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    さなか

    @o_sanaka

    成人腐(↑20)。主に石乙で文字と絵を投稿してます。

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    さなか

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    初夜失敗する石乙

    #石乙
    stoneB

    石乙散文 ふたりきりの部屋で、ベッドに腰掛けた状態で唇を重ねた。その唇を割り開き、舌で口内を撫で、更に身を乗り出したところで、ポスリと相手の身体がベッドの上に倒れ込んだ。
     その拍子に唇が離れて、目の前にはぁはぁと荒い息の──乙骨がいる。頬は僅かに赤く染まり、風呂上がりのしっとりと濡れた髪に、ラフなシャツの内側では赤く火照った身体が見えた。
     そんな乙骨にのし掛かった状態で、石流はごくりと喉を鳴らした。
    「……いいん、だよな…?」
     言いながら、布越しに乙骨の身体に触れた。胸元から脇腹に指を這わせて、シャツの裾からそっと手を内側に忍ばせれば、乙骨が「ん…」と声を漏らした。
     石流はとっくに乙骨へ気持ちを伝えているし、乙骨も先日、辿々しくも同じ気持ちを返してくれた。抱き締め合って、キスだって何度もした。そろそろ次のステップに進んでもいいだろうと思っていた。
     そんな石流の問いに、乙骨はおずおずと不安げな表情をしながらも、言ってきた。
    「はい……その、僕も準備、してるので……」
     そしてそんなことを言ってきて、石流の脳天にズガガンと雷が落ちた。
    (準備って……おい、まさか……)
     乙骨が自分に抱かれるために、後ろの準備をしてきたということなのだろうか。
     いやいやいやいやそんな都合のいいことがあるわけないだろと石流は即座に思った。今、石流が乙骨を押し倒したのは勢いで、前から今日そういうことをしようぜなんて話はしていなかった。確かに明日は休みだし、厄介な任務の話も来ていないし、ヤるなら今日あたりがお誂え向きだとは思っていた。思っていたのだが、乙骨が同じことでも考えていない限り、そんな偶然が有り得るわけがないだろう。
    (つーか、乙骨だって男だし…術師としての能力だってこいつのが上だし、立場的にもこいつが大人しく俺に抱かれる準備をするだなんてそんな…)
     そんな風に思いながらも、石流が乙骨に「…準備って……」と零せば。
     乙骨は頬を染めた表情を横に反らしながら言った。
    「そんなの……あなたに抱かれるための準備に、決まってます…」
     その言葉に再び石流の頭にズガガガガガガと雷が落ちた。そしてその衝撃はダイレクトに自分の股間に響いた。
    (マジか……マジかよ……)
     乙骨が石流に抱かれる準備をしてきただって?これはまさに据え膳というやつでは。もうこれは迷うことなく食っちまっていいってことでは。
    「……乙骨…」
    「…もう、恥ずかしいこと、言わせないでくださいよ…」
     少し拗ねたような表情なのも愛しい。ああ、ああ、俺も望みこいつも望んでいることなら、もう躊躇う必要なんてねぇ──そう思って石流が、乙骨の唇を塞ぎながら、シャツの奥への触れようとすれば。

     ムームームー

     そんな音が部屋に響いた。無論心当たりはある。恐らくデスクの上に置いてある、乙骨のスマホだ。
     石流は嫌な予感がしてきたし、乙骨も不安そうな表情で石流を見てきて、それからその視線を、スマホがバイブするデスクの方に向けた。
    「…………石流さん」
    「ダメだ」
     乙骨の呼び掛けに、石流はそう即答した。だってそうだろう、やっとこれから今、乙骨を抱けると思っていたのに。
    「…でも、ねぇ…」
    「うるせぇ、ダメだ」
     石流を宥めるようにそう言ってくる乙骨に、石流は有無を言わさず、乙骨の首筋に顔を埋めてその服を脱がそうとした。乙骨は身動ぎながらも「石流さん…」と声を掛けてくる。
    「…だめ、離して、下さい…」
    「オマエだって俺に抱かれるための準備してたんだろ?今更引き下がれるかよ」
    「せめて、電話に出るだけでも」
    「むしろ出たら終わりだろうが」
     もう気持ちも身体も昂ぶっていて、今更抑えるこもなんて出来ない。オマエはそうじゃないのか?オマエは俺としたかったんじゃないのかよって、少し胸が苦しくなった。
    「……石流さん」
     それでもあくまで乙骨は静かに石流のことを呼んできた。
    「……お願い、します…終わったらちゃんと、続き、しますから…」
     ここで乙骨が力尽くで石流を引き離そうとすれば、石流も意地になって力尽くで乙骨を抑え込もうとしたかもしれない。しかし、乙骨が、穏やかにやんわりと石流を静止するのは、石流なら止めてくれると思っているからだ。
    (くそっ、くそ……そんなことされたら、俺だって、力尽くで無理矢理抱くなんて、出来ねぇよ…)
     しかも折角の、乙骨との初めてを、そんな形で済ませたくない。
     石流が手を止めて身体を起こせば、顔を合わせてきた乙骨は「ありがとうございます」と言ってちゅっとキスをしてきた。
     それから石流の元から離れると、デスクに近づき、とっくに着信が止まっているスマホを手に取った。
    (ハーーーッ……まじねぇ……まじねぇぞ……)
     あんな盛り上がり方をして今更乙骨を抱けないとか無理がすぎる。もっこりと膨らんだ自分の股間が恨めしい。頼むから急な任務とかそういうのであって欲しくない。
     だが、折り返し電話を掛けた乙骨の話しぶりからすると、やはり急な任務らしい。「…今からですか?」という問いをしながら、乙骨がチラリと石流の方を見た。もう分かった。任務なんだろ、無理なんだろ、俺はこの股間を何とか沈めないといけないんだろ、そんな風に思いながら、石流が頭を抱えていると。
    「……すみません、石流さん」
     電話を終えたらしい乙骨が石流にそう声を掛けてくる。今更淡い期待はしない。そっちがそう来るなら、こちらにも考えがある。
    「…………任務かよ」
    「はい……すみません、今すぐ出ないといけません」
    「オマエが出ないといけない程か?」
    「…………そうですね」
     乙骨は重苦しく頷いた。
     乙骨の呪術師としての等級は、規格外に位置する特級らしい。今や、特級呪術師は乙骨の他に最強の呪術師と言われる五条悟しかいない。そんな乙骨が出なければならないと言うことは、相当重い任務なのだ。そりゃあ受肉体の石流と、乳繰り合っている場合ではないだろう。
     乙骨はすぐに白い呪術高専の制服に着替えて、呪具である刀を用意する。その姿をぼんやり見つめながら、石流は溜め息を吐いて立ち上がった。
    「…ちょっと待て、俺もすぐに髪をセットする」
    「え?」
    「お前一人で行くより、俺も一緒の方が早く片付くだろ」
     自分の強さにそれくらいの自負はある。すぐに、櫛とポマードを手に取って鏡の前に行き、髪型を整えれば、乙骨はポカンとした顔をしながらも、ぎゅっと刀袋の紐を掴んだ。
    「…すみません、ありがとうございます」
    「オマエのせいじゃねぇだろ、それに、少しでも暴れねぇとオマエのせいで昂ぶった熱が抑えられそうにねぇんだよ」
     きゅっと額の上から飛び出たポンパドールを整えて、よしと思って乙骨に向き直る。それからそっとその肩を抱き、耳元で囁いた。
    「帰ったら、暴れた後の熱をたっぷり発散させてもらうからな──覚悟しておけよ」
     それからちゅっと音を立てながら頬に口付けて、乙骨から離れた。乙骨は顔を茹で蛸みたいに真っ赤にさせながらも「好きにして下さい!」と言って部屋を飛び出した。
     あーもうこりゃ即行で任務を終わらせて、かわいがってやらねぇとダメだな、と思いながら、石流もその後を追った。




     斯くして、初めてを急な任務に邪魔されたふたりだったが。
     その任務を即行で終わらせ、帰ってきてすぐ押っ始めようとしたところで「そんなデカいの入るわけがないです!」と石流のイチモツを見ながら涙目で訴えてくる乙骨に、更なるお預けを食らうことになるとは、この時は知る由もなかったのだ。
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