石乙散文「…石流さんって、髪を下ろすとイメージ変わりますよね」
「あ?」
顔を突き合わせて何度かキスをした後、おもむろに乙骨がそんなことを言った。「そーかぁ?」と言って髪を掻き上げれば、「…そういうところですよ」と乙骨がポツリと言った。
その頬がほんのり赤いことに気付いて、石流はニヤリと笑みを浮かべた。
「なんだ、髪を下ろした俺に見惚れてたってことか?」
「…だって本当に、イメージが違いすぎるんですって」
言いながら、乙骨が石流の首に腕を回してくる。
「髪をあげてる時は、すごいはしゃいでて、精神年齢低いイメージ強いんですよね」
「そりゃー、髪型をキメてる時は戦闘中だしな、テンションあがるに決まってんだろ」
それが精神年齢が低くなるのとイコールになるのかというのは別として。
「オマエは逆に、戦ってるときは淡々としているもんな」
「…戦うことを楽しいなんて思ったことないですから」
乙骨は淡々とそう言いながらも、ぎゅっと石流に抱きつき肩口に顔を埋めてくる。
「逆に髪を下ろしているときは…こうやって二人きりの時とかだから、大人っぽいイメージ強いんです」
「まぁそりゃ、オマエよりは大人だしな」
そっと乙骨の頭を撫で、身体も撫でる。腰の辺りを撫でれば、「んっ」と声を漏らして、身体をもぞもぞと動かしてきた。
「……オマエこそ、こういう時は戦っている時と打って変わって、ガキみたいに甘えてくるよな?」
ちゅっと頬に口付けながらそう言えば「誰かさんが甘やかしてくれるので」と言って、顔をあげてきた。
そのまま乙骨の唇を喰らうようにキスをした。
「ん、ふぁ、あ……」
そのままトサリと座っていたベッドの上に倒れ込む。緩んだ目と上気した顔で見つめてくる乙骨に覆い被さり、ちゅっとその額にキスをした。
「…いし、ごおりさん、の…」
「あ?」
「その髪型で、被さってくると、髪が垂れてくるじゃないですか」
確かに長い髪が顔の両端から垂れてくる。邪魔だろうかと思ったが、乙骨は濡れた目のまま小さく笑った。
「…まるで、あなたとふたりだけの世界にいるみたいで、好きです」
そう言ってこちらに手を伸ばしてくる乙骨に、目を見開いてから、こちらも苦笑した。
「……そうかよ」
確かに、横から垂れる髪がカーテンみたいに周りの景色を隠して──お互いに、お互いしか見えなくなるような気がした。
そのまま顔を降ろして、唇を塞ぐ。甘えるように首に腕を回してくる乙骨の頭を撫でるように抑えて、口付けを深くした。
オンはガキっぽくなる自分と、大人びる彼、オフは大人しくなる自分と、甘えたになる彼。
そういう意味ではちょうどいいのだろうかと、ぼんやり思った。