不明な行動に自分で混乱する。この時間にしては人通りが少なくて不審者として通報されなかったのだけは不幸中の幸いだった。で、どうしようもなくてドクターのひょろりとした背中を遠目に眺めていると。
    「やあ、私だ。うん、君の部屋の前にいる」
     うちの部屋の前で立ち止まったんですけど!!?? え、なに、どうしてドクターが。嘘、そんな、まさか。
    「もっと早く連絡しろと言っておいたはずだが」
    「いつも私の部屋に勝手に押しかけてくる君が?」
    「入室コードはもらっている」
    「そうだね。無効化していないのは私だ」
     う、うわードクターって人間だったんだー。ていうかあいつのあんなに浮ついた顔初めて見たー。衝撃で思わず語尾が伸びる。それだけ精神的ショックが大きかったんだよ。だってさあ、わかるだろ? わかってくれよ。まさか同居人の恋人がさあ!
    「あの花って前に言ってたやつ?」
    「おい、勝手に入るな」
    「じゃあ早く入れてくれ。ひょっとして君は扉を開けたままのほうが燃えるタイプだったりするのか。知らなかったな」
    「下らんことを言うな」
     扉の奥から伸びてきた長い腕が、慣れた様子でドクターの背中を攫う。そうして見慣れた扉の中に黒い影が吸い込まれる間際のほんの一瞬。
    「完全にバレてた……」
     まるで幼い子供に言い聞かせるような、片手の人差し指を口元に立てるジェスチャー。意味なんて言うまでもない。黙っていなかったら俺の存在なんて明日には消えているだろう。ロドスの三トップのひとりはそれだけの相手なのだ。黒い噂ならいくらでも、いい噂のほうはほんのちょっとだけ。末端の俺でも知っている、あの人がどれだけヤバい人なのかってことは。でも。
    「あいつ、すっげえ楽しそうだったな」
     いまだ呆然とはしているが、確かなことはただひとつ。同居人の春がとうとうやって来たという事実である。もう考えるのやめよう。めでたい! それでいいじゃないか。
     大荷物を抱えただけではない理由でふらふらと元の道のりを辿る。すでに忘れ物のことなんてもうどうでもよくなっていた。というか取りに帰るのさすがに無理だ。意識をすっ飛ばしている間に時計の針は容赦なく進んでいたらしく、気がつけば遅刻ギリギリの時間になっていた。慌てて友達の部屋へ駆け込みながら、ぼんやりと考える。あの様子だと近々あいつ部屋出て行ってしまうんだろうな。けっこう上手くやれていただけに残念ではあるが、あれだけ親密な様子を見るに時間の問題だろう。ドクターって花の世話とかできるのかな。でも大丈夫ですよ、あいつは植物を枯らしても怒らない気のいいやつですから。こうなったら俺から言えることなんてただひとつ。
     末永くお幸せに!
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    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
    2835

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    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
    2030

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    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
    1956

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    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
    1015

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