石乙散文 あの人の手が好き。逞しくて力強くて、抱き締められるとドキドキして、その手で身体中を触られるとそわそわして、太股をぎゅって掴まれたらその先を期待してしまって。
手元が見えていないのに器用にこちらの服を脱がしてきたり、身体に這わせながら焦らすくせにこちらの気持ちいいところに辿り着いたら思いっきり弄ってくれる。その手に翻弄されて戸惑うけれど、そうなることも嫌じゃない。もっと、知らない自分を暴いて欲しい。
自分の指より太くて節張った手が好き。たまらず口づけたら何してるんだって言われて、でもやめろって言われなかったから、そのまま指先から手の甲、掌まで口づけて、我慢できずに指先にしゃぶりついた。
それはさすがに戸惑われたけれど、指をちゅぱちゅぱ咥えて舐めて、唇で撫でれば、あの人がごくりと喉を鳴らすのが分かった。
顔を見ればその目には妖しい光が宿っていて、自分の方を鋭く見つめて来ている。明らかに欲情してる、って思った。指を舐められただけでなんで?って思ったけれど、その表情と目に、ぞくぞくと背筋が震えた。
そんな目を向けられたらこっちだって期待しちゃう。
指から口を離したところで、その場に押し倒されて覆い被された。
「……乙骨」
濡れてない方の手で、そっと頬を撫でられる。その触れ方も好き。暖かくて優しくて、思わずその手に擦り寄った。そしたらまた、あの人の目が鋭くなった。
「……煽るなよ」
そんなことしてないのにな。
そんな風に思いながらも、先の行為を促すように、彼の首に腕を回した。
その手で与えられるものが、全部全部、だいすき。