Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    さなか

    @o_sanaka

    成人腐(↑20)。主に石乙で文字と絵を投稿してます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 88

    さなか

    ☆quiet follow

    石→乙っぽい話。

    #石乙
    stoneB

    石乙散文#噛みたい指


     嫌われるより、無関心でいられる方が余程つらい。そんな風に考えるのは女々しいだろうか、あいつの姿を目で追いながらそんなことをぼんやりと思った。
     そもそも相手から好かれることはあっても、自分から好きになることなんて今までなかった。当たり前のように向けられる好意に気紛れに応えることはあったが、自分が一方的に好意を向けることなんて。
     好きにしてやるなんて感情もイマイチ湧かない、あいつならそうなるよな、なんて自分に対して無関心である相手のことすら受け入れてしまう。

     そもそも同性である彼に、今まで異性に向けていた感情を抱いている時点で、自分の方がおかしいと感じてしまう。彼に向ける自分の好意に1番戸惑っているのは自分自身だ。
    (好きだ、すげぇ好きだ。あいつを抱き締めてキスして、全部俺のものにしてやりたい、その身体も心も喰らい尽くすことが出来たら、どれだけキモチイイだろうな)
     そんな欲が自分の中にムクムクと湧き出ているこの感情が──意外だ。
     そしてどうやらそろそろ、それを抑えられそうになかった。




     ダチや後輩、教師たちと話していた乙骨が、時間を確認してから、彼らから離れていく。そういやそろそろ任務の時間かと、石流もぼんやりと思った。
    「石流さん」
     そして乙骨がこちらに来て、そう呼んできて「行きますよ」なんて声を掛けてくる。
     石流は黙って乙骨に付いていく。乙骨は任務の前に、得物である刀を寮の部屋へ取りに向かうのだ、そうやって誰にも見られない建物の内側に入ったところで、後ろからその身体を抱き締めた。
    「え……?」
     ビックリした顔で、こちらに顔を向けてくる乙骨の顎を取り、その唇を自分の口で塞いだ。
    「んっ……!?」
     乙骨の驚いたような声は、自分の口の中に飲み込んだ。身体を抑え込む腕を掴まれたけれど、その程度で動じない、離してやるはずがない。
    「…っ、ふ、ぁ…」
     その唇を堪能するように、何度も啄み味わった。乾いているが柔らかくて、暖かい。身体のラインをなぞるように手を滑らせれば、それで身体を抑える力が緩んだのか、するりと乙骨が、石流の腕から、抜け出した。
    「……なに、するんですか…」
     石流が繰り返し唇を押し付け啄んだことで濡れて赤く熟れた唇を抑えながら、乙骨が睨むようにこちらを見た。それでも頬は赤くなっているし、嫌がっていると言うより、戸惑っているように見えた。
     それに薄らと笑みを浮かべて、乙骨の片手を取る。
    「……っ、……」
    「……分からねぇかよ?」
     その甲に口付け、更には裏返して掌をべろりと舐めた。それに乙骨の肩がピクリと震えた。その反応に気を良くして、その指にも舌を這わせた。
    「………分かんない、です」
     頬を赤く染め、明らかに分かってるだろって顔で、乙骨はそんなことを言う。

     それでも足りないと思ってしまった。自分が彼に向ける感情はこんなものではない、いっそ嫌悪でも構わないから、自分と同じくらいの感情を向けて欲しいと思ってしまった。

     仮に乙骨のこの指に噛み付いて痛みを与えたら、そんな感情を向けてくるだろうか。
     そんなことを頭の片隅で考えていれば、乙骨の手がするりと石流の手から離れていく。舐められた手を拭くように撫でるように、ぎゅっと着ている制服に押し付けて。
    「……ふざけてる、暇なんてないです。早く任務に行きますよ」
     それだけポツリと言ってそそくさと自室に向かっていく。
     そんな背中を見送りながら、石流は小さく息を吐いた。

    「ふざけてなんか、欠片もねぇんだけどな」

     さて彼がこちらの気持ちを受け入れるか、こちらが彼に噛み付くか、どちらが先になるだろうか。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤☺☺💕💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works